2016 Fiscal Year Research-status Report
TGFβシグナル系に着目した大動脈疾患修飾因子の検討
Project/Area Number |
16K09486
|
Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
森崎 隆幸 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (30174410)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森崎 裕子 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会(臨床研究施設・研究部門), 臨床遺伝科医局, 医長 (40311451)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 大動脈瘤 / 大動脈解離 / 遺伝性動脈疾患 / TGF-βシグナル / 病態修飾因子 / 遺伝子バリアント |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈疾患のうち、若年の大動脈瘤・解離を生ずるマルファン症候群(MFS)、ロイス・ディーツ症候群(LDS)など遺伝性疾患はその病状は同一でなく、大動脈病変の個人差は少なくない。病態の共通機序としてTGF-βシグナルの機能異常があり、これを標的とする薬物療法の有効性が期待されているが、その効果も一様でないことも報告されている。 以上より、大動脈疾患の進展発症には原因として知られる遺伝子変異に加えて、他の遺伝要因や環境要因を含むエピジェネティック因子の関与が少なくないと考えられる。しかしながら、病因遺伝子変異以外の病態修飾因子についての知見はまだ不十分である。 そこで、本研究では、大動脈疾患の病態修飾因子について、病状の異なる同一家系内あるいは家系の異なる患者につき、TGF-βシグナルに関連する遺伝子多型の検討と環境要因や治療服薬薬剤を比較検討して病態修飾因子を探索し、大動脈疾患の治療管理に役立つ知見を得る。 本研究の開始と研究代表者、研究分担者の異動が同時期になったことから、平成28年度は、これまでに得られた遺伝子バリアント情報と環境要因、治療薬のデータベースの構築と、研究協力者とともに新規遺伝子解析システムの確立、また、研究協力者とともに患者iPS細胞の樹立と血管細胞への分化の検討、について検討を進め、新規遺伝子解析システムの確立やiPS細胞の血管内皮細胞への分化系の確立など、次年度以降につながる研究基盤の構築が達成された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の開始と研究代表者、研究分担者の異動が同時期になるといったことから、一部の検討内容について、当初の見込みより実施の遅れのある事項があるものの、解析手法の検討確立、iPS細胞の分化系の確立など、当初見込み以上の研究進捗があり、全体としては、おおむね順調に研究進捗が見られたと判断している。 具体的には次の通りである 1)情報データベースの構築:平成28年度は、これまでの検討で変異が同定され、大動脈原因遺伝子変異を有する症例について、研究分担者とともに遺伝子バリアント情報、環境要因、治療薬についてのデータベース作成を開始した。 2)遺伝子バリアント同定に関する効率的解析手法の検討:TGFβシグナル伝達系の変化をもたらす遺伝子バリアントの効率的な同定手法の確立を目指して、研究分担者と研究協力者とともに次世代シーケンサーによる解析手法と従来法(サンガー法)との比較検討を進め、低コストで解析できるシステムが確立でき、精度の検証を含め、方法の代替にむけた検討を進めることができた。 3)マルファン症候群(MFS)・ロイスディーツ症候群(LDS)患者由来iPS細胞の樹立と分化誘導の検討:TGF-βシグナル伝達系の変化を生じる遺伝子変異を有するマルファン症候群・ロイスディーツ症候群患者症例より疾患iPS細胞を樹立し、研究協力者とともに内皮細胞、平滑筋細胞への分化系の検討を行い、内皮細胞への分化系を確立した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、初年度での開始が遅れていた、遺伝子発現・タンパク質発現の解析も実施するとともに、効率的な解析手法により同定をすすめている遺伝子バリアントを用いた疾患病像に関する関連解析を進める。これにより、病態修飾因子の絞り込みをめざす。さらに、候補として浮かび上がった因子について、患者由来細胞(患者iPS細胞由来血管細胞を含む)を用いて、因子の機能修飾も行って、治療法につながる新知見の獲得をめざす。具体的には以下の事項の検討を進める 1)原因遺伝子変異と疾患病像の違いの検討:平成29年度以降は、確立した効率的遺伝子解析手法により、病因遺伝子変異ならびに遺伝子バリアントの同定を進め、遺伝子変異と疾患病像の違い、患者間での疾患病像の違いについてパネル化を進める 2)同一遺伝子変異を有する患者間での遺伝子発現、タンパク発現の検討:同一病因遺伝子変異を同定した患者について、保存した細胞につき発現遺伝子解析、発現タンパク質解析を行って、病態修飾因子候補の選別をすすめる。 3)関連解析による、病態修飾因子遺伝子の絞り込み:病態修飾因子遺伝子候補として選別された遺伝子のバリアント情報を用いて病像との関連解析を行って絞り込みを行う。 4)患者由来細胞(iPS由来分化細胞を含む)による病態修飾因子の機能解析:病因遺伝子変異を有するマルファン症候群・ロイスディーツ症候群患者由来の細胞(iPS細胞由来分化細胞を含む)を用いて、病態修飾候補因子に対する機能修飾の検討を行い、治療法につながる知見の獲得を目指して検討を行う。
|
Causes of Carryover |
本研究開始時に研究代表者ならびに研究分担者はともに所属機関を変更したため、当初研究内容の組み直しを行い、研究打合せなど旅費の支出も行わなかったため、次年度支出経費へと変更を行った
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の研究内容の一部は平成29年度に行う予定であり、また、研究打合せならびに研究発表のための旅費を追加計上する予定である
|
-
-
-
[Journal Article] International Registry of Patients Carrying TGFBR1 or TGFBR2 Mutations: Results of the Montalcino Aortic Consortium.2016
Author(s)
Jondeau G, Ropers J, Regalado E, Braverman A, Evangelista A, Teixido G, De Backer J, Muiño-Mosquera L, Naudion S, Zordan C, Morisaki T, Morisaki H, Von Kodolitsch Y, Dupuis-Girod S, Morris SA, Jeremy R, Odent S, Adès LC, Bakshi M, Holman K, LeMaire S, Milleron O, Langeois M, Spentchian M, Aubart M, et al
-
Journal Title
Circ Cardiovasc Genet
Volume: 9
Pages: 548-558
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-