2016 Fiscal Year Research-status Report
悪性中皮腫の診断および予後予測に有用なバイオマーカーの確立と新規治療開発
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16K09566
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
田端 千春 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90432393)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 悪性中皮腫 / カルパイン / 分子生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性中皮腫は石綿・アスベスト曝露に関連し胸膜・腹膜などに発生する予後不良の悪性腫瘍である。現在わが国においてアスベスト使用は禁止されているが、アスベスト曝露数十年後に発生する悪性中皮腫は今後さらに増加傾向を示すことが予想される。建造物材料などアスベストは様々なところで使用されており、アスベストを扱う労働者に限らず、労働者の家族、アスベスト工場やアスベストを用いた建物周辺の住民にも発生する悪性中皮腫の対策は、社会的問題である。しかしながら、中皮腫は抗がん剤療法や放射線療法に抵抗性であり、有効な治療法がまた十分に確立されていないため、その治療法の開発が世界的に重要である。本年度は中皮腫細胞を用いた基礎研究を行い、以下の研究成果を得た。以前われわれはカルシウム依存性細胞内プロテアーゼを抑制することで間質性肺炎・肺線維症の進行を抑制できることを細胞およびマウスを用いた基礎研究で実証している。肺線維症の主要な原因細胞のひとつが肺線維芽細胞であるが、その肺線維芽細胞と同様の間葉系細胞である中皮細胞の形質転換で発症する中皮腫におけるカルパインの役割について今回検証した。その結果、カルパイン阻害剤によって悪性中皮腫細胞の増殖が抑制されることをはじめて実証した。そのメカニズムとして、NF-kBを介したangiopoietin-1による悪性中皮腫細胞増殖効果をカルパイン阻害剤が抑制することを証明した。今回の研究成果は、悪性中皮腫においてカルパインをターゲットにした新規治療法の開発の可能性を示唆したと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、肺線維芽細胞と同様の間葉系細胞である悪性中皮腫細胞に対する研究を遂行してきた結果、(1)TGF-beta1とangiopoietin-1が悪性中皮腫細胞自己増殖因子であること、(2)Platelet derived growth factor (PDGF)-BBが悪性中皮腫細胞浸潤因子であることを実証している。今回はカルパインをターゲットにした中皮腫に対する新規治療法の開発に向けて細胞実験でその成果を得ることができ、研究の進捗状況はおおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
悪性胸膜中皮腫の臨床応用可能な治療方法の新規開発のため、下記の実験を遂行予定である。 (1)サイトカインなどの定量(Real-time RT-PCRやELISA; IL6, TGF-beta, CTGF, PDGF,VEGFなど (2)免疫染色(alpha-SMA, vimentin, IL6, TGF-betaなど)(3)MTTなどの増殖アッセイ (3)細胞遊走アッセイ (4)アポトーシスアッセイ
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Causes of Carryover |
すでに購入していた物品などで平成28年度の研究の遂行が可能であったため、当該年度に新規の購入はなかった。しかしながら平成29年度は新たな研究を行うためには研究費が必要であると考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1)サイトカインなどの定量(Real-time RT-PCRやELISA; IL6, TGF-beta, CTGF, PDGF,VEGFなど (2)免疫染色(alpha-SMA, vimentin, IL6, TGF-betaなど)(3)MTTなどの増殖アッセイ (3)細胞遊走アッセイ (4)アポトーシスアッセイなどの研究を遂行する。
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