2016 Fiscal Year Research-status Report
基質硬度に起因する肺および気道リモデリング制御機構と細胞基質力学検知機構の解明
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16K09578
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 理 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (60378073)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞外基質 / メカニカルストレス / 肺線維化 / リモデリング / メカノバイオロジー / 肺線維芽細胞 / メカノトランスダクション / 特発性肺線維症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、呼吸器系細胞が足場として利用している基質の硬度を感知する「基質力覚検知機構」を明らかにし、肺や気道の線維化やリモデリングの病態機序を解明することである。 正常ヒト肺線維芽細胞を用いた実験において、異なる硬さのゲル上で細胞培養を行った。軟らかなゲル(1kPa, 2kPa)上で培養した細胞と比較すると、硬いゲル(25kPa, 50kPa)やプラスチック上で培養した細胞の形態はより胞体が広がっておりかつ紡錘形を呈していた。加えて、細胞内のα-smooth muscle actin蛋白発現が有意に増強していた。更には、硬いゲル(25kPa)上で培養した肺線維芽細胞は軟らかなゲル(2kPa)で培養した細胞と比べ、細胞遊走能の増強を認めた。以上の結果から、硬い基質の環境では線維芽細胞が活性化し、筋線維芽細胞へ分化することが示された。肺線維症の病態機序として、線維化に伴う肺の硬化が肺線維芽細胞を活性化し、更に線維化が促進される正のフィードバック機構が存在することが示唆された。 また、ヒト肺線維芽細胞を用いた実験において、細胞をシリコン膜上に接着させた後、機械的ストレッチ刺激や低浸透圧刺激を与えたところ、細胞外へのATP放出を誘導することを見出した。更に、細胞からのATP放出をルシフェリン-ルシフェラーゼ反応の発光として高感度カメラで捉え、リアルタイムイメージ(動画)撮影を行うことに成功した。 細胞外ATPは肺線維症の病態に関わる炎症性メディエーターとして考えられていることから、過剰な機械的刺激により誘導されたATP放出が線維化に寄与している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養ヒト肺線維芽細胞を用いた課題に関しては、基質硬度依存性の研究、ATP放出に関する研究いずれにおいても学会発表を行っており、順調に進んでいる。これら2つの研究プロジェクトについても現在英文原著論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
培養ヒト肺線維芽細胞における基質硬度依存性の細胞分化と活性化に関する論文、ならびに機械的刺激によって誘導されるATP放出に関する論文の受領を目指し、必要に応じて追加実験を行う。 引き続き、肺線維芽細胞の機能における基質硬度による制御機構に関する研究を行い、細胞力覚検知機構として働くメカノセンサーの同定を目指す。本研究で得られた知見および結果が、肺線維症の病態機序につながることが今後の目標である。
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Causes of Carryover |
消耗品が予定していた金額より安く購入できたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養実験に用いるゲル(基質)を購入する。
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Research Products
(4 results)