2017 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍循環器データベースの構築と抗がん剤による心毒性の評価および分子機序の解明
Project/Area Number |
16K09470
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Research Institution | Osaka International Cancer Institute |
Principal Investigator |
岡 亨 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 検診部・精密健康診断科 副部長 (10332678)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腫瘍循環器学 / 抗がん剤 / 心毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん治療の進歩は高い治療効果をもたらす一方で、がん治療における心血管系の副作用(心毒性)は治療の大きな支障となるため、腫瘍循環器による介入が不可欠となっている。しかし、化学療法、特に分子標的薬による心毒性の発現の詳細やその機序についてはまだ十分解明されていない。本研究は大阪国際がんセンター腫瘍循環器科を受診するがん治療患者のデータベース化を進めることによって、がん治療に伴う心毒性のリアルワールドを明らかにし、分子標的薬の適正使用の基盤となることを目指すとともに、分子標的薬による心血管系への影響を様々な角度から解析し、心毒性の発症機序を解明することを目指している。 平成29年度は当センター腫瘍循環器科に新患としてがん診療科から紹介受診した患者の登録、解析を進めている。その中で、血管新生阻害薬によると考えられる大動脈解離および心機能障害を発症した症例を見いだし、英文論文として発表し(Takada M, Oka T, et al. Int Heart J. in press)、日本循環器学会近畿地方会で発表することができた。さらに、乳がん患者に対するHER2阻害薬による心機能障害、がん患者における心房細動の割合と抗凝固薬の効果と安全性について着目し、観察研究を進めている。海外の腫瘍循環器の調査のためヨーロッパ心臓病学会学術集会(バルセロナ)、Global Cardio-Oncology Summit 2017(ロンドン)、Advancing Cardiovascular Care of the Oncology Patient(ワシントンDC)に参加し、海外の医師、研究者との交流を積極的に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大阪国際がんセンター腫瘍循環器科においてがん診療科から新患として紹介受診した心血管疾患患者の登録を行っている。平成29年度は当センター腫瘍循環器科に新患としてがん診療科から紹介受診した患者の登録、解析を進めている。その中で、血管新生阻害薬によると考えられる大動脈解離および心機能障害を発症した症例を見いだし、英文論文として発表し(Takada M, Oka T, et al. Int Heart J. in press)、日本循環器学会近畿地方会で発表することができた。データベースおよび個々の症例を注意深く観察しながら集積していく過程で、抗がん剤による心血管毒性を示す貴重な症例や心毒性の特徴を捉えることが出来ると考えており、引き続きデータベースを構築するとともに、情報発信を行っていきたい。すでに、乳がん患者に対するHER2阻害薬による心機能障害やがん患者における心房細動の割合と抗凝固薬の効果と安全性について着目し、観察研究を進めており、近い将来新しい情報を発信したいと考えている。 平成29年度は海外の腫瘍循環器の調査のためヨーロッパ心臓病学会学術集会(バルセロナ)、Global Cardio-Oncology Summit 2017(ロンドン)、Advancing Cardiovascular Care of the Oncology Patient(ワシントンDC)に参加し、海外の医師、研究者との交流を積極的に行ってきた。平成29年度は日本腫瘍循環器学会が設立され、本邦においても全国レベルの組織作りがはじまっており、今後、海外の学会、研究会との橋渡しとして活動を広めるとともに、日本腫瘍循環器学術ネットワーク(Japan Onco-Cardiology Educational and Academic Network)の中心施設として学術的な貢献をしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き大阪国際がんセンター腫瘍循環器科においてがん診療科から新患として紹介受診した心血管疾患患者の登録を行いながら、データベースおよび個々の症例を注意深く観察し、抗がん剤による心血管毒性を示す貴重な症例や心毒性の特徴を捉え、症例報告や研究発表など情報発信を行っていきたい。すでに、心機能やBNPなどの心筋バイオマーカーの解析を含む乳がん患者に対するHER2阻害薬による心機能障害に関する観察研究や、がん患者における心房細動の割合と抗凝固薬の効果と安全性について着目した観察研究を進めており、近い将来新しい情報を発信ができると考えている。 平成29年度は日本腫瘍循環器学会が設立され、本邦においても全国レベルの組織作りがはじまった。海外の腫瘍循環器の調査のためヨーロッパ心臓病学会学術集会(バルセロナ)、Global Cardio-Oncology Summit 2017(ロンドン)、Advancing Cardiovascular Care of the Oncology Patient(ワシントンDC)に参加し、北米および欧州で腫瘍循環器学の中心となっている医師や研究者と交流することができ、今後、日本腫瘍循環器学会との橋渡しとして活動を広め、学術的に貢献ができるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、心毒性に関する基礎研究が滞っているためである。
使用計画としては、現在解析を進めている観察研究において、心血管毒性のバイオマーカーを同定する目的で、これまで収集した血清サンプルを用いてバイオマーカー候補の定量を行う予定であり、その測定資金としてあてる(外注およびキット購入)。
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