2016 Fiscal Year Research-status Report
ギャップ結合による血管内皮細胞の物性制御とその役割
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16K09513
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
岡本 貴行 島根大学, 医学部, 准教授 (30378286)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 硬さ / 炎症 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では炎症時における血管内皮細胞の物性変化を解析し、細胞の物性が持つ病態生理学的役割を明らかにすることを目的とする。平成28年度では、炎症刺激による血管内皮細胞の硬さ変化の解析と血管内皮細胞の硬化を誘導する細胞骨格編成の解析を行った。 まず、大動脈、肺微小血管、臍帯静脈など各種血管由来の内皮細胞の硬さを原子間力顕微鏡で評価し、血管種にかかわらず内皮細胞は同等の硬さ・弾性を有していることを明らかにした。次に、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVECs)に腫瘍壊死因子刺激を与え、時間依存的な細胞の硬さ変化を解析した。HUVECsは刺激4時間後に硬化し、24時間後には刺激前と同等の硬さに戻ることを見出した。また、トロンビン刺激でも同様の結果を示すことを確認した。 細胞の硬さは細胞骨格に制御されており、炎症時に内皮細胞は接着班とストレスファイバーの形成を亢進する。細胞の硬さと骨格の連携を明確化するために、Lifeact-GFP遺伝子を導入してアクチン骨格を可視化したHUVECsを作成し、細胞表面の硬さ分布とFアクチンの局在を評価した。細胞の硬さはアクチンの局在に依存することを明らかにした。また、Focal adhesionの形成を蛍光免疫染色法で評価し、細胞の硬さとFocal adhesionの数が相関することを明らかにした。 以上の結果から、我々は血管内皮細胞が炎症刺激に応答して、細胞接着班の形成と細胞骨格の編成を誘導し、細胞自身の硬さ・弾性を増加することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度より、現職に異動したことに伴い、研究環境の整備・再構築に時間を必要としたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はないが、本年度で得られた新たな知見をもとに今後の研究内容に一部追加や修正を加えることで本課題を達成できると考えている。今後は血管内皮細胞の硬化のメカニズム、細胞硬化の病態生理学的役割の解明だけでなく、これらに関わるメカノバイオロジーなどの新たな分野にも挑戦することで最終年度には当初研究を達成し、さらには研究発展を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
現在、本研究課題で得られた結果についての論文を投稿中であり、平成28年度内に採択される可能性があったためその投稿および掲載費として予定していた。しかし、査読に時間を要しており、掲載の可否の決定が遅れ、研究費の使用に至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
投稿中の論文が査読中であり、その可否に応じて掲載費、また投稿準備費として平成29年度に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)