2017 Fiscal Year Research-status Report
心疾患における局所鉄代謝変化の解析と臨床応用への検証
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16K09420
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
塙 晴雄 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (40282983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏村 健 新潟大学, 医歯学総合病院, その他 (70419290)
南野 徹 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90328063)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘプシジン / 鉄代謝 / 炎症 / 画像診断 / 心筋炎 / 心筋梗塞 / 鉄過剰 / 人工心肺 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄代謝の主要な蛋白であるヘプシジンは多くが肝臓で産生されるが、ある病態では心臓、脳などからも産生されることが知られてきた。そのため、肝以外で産生されるヘプシジンは、局所の鉄代謝に重要な役割を演じると考えられ、その臓器傷害に関わっていると推測されている。 以前我々は、心筋炎、心筋梗塞の心臓でヘプシジンの発現が急激に亢進することを報告した。このことから、我々は鉄を指標とするMRI検査が心疾患の診断に有用になるのではないかと考えた。そこで今回、MRI検査の可能性を検索するために、正常と心筋炎ラットの心臓組織中の鉄染色陽性細胞を検討し、また様々な心疾患でヘプシジンの発現変化を検討した。 心筋炎ラットの心臓では、発症早期から回復期まで、正常ラットではみられない鉄染色陽性細胞が少数検出できた。しかし、画像診断で検出できるような陽性細胞の増加を期待し、臨床で使用されている鉄含有MRI造影剤を1回静注し、鉄染色陽性細胞の変化を検索した。MRI造影剤1回静注では、正常肝臓では多数の鉄染色陽性細胞がみられたが、正常心臓では陽性細胞はみられず、心筋炎心臓でも造影剤未使用と比較し、鉄染色陽性細胞の増加ははっきりしなかった。 ヘプシジン発現の検討では、腹腔内にiron dextran 100mg/kgを4回投与し、鉄過剰投与ラットを作成し、2時間人工心肺を装着し人工心肺ラットを作成し、定量的RT-PCRでヘプシジンの発現を検討した。鉄過剰投与ラットでは、肝臓、心臓ともに多数の鉄染色陽性細胞が出現したが、ヘプシジンの発現は肝臓のみ増加していた。一方、人工心肺ラットでは、肝臓、心臓伴に炎症マーカーが増加したが、ヘプシジン発現は心臓でのみ増加した。 今の鉄含有造影剤でのMRI検査で心筋炎を有効に診断することは困難と考えられたが、心臓のヘプシジン発現亢進は、炎症マーカーの発現亢進に伴ってしばしば生じると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラットモデルで検討した結果、現存する鉄含有MRI造影剤を使用したMRI検査での心疾患の画像診断は困難であると思われ、臨床でそれを検討する段階には至らなかった。一方、ヘプシジンの心臓での発現は様々な病態、例えば人工心肺などでも変化することが考えられ、炎症マーカーの発現に伴ってしばしば変化することが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
肝臓と心臓でのヘプシジンの発現の違いを検討する。 心筋炎や心筋梗塞だけでなく、人工心肺モデルでも各臓器の炎症マーカーが変化し、心臓での炎症マーカーと伴にヘプシジンの発現に変化が生じることが考えられたため、これらのモデルを用いて、さらに炎症と心臓でのヘプシジン発現の関係を検討する。
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Causes of Carryover |
次年度に必要な試薬や実験動物代金が増加すると考えられるため次年度使用額が生じた。 翌年度分として請求した助成金と合わせて、肝臓と心臓でのヘプシジンの発現の違い、心筋炎や心筋梗塞だけでなく、人工心肺モデル、敗血症モデルでも各臓器の炎症マーカーが変化し、心臓での炎症マーカーと伴にヘプシジンの発現に変化が生じることが考えられたため、これらのモデルを用いて、さらに炎症と心臓でのヘプシジン発現の関係を検討する。
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