2016 Fiscal Year Research-status Report
Development of heart failure treatment with micro-cardiac tissues with vascular network
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16K09507
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤田 淳 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (10306706)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 心筋細胞 / 心筋球 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管網を構築する心筋球を作成するために、本年度はまず基盤となる純化心筋細胞のみで心筋球の作成条件を検討した。通常心筋球はマイクロウェルプレートを用いて作製するが、マイクロウェルプレートの深さ、内径、材質等を検討し、心筋球作製に最適なマイクロウェルプレートを決定した。さらに純化心筋細胞の品質や細胞の播種密度を調整することで心筋球作製に最適な条件を決定した。心筋球の形成過程を経時的に観察することによって多能性幹細胞由来の心筋細胞は、マイクロウェルプレート上にて数日程度で再現性を持って心筋球を形成することが確認された。また、心筋球を形成する細胞数と心筋球の大きさを検討したところ、純化心筋細胞、約1000細胞で直径約200マイクロメートル程度の心筋球が形成されることが確認された。凝集塊である心筋球は酸素透過性が低下することが予想されるため特殊な酸素透過性プレートを用いた心筋球の作製実験をおこない、溶存酸素が心筋球の形成にどのような影響を与えるのかを検討した。さらに本年度は浮遊培養法で大量培養したヒトiPS細胞由来心筋細胞では純化精製後の心筋細胞の品質が微小心筋組織の確立に不十分であることが判明したため、品質の高い心筋細胞を大量に獲得して研究を推進するために二次元培養法を用いた未分化iPS細胞の大量培養法と心筋細胞の分化法を確立した。二次元培養法では従来広く行われている浮遊培養法と比較して培養液が全ての細胞に均一にいきわたるため未分化iPS細胞の維持培養、拡大培養、心筋細胞の分化誘導を効率よく行うことが可能になる。特に我々の開発したグルコース、グルタミンを除去し乳酸を添加した純化精製法では培養液が個々の細胞にあますところなく浸透し確実に心筋細胞のみに純化精製することが可能になった。本法によって心筋細胞を純化精製することで高品質な心筋細胞で心筋球を作製することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は心筋球形成の基礎条件を詳細に検討した。純化心筋細胞から心筋球形成への培養条件を確定することによって来年度以降の研究基盤を確立することが可能になった。これにより、本培養条件を軸として血管網を有する心筋球の形成過程を詳細に検討することが可能になった。また、二次元大量培養法に無グルコース、無グルタミン、乳酸添加培地を組み合わせることでiPS細胞由来の純化心筋細胞を大量に獲得することを可能にした。我々の研究室を含めてこれまで世界中で行われてきた心筋細胞の大量培養法は、主に浮遊回転培養法であった。この方法は細胞を大量に獲得するには適した方法であるが、iPS細胞由来の心筋細胞では細胞凝集塊の中に未分化iPS細胞をはじめとした非心筋細胞が残存する可能性が高い。今回二次元培養法による大量培養法を確立したことによって非心筋細胞をほぼ完璧に除去することに成功し、純化心筋細胞のみを獲得することに成功した。世界中の研究室でここまで純度の高い心筋細胞を用いて研究しているところはなく、純化心筋細胞を用いることで真の微小心筋組織を確立することが可能になる。さらに心筋球に血管網を形成するには心筋球の培養条件における低酸素状態での影響がとても重要になる。低酸素状態ではHypoxia induced factor-1α(HIF-1α)、Vascular endotherial growth factor(VEGF)等の働きにより血管新生が促進されることが報告されている。それゆえ、血管網の形成には低酸素状態が有効である可能性が示唆されるが、直径200マイクロメートルの心筋球は1000細胞の凝集塊であり細胞内部は低酸素によって壊死を起こす可能性が十分にある。それゆえ、本年度に細胞凝集に寄与する溶存酸素の影響を確認できたことは来年度以降の研究にとって極めて有用であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって、ヒトiPS細胞由来の微小心筋組織形成にとって最も重要な高純度かつ高品質な心筋細胞を大量に獲得することに成功した。さらに、この純化心筋細胞を用いた微小心筋組織(心筋球)の形成法を確立しており、来年度以降にはこの純化微小心筋組織を基盤として血管内皮細胞であるHUVECや間葉系幹細胞のMSCを混合することによって血管網を有する微小心筋組織を作製する。血管網を有する微小心筋組織にとって最適な播種細胞数および各細胞の混合比率を検討することで最適な培養条件を確認する。さらにゼラチンやマトリゲル等のマトリックスを混合して微小心筋組織の形成効率を評価する。また、本年度中には高純度の心筋細胞を用いた微小心筋組織の酸素需要の変化における品質への影響を評価しており、来年度以降は培養液中の溶存酸素が微小心筋組織の血管網形成および形態、拍動率、大きさ、バイアビリティー等に与える影響を確認し、最適な微小心筋組織の作製法を検討する。この形成された血管網を有する微小心筋組織に成長因子を加えることによって形成血管の成熟化を促し、微小心筋組織そのものの成熟化を促進する。成熟した微小心筋組織の遺伝子発現をマイクロアレイ、定量的RT-PCR等によって解析することで心筋組織としての成熟度、表現型(ペースメーカー型、心房筋型、心室筋型)を評価する。また、免疫染色やFACS解析によって微小心筋組織に発現するタンパク質や細胞分裂、アポトーシスの程度等を評価する。作製した微小心筋組織を免疫不全マウスに移植することで、ホストの血管との血管網の形成を確認する。また、心筋梗塞モデルに移植することによって心機能の改善を確認し、心臓への移植による不整脈の発現を評価する。
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Causes of Carryover |
本年度は心筋球形成の基礎条件を詳細に検討した。さらに二次元大量培養法に無グルコース、無グルタミン、乳酸添加培地を組み合わせることでiPS細胞由来の純化心筋細胞を大量に獲得する方法を確立した。次年度は純化微小心筋組織を基盤として血管網を有する心筋球の形成過程を詳細に検討するために血管内皮細胞、培養液、試薬、成長因子等に支出が必要である。また、進捗に合わせて動物を購入する必要がある。それゆえ、本年度は研究計画に支障が出ないように無駄な支出を削減して研究資金の出資を調整した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はに血管内皮細胞、培養液、試薬、成長因子等を購入する。その他に、マウス、ラットの購入および飼育費、学会発表のための参加費および論文発表のための英文校正費等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)