2016 Fiscal Year Research-status Report
慢性心不全における脳アンジオテンシン受容体による神経グリア連関異常の時空間的解析
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16K09443
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岸 拓弥 九州大学, 循環器病未来医療研究センター, 准教授 (70423514)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 慢性心不全 / 交感神経 / グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「脳への神経性と液性入力異常に起因する脳内アンジオテンシンⅡ受容体(AT1R)による神経グリア連関異常が慢性心不全である」を解明することが目的である。 平成28年度は、冠動脈結紮による心筋梗塞後心不全ラット(1日後(急性期)・1週間後(亜急性期)・1ヶ月後(慢性期))および食塩負荷による高血圧性心不全ラットの食塩負荷開始6週(左室肥大形成期)・12週(拡張不全期)・16週(心不全末期)において、交感神経出力部位(RVLM)・求心性神経情報入力部位(NTS)・液性因子入力部位(PVN)におけるニューロン・アストロサイト・マイクログリアをそれぞれAT1Rとの二重免疫組織染色で評価し、①心筋梗塞後心不全では急性期からRVLM・NTS・PVN全てでAT1Rが発現したアストロサイトが増加しミクログリアも増加して慢性期まで持続する・②食塩負荷による高血圧性心不全ではPVNで左室肥大形成期から拡張不全期にミクログリアのみ増加し、末期にはPVNのミクログリアは減少してNTS・RVLM・PVNでAT1Rが発現したアストロサイトが増加する、ことを明らかにした。この結果を受け、③心筋梗塞後心不全ラットにおいて梗塞作成前にNTS・RVLM両方でアストロサイト選択的AT1R阻害SiRNA遺伝子導入を行い亜急性期における交感神経活動が抑制され左室拡張末期圧が低下する・④食塩負荷による高血圧性心不全においてPVNでミクログリア抑制を行うと拡張不全期における交感神経活動が抑制され左室拡張末期圧が低下する、を確認した。 平成29年度には、正常ラットで神経性入力・液性因子入力制御を行い、RVLM・PVN・NTSにおいてニューロン・アストロサイト・ミクログリアの細胞別変化及びAT1R発現がどのように変化して、心臓・腎臓・血管による循環調節機能の破綻を惹起するのかについて、予定通り解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「脳への神経性と液性入力異常に起因する脳内アンジオテンシンⅡ受容体(AT1R)による神経グリア連関異常が慢性心不全である」を解明することが目的である本研究の初年度である平成28年度は、冠動脈結紮による心筋梗塞後心不全ラットおよび食塩負荷による高血圧性心不全ラットのRVLM・NTS・PVNにおけるニューロン・アストロサイト・マイクログリアの変化とAT1R発現との関係を評価し、その変化に対する介入で心不全の病態がどのように変化するかを検証することであった。平成28年度に明らかにした①心筋梗塞後心不全では急性期からRVLM・NTS・PVN全てでAT1Rが発現したアストロサイトが増加しミクログリアも増加して慢性期まで持続する・②食塩負荷による高血圧性心不全ではPVNで左室肥大形成期から拡張不全期にミクログリアのみ増加し、末期にはPVNのミクログリアは減少してNTS・RVLM・PVNでAT1Rが発現したアストロサイトが増加する・③心筋梗塞後心不全ラットにおいて梗塞作成前にNTS・RVLM両方でアストロサイト選択的AT1R阻害SiRNA遺伝子導入を行い亜急性期における交感神経活動が抑制され左室拡張末期圧が低下する・④食塩負荷による高血圧性心不全においてPVNでミクログリア抑制を行うと拡張不全期における交感神経活動が抑制され左室拡張末期圧が低下する、の4点は、全て予定していた目的を十分に果たして次年度以降の基盤となるものであり、「B:おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に得られた成果をもとに、当初の計画通り、平成29年度には正常ラットで神経性入力・液性因子入力制御を行い、RVLM・PVN・NTSにおいてニューロン・アストロサイト・ミクログリアの細胞別変化及びAT1R発現がどのように変化して心臓・腎臓・血管による循環調節機能の破綻を惹起するのかについて解明する。神経性入力の制御には、頸動脈を動脈圧受容体より中枢側で結紮して体循環から分離し、サーボポンプを用いた頚動脈圧制御により圧受容器反射を介した交感神経を制御する。液性入力は頸動脈ポンプに静脈から脱血して直接投与することで一定に保つ。一方、液性因子入力制御は、頸動脈圧を100mmHg固定の上で右心房脱血頸動脈ポンプ内へのアンジオテンシンⅡ投与や全身性炎症を惹起し炎症サイトカインが上昇するlipopolysaccaride腹腔内投与で行う。これらの手法は全て研究代表者がこれまでの研究で確立し論文発表をしてきた方法である。これらの制御下で平成28年度に行った実験と同様に、交感神経活動・心臓・腎臓・血管の循環調節機能評価を行う。この実験により、脳への神経・液性因子入力がどの程度異常をきたしたら、脳のどの部位のどの細胞のAT1Rが心臓・腎臓・血管による循環調節機能の破綻を惹起するのか、が明らかになる。平成30年度にはさらに、Cre-Lox Pシステムを用いてニューロン・アストロサイト・マイクログリアそれぞれの選択的AT1R欠損マウスを作成し、冠動脈結紮による心筋梗塞・アンジオテンシンⅡ持続静注+食塩負荷による心不全誘発をそれぞれ行い、交感神経活動および心臓・腎臓・血管の組織学的・機能評価に加え、予後評価を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度に購入予定であった小動物用送信機(550,000円)及び関連物品費が、同じ製品で実験施設で使用していたものが継続使用が可能であった。そのため、平成28年度は引き続き既存の装置を使用し、新規購入は1年後の平成29年度に繰り越すことで平成29年度以降の実験計画遂行がより有効的になると判断し、小動物用送信機購入並びに関連物品購入費として予定していた予算(632,893円)を平成29年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度で当初予定の物品費(800,000円)に繰り越し金(632,893円)を加えたものを物品費(1,432,893円)とする。旅費(300,000円)並びにその他(200,000円)は予定通りとする。
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