2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K09469
|
Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
長友 祐司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 講師 (70348647)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 勉 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会(臨床研究施設・研究部門), 内科医局, 副院長・部長 (20174906)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 心不全 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性非代償性心不全で入院した患者を対象として前向きに登録を行い、入院時、退院時に便検体採取を行った。得られた検体から腸内細菌叢に対し次世代シークエンサーを用いた16S rDNA系統解析を行った。細菌種の特定、存在比を計測し、各菌叢の類似度(相違の程度)の解析(UniFrac解析)を行った。得られた腸内細菌叢データを入退院時で比較検討した。 細菌叢の組成を示すunweighted Unifrac解析では個人ごとにクラスター化されていることが確認された一方、心不全治療前後での細菌叢の組成の変化は認められなかった。一方で、それぞれの菌量も加味したweighted Unifracでは入院時と退院後とで腸内細菌叢は大きく変化していることが確認された。しかし、個人ごとに変化の度合いやパターンが異なり、共通の変化は認められなかった 腸内細菌叢の中でもFirmicutes門とBacteroidetes門の存在比は肥満、糖尿病などで増加し、減量することで低下することが指摘されている。今回の検討では退院時に入院時と比してFirmucutes / Bacteroidetes比は有意に低下した。さらに詳細な綱、目レベルではBacilli綱、さらにその下位に属するLactobacillales目の存在比が心不全治療後に有意な低下を示した。 腸内細菌に由来するとされる血中短鎖脂肪酸濃度(酢酸、プロピオン酸、酪酸)を入院時、退院時で比較したが、全体としては血中短鎖脂肪酸濃度はいずれも有意な変動を示さなかった。入退院時での酪酸濃度の変化は同じく入退院時の体重の変化と逆相関し、酪酸濃度の上昇は浮腫の軽減、ひいては消化管うっ血の改善と関連している可能性が示唆された。また、プロピオン酸濃度の変化はFirmicutes門に属するGemellales目の変化と有意な正相関を示し何らかの関連が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際の測定検体数は少ないが、患者登録自体は順調に進んでいる。登録患者数をさらに増やすとともに病態と関連するバイオマーカの測定などについての検討を行っていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では現時点で未だ症例数は十分でなく、パイロット研究の段階である。現在も患者登録、検体採取を継続中であり、今後は症例数を増やし、また入院中(治療途中)の患者の検体をさらに採取し、治療過程での腸内細菌叢の変化をより詳細に検討することで、腸内細菌の変化がどのような要素と関連するのか(ex. 基礎疾患、病態[うっ血、体液貯留が主体 vs. 低心拍出が主体])についてさらなる検討を行う。また、炎症マーカー、腸内細菌由来の病因物質(インドキシル硫酸、TMAOなど)との関連についてもさらなる検討を行う。将来的には腸内細菌の変化と病態との関連から治療ターゲットを見いだし、それに対する介入(ex. Probiotics/Prebioticsなど)が臨床的に有益な作用をもたらすか否かについて検討を行う方針である。
|
Causes of Carryover |
腸内細菌叢の網羅的解析のための16S rRNA測定費に最も多額の費用を計上している。患者検体がある程度蓄積したところで測定・解析を行うが、現在収集した検体分は次年度に行うこととなるため。
|