2017 Fiscal Year Research-status Report
末梢血単核球膜型マトリックス分解酵素発現を用いた冠動脈イベントリスクの層別化
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16K09426
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
宇隨 弘泰 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (50313763)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 冠動脈硬化 / 細胞外マトリックス分解酵素 / 血糖変動 / 不安定プラーク |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度も、冠動脈疾患患者において、末梢静脈血を採取し、溶血処理後にフローサイトメトリーを用いて単核球表面における膜型細胞外マトリックス分解酵素(MT1-MMP)発現の計測を継続した。冠動脈病変の異なる病態におけるMT1-MMP発現を評価するため、急性心筋梗塞、不安定狭心症、陳旧性心筋梗塞、安定した労作性狭心症のそれぞれの患者において計測を行ってきた。また、28年度の推進方策となっていた、シーメンス社製のSOMATOM Forceが当施設に設置されており、本機器に附属されるプログラムにより冠動脈プラーク性状の解析進んでいる。病態の違いにおける、MT1-MMP発現の違いも見られる検討結果が出てきている。特に急性冠症候群とされる急性心筋梗塞、不安定狭心症の患者群では他の冠動脈疾患群と比較して有意に高い発現となっている。また、CTより得られるLow-HU値とMT1-MMP発現の間に急性冠症候群においては相関の傾向がみられている。これらは今後症例を増やし明確にしてゆきたい。さらに、今回導入されたCT機器は息止め、被ばくの問題に関しても考慮された機器であり、従来冠動脈CT検査の精度に問題のあった心房細動などの不整脈を持つ症例にも対象を広げることができている。これに加え、今年度からは、急性心筋梗塞患者の75%には何らかの糖代謝異常が合併していると報告されているため、これらの患者群に限っては24時間にわたる血糖変動を持続的に計測した。その結果、夜間の血糖変動がこれら患者群における血圧変動等、イベントリスクに大きく関与することを見出し、2018年3月開催の日本循環器学会学術集会(大阪)においてその研究成果を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度は28年度問題となっていたフローサイトメトリー法におけるMT1-MMPの発現の検索がスムーズに進み症例の積み重ねができている。さらに本年度からは24時間にわたる血糖変動を持続的に計測した。その結果、夜間の血糖変動がこれら患者群における血圧変動等、イベントリスクに大きく関与することを見出し、その結果の一部を学術集会にて成果報告ができている。 また、CT機器の導入がなされ、検査枠の拡大も働きかけで広げていただき、検査のスムーズ化が進んでいる。そのため、症例の蓄積、および解析が昨年度に遅れていた分を取り返せる状況になってきている。以上より、上記のように判断いたしました。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は症例の増加に加え、29年度より加えている持続血糖のデータと、細胞外マトリックス分解酵素の発現との関連をさらに詳細に検討を行ってゆきたい。具体的には、持続血糖の変動値とされるSD値、MAGE値、目標血糖からの解離などのM値、低血糖のリスク評価につながるADDR値と、MT1-MMP発現の程度、冠動脈CTより得られる冠動脈プラークの総量、HU値との関連を評価してゆきたい。さらに本年度報告した、血糖変動と冠危険因子の悪化につながるという報告結果を受け、急性心筋梗塞患者における急性期の血糖管理とイベント予測につながるような因子の解析も併せて行っていく。
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Causes of Carryover |
(理由)冠動脈疾患患者における糖尿病のリスクが高いことが推測されており、症例における持続血糖計測が本研究の目的である細胞外マトリックス分解酵素の発現との関連を見るうえで必要と考えられたが、その計測機器の国内販売が本年度ようやく行われたことにより、昨年に執行できなかった予算分を本年度にこれらの計器に購入に充てた。昨年できなかった結果の一部の報告を国内学会への発表を行っている。 (使用計画)本年度は当初の予定額の執行するうえで、得られた結果を解析するうえでのパーソナルコンピューターやそれに使用する解析ソフトの購入や成果の発表のための論文の準備などにも使用する予定である。
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