2018 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病における心房細動発症メカニズムの解明と発症予測
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16K09494
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
笹野 哲郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (00466898)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 心房細動 / マイクロRNA / 心房リモデリング / セルフリーDNA / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
心房細動の病態解明を目的として、前年度に引き続きマイクロRNAの関与に着目して研究を行い、特にバイオマーカーとしての血中マイクロRNAの応用を検討した。さらに、心房細動の進展および全身性合併症のメカニズムの1つとして、血中遊離DNA(セルフリーDNA)の関与についての検討を行った。 今までの研究において確立した心房性不整脈のマウスモデル(横行大動脈縮窄モデル・糖尿病モデル)から得た心房組織中のマイクロRNA発現変化をもとに網羅的解析を行い、マイクロRNAをベースにしたパスウェイ解析ツールであるmiR-Path DIANAを用いて、網羅的に解析した。その結果、複数の疾患モデルで共通して変化するパスウェイを発見し、現在各パスウェイの中心分子について心房細動における詳細な病態生理メカニズムの解明を行っている。 また、心房細動では全身の軽微な炎症反応が生じ、凝固能亢進・腎機能低下・血管内皮機能低下など、様々な合併症を生じることが知られている。我々は心房細動が炎症を惹起するメカニズムとして、セルフリーDNAに着目し、心房細動患者では血中セルフリーDNAが増加すること、心房筋細胞の細胞株であるHL-1細胞の高頻度刺激にてセルフリーDNAが放出されることを明らかにした。セルフリーDNAのなかでもミトコンドリア由来セルフリーDNAは心房細動で特異的に放出されること、マクロファージにおける炎症性サイトカインの発現を誘導することが明らかとなり、心房細動において全身性合併症が生じる主要な機構であると考えられた。 さらに、心房細動に合併する心原性脳梗塞について、凝固因子Xa活性を評価する研究を並行して行い、Xa活性を簡便に評価する新手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 心房細動の病態に関与するマイクロRNAの網羅的解析とパスウェイ解析 心房細動の発症及び慢性化に関与するメカニズムとして心房リモデリングが知られている。我々は心房リモデリングにおけるマイクロRNAの発現変化がどのようなシグナルを介して心房機能を制御するか検討するため、横行大動脈縮窄モデルおよび糖尿病モデルの心房組織のマイクロRNAの網羅的解析を行い、miRPath-DIANAを用いてパスウェイ解析を行った。その結果、新たに2つのパスウェイが心房リモデリングに関連するものとして同定された。現在両パスウェイにおける中心的分子に焦点をあてて機能解析を行っている。
2) セルフリーDNAを介した心臓と他臓器のコミュニケーションおよび心房細動のバイオマーカーとしてのセルフリーDNA 心房細動症例および健常者の血漿中セルフリーDNAを定量したところ、心房細動患者では有意に濃度が上昇していた。また、心房細動を模したモデルとしてマウス心房筋細胞株であるHL-1細胞を高頻度ペーシング刺激し、培地中のセルフリーDNAを定量したところ、時間依存的にセルフリーDNAが増加していた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進行しており、マイクロRNAを介した心房細動の進展メカニズム解析に加え、セルフリーDNAを介した心臓と他臓器の臓器間コミュニケーションの点でも新知見が得られている。研究の最終段階として、以下の検討を行う。 1) 心房細動のバイオマーカーとしてのマイクロRNA・セルフリーDNAの臨床的有用性の検討 今までに同定した心房細動のバイオマーカーとなるマイクロRNA・セルフリーDNAについて、複合的評価によって心房細動発症予測が可能となるか、より多数例での検討を進める。 2) 心房細動と全身的合併症に関連するセルフリーDNAの関与の検討と治療ターゲットの探索 引き続き、ミトコンドリア由来セルフリーDNAが心房細動においてどのように全身炎症を惹起するのか、さらにメカニズムを明らかにする。また、ミトコンドリア由来セルフリーDNAの放出経路などに着目し、新規治療ターゲットの探索を行う。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に伴い、心房細動の進展メカニズムに関与しバイオマーカーとして使用しうる、cell-free DNAを新たに見いだした。血中循環マイクロRNAおよびセルフリーDNAを統合的に評価することを新たに次年度の目標として追加し、マイクロRNAおよびセルフリーDNA測定費用を新たに計上した。このため、本年度の支出を抑制して翌年度分として使用する計画とした。
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[Presentation] Circulating Cell-free DNA and Cell-free Mitochondrial DNA in Patients with Atrial Fibrillation.2018
Author(s)
Takahashi N, Nakamura W, Yamazoe M, Natsume Y, OonoA, Shiohira S, shira Y, Yagishita A, Sasaki T, Goya M, Hirao K, Furuakwa T, Sasano T
Organizer
Asia-pacific Heart Rhythm Society meeting. Taipei, Taiwan
Int'l Joint Research
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