2016 Fiscal Year Research-status Report
肺線維症における活性酸素シグナリングの役割とその制御機構
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16K09571
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松野 洋輔 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30633177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 幸雄 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80272194)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 活性酸素 / Notch経路 / Nrf2 / 上皮間葉移行 / アポトーシス / IL-6 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は肺線維症における活性酸素(ROS)シグナリングの役割を明らかにすることを目的としている。本年度は肺線維症の病態と関連する下記の2つのin vitroのアッセイにおいて、ROSを中心としたシグナル経路の役割を解明することを目的とした。
①肺胞上皮細胞株A549におけるTGF-β1誘導性上皮間葉移行(EMT):われわれは既に、TGF-β1がNotch経路の活性化を介したSnai1発現誘導によりEMTを誘導することを報告している。TGF-β1刺激により、NOX4発現・細胞内ROSの上昇とともに、酸化ストレス応答因子であるNrf2の活性化が確認された。N-acetylcystein投与により細胞内ROSを低下させると、Nrf2とNotch経路の活性化の抑制とともに、EMTが抑制された。siRNAを用いたNrf2の発現抑制でも、Notch経路の活性化とEMTの抑制が確認された。以上よりTGF-β1刺激で産生されたROSによるNrf2-Notch経路の活性化がEMTの誘導に必要であることが示唆された。
②線維芽細胞株NIH 3T3におけるIL-6発現とアポトーシス耐性誘導:NIH3T3細胞は細胞濃度に依存してアポトーシス細胞が増加する。今回われわれは、細胞濃度の増加とともに活性化したNotch経路が、IL-6の発現誘導を介してSTAT3をリン酸化し、アポトーシスを制御していることを明らかにした。Notch経路はIL-6のプロモーターを直接活性化していた。細胞濃度の増加に伴いROSは低下しており、Notch経路の活性化におけるROSシグナリングの意義は明らかではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TGF-β1誘導性EMTにおいて、ほぼ当初の予定通り、ROSとその下流でNrf2、Notch経路が担う役割の分子メカニズムを明らかにすることができた。また線維芽細胞の細胞濃度依存性アポトーシスでは、一部予期していない結果が得られたものの、Notch/IL-6/STAT3によるアポトーシス耐性誘導の機序が解明できた。全体として順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
線維芽細胞株のIL-6発現とアポトーシス耐性誘導について、すでに論文を作成し、現在投稿中である。当初の予想と異なり、アポトーシス耐性に寄与するNotch/IL-6/STAT3へのROSの関与は確認できなかったことから、今後低酸素などの他の因子に着目し、Notch経路活性化の機序を明らかにする。 TGF-β1誘導性EMTについて、ROSの産生とROSによるNotch経路活性化の機序を明らかにし、論文化する。 ブレオマイシン誘導肺線維症モデルを用い、in vitroで得られた結果をin vivoにて検証し、治療応用の可能性を探る。今回in vitroにおいてNrf2の抑制によりEMTは制御されたが、すでにわれわれの研究室は生体内でNrf2がブレオマイシン誘導肺線維症に対し防御的に作用することを報告している。そこで今後は主に線維芽細胞のアポトーシス耐性誘導に着目して解析を行い、Notch/IL-6を標的とした新規治療法について検討を行う。
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