2017 Fiscal Year Research-status Report
肥満マウス喘息モデルを用いた重症・難治性喘息の病態解明と治療法の開発
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16K09552
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
大河原 雄一 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (40333801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川西 修 東北医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (50296018)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 喘息 / 肥満 / 内蔵脂肪祖域 / DNAマイクロアレイ / アディポカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、社会的・医療経済的に問題となっている肥満が、気管支喘息(以下、喘息)の重症・難治化に関与していることが疫学的調査で明らかとなっており、我々もこれまでに肥満による内臓脂肪の免疫代謝的調節機構の変化が自然免疫と獲得免疫系に影響を及ぼして喘息悪化に関与しているのではないかと考え検討してきた。そこで本研究では、これまでの研究成果をさらに発展させ、自然免疫と獲得免疫に関与している未知で重要な喘息増悪因子とその機能を明らかにし、新たな治療法を開発することを目的としている。 平成28年度において、野生型マウス(C57/BL6)を用いて食餌性肥満アレルギー性喘息モデルの内臓脂肪組織における遺伝子発現の変化についてDNAマイクロアレイ法を用いて検討した結果、肥満関連遺伝子2076個のうち99個の遺伝子の発現増強と560個の遺伝子発現が減少、喘息関連遺伝子764個のうち47個の遺伝子発現増強と182個の遺伝子発現減少を認めた。そこで平成29年度では、以上のような肥満による内臓脂肪組織の遺伝子変化が実際に喘息を増悪さるかどうかを確認するため、肥満マウス内臓脂肪組織を非肥満マウス腹腔内に移植することで喘息による気道炎症が増悪するかどうかを検討した。その結果、非肥満マウス内臓脂肪組織細胞を移入した際には喘息による気道炎症反応は増悪しなかったが、肥満マウス内臓脂肪組織細胞移入により有意に喘息による気道炎症反応の増強が認められた。以上のことから、肥満による上記内臓脂肪組織の機能的変化(遺伝子発現の変化)が内蔵脂肪組織から離れて存在する気道炎症に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度のマイクロアレイ法を用いた検討で、内臓脂肪組織の機能的変化(遺伝子発現の変化)が喘息増悪に関与していることが示唆されたため、実際に肥満脂肪組織を非肥満マウス喘息モデルに移植することで、肥満による喘息増悪が再現できるかどうかを検討した。当初、内臓脂肪組織の移植法がうまくいかず手間取ったこともあり少々予定よりも研究の進行が遅れてしまったが、内臓脂肪組織から細胞を取り出して移入するという方法を開発して実験を継続することができた。従って、研究成果の達成度としてはおおむね予定通り進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画通りに、これまでの結果で得られた肥満による喘息増悪関連候補遺伝子の役割について、肥満喘息マウスモデル内臓脂肪組織の非肥満喘息マウスモデルへの移植実験や各組織内での候補遺伝子関連蛋白や細胞内伝達物質の発現調節機構を各臓器間の相互作用も含めた検討を通して明らかにし、新たな治療法の開発につなげていきたい。
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Causes of Carryover |
平成29年度では、内臓脂肪組織移植実験において移植法の手技に問題が生じ、新たな方法の開発に手間取ってしまった。その結果、肥満による喘息増悪に関与している細胞内伝達物質や転写因子の同定に関する実験が遅れたため、それに要する実験機材、試薬分が未使用となり次年度使用額が生じた。 翌年度では、上記細胞内伝達物質と転写因子の同定に必要な実験機材、試薬と合わせて、予定の実験を遂行するため、DNAマイクロアレイ追加実験、マウス購入・飼育代、マウス高脂肪食、PCRとELISAの試薬等に使用する予定である。
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