2017 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集技術を難治性重症心不全治療へ応用する基盤技術整備
Project/Area Number |
16K09500
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
肥後 修一朗 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00604034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
彦惣 俊吾 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (30423164)
高島 成二 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (90379272)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 拡張型心筋症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究開発は、ゲノム編集技術を難治性重症心不全治療へ応用する基盤技術を整備することを目的とし下記の項目に沿って推進した。 1.対象疾患のゲノムDNA診断:難治性心筋症症例を対象に、疾患遺伝子パネル解析を用いた原因遺伝子の同定を行った。 2.CRISPRによる心筋ゲノムDNA修復基盤技術開発:当初の研究計画に則り、ターゲット特異的なガイドRNA設計、培養細胞を用いたターゲットDNA切断活性評価、相同組み替えベクターの設計、及び相同組み換え修復による培養心筋細胞における遺伝子改変を行った。具体的には、ミオシン軽鎖遺伝子のC末端に蛍光タンパク質を導入することを試みた。Cas9恒常発現マウス培養心筋細胞を用い、アデノ随伴ウイルスを用いて、ガイドRNA及び修復テンプレート遺伝子を導入し、ハイコンテント解析による経時的観察を行うことで、心筋細胞において相同組み換え修復が生じることを見出した。次に、DNA取り込みをEdUにより標識することで、心筋細胞における相同組み換え修復に、細胞周期S期侵入は必ずしも必要ないことを証明した。さらに、トロポニンT遺伝子に変異をもつ拡張型心筋症モデルマウス培養心筋細胞に対してゲノム編集を行い、12.5%の効率で正確な相同組み換えによる修復に成功した。 3.CRISPRによる心筋ゲノム修復基盤技術の安全性評価方法の開発:上述の拡張型心筋症モデルマウス培養心筋細胞を対象とした実験では、42.5%の非相同末端結合を認めた。相同組み換え効率の改善を目指して研究を推進する。 4.効率的な治療コンポーネントの組織送達法の確立:野生型マウス培養心筋細胞に対して、Cas9をmRNAで導入し、アデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入と組み合わせ、相同組み換え修復に成功した。但し、Cas9恒常発現心筋細胞を用いた場合に比べてその効率は低く、今後さらに改良を重ねる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究開発は、ゲノム編集技術を難治性重症心不全治療へ応用する基盤技術を整備することを目的とし、研究実績の概要に記した下記4つの項目に沿って推進した。 1.対象疾患のゲノムDNA診断、2.CRISPRによる心筋ゲノムDNA修復基盤技術開発、3.CRISPRによる心筋ゲノム修復基盤技術の安全性評価方法の開発、4.効率的な治療コンポーネントの組織送達法の確立 うち2について、アデノ随伴ウイルスによりゲノム編集に必要な遺伝子をマウスの心筋細胞に導入し、分裂しない心筋細胞においても相同組み換えが起こることを証明した。また、心筋細胞における相同組み換え修復に、細胞周期S期侵入は必ずしも必要ないことを証明した。さらに拡張型心筋症を起こすトロポニン遺伝子に変異をもったマウスの心筋細胞において、トロポニン遺伝子の変異を正常に修復することに成功した。本年度は、これら研究成果について、学術論文に報告し、日本心筋症研究会、ゲノム編集学会、日本循環器学会基礎研究フォーラム、日本循環器学会学術集会、及び米国心臓協会学術集会にて成果報告を行った。上述の1、3、4については引き続き平成30年度に向けて研究を推進する。更に、心筋細胞における相同組み換えを介したゲノム改変について、その分子メカニズム解明を目指し研究を継続していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度、平成29年度の研究開発において、アデノ随伴ウイルスによりゲノム編集に必要な遺伝子をマウスの心筋細胞に導入することで、分裂しない心筋細胞においても相同組み換えが起こることを証明した。これまで非分裂細胞では相同組み換えを介したゲノム編集は起こらないとされている。平成30年度は、心筋細胞において観察された相同組み換え修復の分子メカニズムの解明を目指し、研究を推進する。また、当初研究計画に則り、対象疾患のゲノムDNA診断、CRISPRによる心筋ゲノム修復基盤技術の安全性評価方法の開発、効率的な治療コンポーネントの組織送達法の確立も行っていく。
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