2017 Fiscal Year Research-status Report
複合的血管内イメージングと独創的流体数理モデルによる急性冠症候群の発症機序解明
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16K09481
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
廣 高史 日本大学, 医学部, 准教授 (10294638)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粥腫破綻 / 急性冠症候群 / 動脈硬化 / 流体力学 / 粒子法 / 血栓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は1)マルチモダリティー血管内イメージングを用いて冠動脈破綻像の3次元データを収集すること、2)そのデータから独創的な数理モデルに基づいて、粥腫破綻周囲の血液の流体力学的振る舞いを再現しACSを発症したものとそうでないものを比較検討してACSを発症する破綻の決定因子を解明すること、3)ACSを発症しやすいプラークを破綻前に同定する方法を提唱し、冠動脈疾患の2次予防に役立てることにある、の3つを掲げているが、H29年度はその2年目として、H28年度の収集した実際に破綻した粥腫の力学的構造や組織性状の実データをIVUSやOCTなどから得て、その3次元立体構成を行い、破綻という力学的プロセスを詳細に解明をすすめ、ACSを発症したものとそうでないものの違いがかなり明らかになった。 すなわち当初のH29年度の計画通り、上記の実データをもとに、新しい流体数理モデルである粒子法的流体力学シミューレーションによりその理論的整合性を検証した。そのなかで、プラーク破綻の3次元立体の定量的解析の中で、破綻周りで流速が低下している粒子が多い破綻ほどACSが発症していることが判明した。すなわち、粒子の速度の空間的分布をグラフ化し、破綻の形状がどのような流速分布になるかということに置換して、その形状を表現することを行い、大きな血栓ができやすい破綻なのかを個別に検証した。この粒子法を用い高速PCによる解析が迅速にできたため、予定通り個別の破綻部位の血流分布に与える影響を的確に表示できた。そして、ACSを発症した粥腫破綻と無症候性に終わった破綻をそれぞれ比較した結果、2群間にある流速プロフィールに有意差があることを発見した。とくにACSを発症した群においては、流速の遅い粒子の空間分布に特徴性がみられた。この発見は次年度の研究を推進させるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況としては、概ね順調に進行していると思われる。H28年には昨年報告したように適度なデータ数が収集されていて、H29年度においては、その3次元データを入力し、プラークの破綻周りの空間における血流速度分布をシミュレーションできるようなデータ解析の流れが円滑に行われた。その方法には、当初の計画通り、粒子法を用いた。従来の流体力学的解析ソフトは差分法、有限要素法に代表される格子法が用いられてきたが、それらの方法では、メッシュと呼ばれる計算格子を用いるがそのためには、膨大な計算コストと時間がかかる。しかし、粒子法は、格子を用いずに流体を粒子に分割してモデル化するため、粒子は分子や液滴そのものではなく、流動とともに移動する計算点として扱われ、計算コストや時間が大幅に削減され、動的かつビジュアルに血流の挙動を表現できる。その意味でも、研究は潤滑に行われた。そしてその結果、ACSを発症したプラーク破綻像とそうではない破綻像との間に流速プロフィールに特徴的な有意差が見出された。また、この研究に関連した種々の学会報告も行うことができた。以上より、本研究課題は概ね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度においては、これまでにえられた知見から、最終的に、破綻する前の組織性状から破綻したあとの空間形状をどれだけ推定できるかを検証し、破綻前にACS易発症性粥腫の同定が可能にするための前向き試験を行う基礎を作り、ACSの発症予防や治療法開発への方向性を定めていく。その究極の成果目標はとしては、破綻する前の組織性状からACSを発症しやすい粥腫かどうかを定量的に予測できるシステムの基礎を構築していく。最終的なACS易発症性粥腫の客観的表示システムのイメージは、血管を3D表示して、内部の組織性状を透過的に示したうえで、破綻確率やACS発症確率をあわせて示し、さらに、血流が淀む確率までもを推測するシステムである。もちろん、このシステムの正当性を検証するためには膨大な検証データが必要であり当該研究期間中に十分な検証を行うことは困難であると思われるものの、将来に向けて大きな意義を示すものであるので、少なくとも本研究においてはそのシステムの有用性を検証するprospectiveな研究を提起することを目標とする。そして、本研究の当初から予想している意義として、 1)ACS発症機序解明に大きな意義をもたらすこと、2)破綻する前にACSを発症しやすい粥腫を同定する生体イメージング法を世界に類のない新奇な技術として提唱すること、3)2次予防に活用して、医療費削減に大きく寄与するだけでなく、いままでは冠動脈インターベンションの対象ではなかった有意狭窄病変ではない冠動脈粥腫に対する治療を確信をもって行い得るといった革命的治療法を開発する基盤になること、などに繋がるようにすることを最終的な目標として研究を遂行していく。さらにH30年度は本研究の最終年度であり、国民全体の健康維持に寄与する方向性をもった成果をえるべく雑誌等での発表を行う予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Clinical Feasibility of Non-Obstructive Aortic Angioscopy For Assessing Atherosclerotic Pathology of Human Aortic Valve in Vivo: A Novel Approach.2018
Author(s)
Keisuke Kojima, Tadateru Takayama, Takafumi Hiro, Suguru Migita, Tomoyuki Morikawa , Takehiro Tamaki, Takashi Mineki, Takaaki Kogo, Yoshiaki Yamane, Naotaka Akutsu, Nobuhiro Murata, Toru Oshima, Mitsumasa Sudo, Daisuke Kitano, Daisuke Fukamachi, Hironori Haruta, Atsushi Hirayama.
Organizer
American College of Cardiology 2018(ACC.18), 67th Annual Scientific Session
Int'l Joint Research
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