2016 Fiscal Year Research-status Report
カルモジュリンの心筋細胞内動態を標的とした新しい心肥大、心不全抑制治療法の探査
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16K09502
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小田 哲郎 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (40569290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 健 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50363122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カルモジュリン / リアノジン受容体 / GRK5 / HDAC / 心肥大 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では筋小胞体上に存在するCa放出チャンネルであるリアノジン受容体(RyR2)から解離したカルモジュリン(CaM)が心肥大や心不全のシグナル伝達に重要な役割をしているとの仮説に基づいて、単離心筋細胞の免疫染色法を用いて研究を行った。まず、心肥大を惹起するアンジオテンシンII (AngII)、フェニレフリン(PE)を心筋細胞に負荷し、内因性CaMの細胞内動態を評価した。その結果、AngIIやPE負荷によりRyR2に結合しているCaMは減少し、核内のCaMは増加していた。さらに、CaMの核内移行のキャリアーとなり得るGRK5の細胞内動態も評価したところ、AngIIやPE負荷によりCaMと同様に核内のGRK5発現量は増加していた。また、心肥大シグナル伝達を担うヒストン脱アセチル化酵素(HDAC5)は核外に移行しており、心肥大のシグナルが活性化されていることが実証された。次に、RyR2からのCaMの解離を抑制すると言われているダントロレンをAngIIやPE負荷する前に投与したところ、RyR2からのCaMの解離は抑制され、核内へのCaMの移行も抑制された。さらに核内GRK5発現量も抑制され、HDAC5の核外への移行も抑制された。さらに、特異的にRyR2のCaMを強制的に解離されるスラミンを負荷し、CaM、GRK5、HDAC5の細胞内動態を評価したところ、AngIIやPE負荷と同様な動態を示した。すなわち、RyR2からCaMは解離し、核内へ移行、それに伴いGRK5も核内へ移行し、HDAC5は核外へ移行した。この結果はRyR2からのCaMの解離が、病的な心肥大の進展に関わっており、このRyR2からのCaMの解離を抑制することにより、病的な心肥大や心不全の進展を防ぐことができる可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単離心筋細胞を用いた心筋細胞内のカルモジュリンの免疫染色法の条件設定を確立できたことにより、その後の研究がスムーズに行うことが出来た。また、この成果は国内外で研究発表することができた。研究の細部を詰めることにより、論文作成まで可能な状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、この研究成果(RyR2からのCaMの解離を抑制することの重要性)の信憑性をより強固なものにしていくために、CaM高親和性ノックインマウスなどを作成し、CaMの心筋細胞内動態に注目した全く新しい病的心肥大、心不全抑制効果を要する薬や治療法の探査を目指す。
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Research Products
(2 results)