2017 Fiscal Year Research-status Report
房室弁輪部起源心房性頻拍の機序および至適治療法に関する検討
Project/Area Number |
16K09444
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山部 浩茂 熊本大学, 医学部附属病院, 特任教授 (20419641)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心房頻拍 / リエントリー / エントレインメント |
Outline of Annual Research Achievements |
房室結節近傍起源の心房頻拍と房室結節近傍以外の房室弁輪部起源の心房頻拍において、頻拍の機序および回路について解析を行なった。頻拍の機序がリエントリーであるかを明らかにする目的でまず最早期心房興奮部位を同定した後、心房内多点より頻拍レートより5拍/分速いレートでペーシングを行いマニフェストエントレインメントが認められるか、また最早期心房興奮部位がorthodromicに捕捉されるか検討した。マニフェストエントレインメントが認められ、最早期興奮部位がorthodromicに捕捉されるペーシング部位を確認した後、リエントリー回路の必須緩徐伝導路の入口部を同定するため、エントレインメントペーシング部位に向かって最早期興奮部位から2cm離れた部位から通電を行い、停止しなかった場合徐々に通電部位を最早期興奮部位へと近づけて頻拍の停止が得られるまで通電を行った。この際通電が無効であった非成功通電部位と頻拍の停止が得られた成功通電部位において局所電位の解析を行い、Ca チャンネル依存性の組織を反映すると考えられるSlow potentialが記録されるかについて検討した。またSlow potentialの電位波形の比較を房室結節近傍起源の心房頻拍と房室結節近傍以外の房室弁輪部起源の心房頻拍で行なった。さらにSlow potentialの洞調律時と頻拍時での電位波形の比較を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
房室結節近傍起源の心房頻拍(AVN-AT)18例と房室結節近傍起源以外の房室弁輪部を起源とする心房頻拍(AVA-AT)22例の合計40例すべてにおいて、マニフェストエントレインメントが認められた。成功通電部位は最早期心房興奮部位(EAAS)から平均9.5±2.3 mm離れたエントレインメントペーシングが得られた部位の方向に位置していた。成功通電部位と非成功通電部位での局所電位を比較したところ、成功通電部位では40例全例で心房電位に続きslow potential(SP)が認められたが、非成功通電部位では12例にしか認められなかった(p<0.0001)。EAASから非成功通電部位までの距離はEAASから成功通電部位までの距離に比べて有意に長かった(p<0.0001)。局所の心房電位波高と幅は成功通電部位と非成功通電部位で差はなかった。しかし、成功通電部位のSPの電位波高は非成功通電部位に比べ有意に高く(0.110±0.049 vs. 0.025±0.046 mV, p<0.0001)。電位幅は非成功通電部位に比して有意に広かった(38.8±13.4 vs. 8.1±13.2 mm, p<0.0001)。またSPの電位波高と電位幅はAVN-ATとAVA-ATの間で差はなかった。以上より必須緩徐伝導路の入口部において、Ca チャンネル依存性組織を反映すると考えられるSPが認められることが示され、これらの電位波高と幅はAVN-ATとAVA-ATにおいて差を認めないことが示された。また頻拍中のSPの電位波高は洞調律時に比べ低く、電位幅は広いことが示された。これらの頻拍中のSPの電位減高と電位幅延長は、SPがCaチャンネル依存性組織の電気生理学的特性を反映しているためと考えられた。当初の実施計画に沿って以上の所見が得られたことからこのように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
房室結節近傍起源の心房頻拍の至適治療部位として大動脈無冠尖での通電が有用であることが報告されている。大動脈無冠尖は心房中隔の上部に位置しておりちょうど房室結節の後方上部に位置している。この部位がリエントリー回路とどのような関係にあるのかを今後の検討で明らかにしていく。また、エントレインメント法により同定されたリエントリー回路の必須緩徐伝導路の入口部において記録されたSlow potentialが大動脈無冠尖においても記録されるかについても検討する。
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