2017 Fiscal Year Research-status Report
ギャップ結合による血管内皮細胞の物性制御とその役割
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16K09513
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
岡本 貴行 島根大学, 医学部, 准教授 (30378286)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 細胞の硬さ / 炎症 / ギャップ結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では炎症時における血管内皮細胞の物性変化を解析し、細胞の物性が持つ病態生理学的役割を明らかにすることを目的とする。我々はこれまでに血管内皮細胞が炎症刺激に応答して細胞接着班の形成と細胞骨格の編成を誘導し、細胞自身の硬さ・弾性を増加することを見出した。平成29年度では、炎症時における血管内皮細胞の硬化を誘導する機構を解析した。我々は本研究課題以前の研究においてギャップ結合が血管内皮細胞の炎症や血液凝固を制御することを明らかにしてきた。これら一連の成果から、ギャップ結合が血管内皮細胞の硬さを制御すると仮説を立てその検証を行った。 まず、ギャップ結合阻害剤を処理したヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVECs)の硬さを昨年度と同様に原子間力顕微鏡を用いて測定した。その結果、ギャップ結合を阻害したHUVECsは硬化することを明らかにした。また、腫瘍壊死因子とギャップ結合阻害剤の共刺激を加えることで、ギャップ結合阻害剤は腫瘍壊死因子が誘導する細胞硬化に協調的に作用し、細胞硬化を持続させることを明らかにした。ギャップ結合阻害剤が接着班とストレスファイバーの形成を亢進したこと、一方で、細胞骨格再編成阻害剤、アクトミオシン阻害剤が炎症やギャップ結合によって誘導される細胞硬化を抑制したことからギャップ結合による細胞の硬さ制御が細胞骨格再編成に依存的であることが示唆された。 以上の結果から、炎症刺激に応答して誘導される血管内皮細胞の硬化にギャップ結合が関与することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炎症によって血管内皮細胞が硬化を示したことに引き続き、ギャップ結合が細胞硬化に関わることを明らかにできた。また、特に細胞骨格との関連性を明確にできたことで、論文や総説の発表に結びついた。そのため当初の予定通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はないが、H29年度で得られた新たな知見をもとに今後の研究内容に一部追加や修正を加えることで本課題を達成できると考えている。H30年度は血管内皮細胞の硬化に関わる詳細なメカニズムを明確にし、また、細胞硬化の病態生理学的役割の解明、特に血栓性疾患、炎症性血管病変における役割の解析を行いたい。当初の研究目標を達成しつつ、さらにはこれまでの本研究から得られた知見をもとに細胞のメカニクスおよびメカノバイオロジーの解明などの新たな研究にも取り組み、研究発展に努めたいと考えている。
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Research Products
(7 results)