2017 Fiscal Year Research-status Report
基質硬度に起因する肺および気道リモデリング制御機構と細胞基質力学検知機構の解明
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16K09578
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 理 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (60378073)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メカニカルストレス / メカノバイオロジー / 肺線維芽細胞 / 気道平滑筋 / 肺線維化 / リモデリング / 喘息 / メカノトランスダクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、呼吸器系細胞が足場として利用している基質の硬度を感知する「基質力覚検知機構」を明らかにし、肺や気道の線維化やリモデリングの病態機序を解明することである。 正常ヒト肺線維芽細胞を異なる硬さのゲル上で培養する実験を行った。軟らかなゲル(1kPa, 2kPa)上で培養した細胞と比較すると、硬いゲル(25kPa, 50kPa)やプラスチック上で培養した細胞では活性化した線維芽細胞(筋線維芽細胞)のマーカーであるα-smooth muscle actin蛋白発現が有意に増強していた。硬いゲル(25kPa)上で培養した肺線維芽細胞は軟らかなゲル(2kPa)で培養した細胞と比べ細胞遊走能の増強を認めた。α-smooth muscle actinに対してsiRNAを導入して発現を抑制することにより、細胞遊走が抑制された。以上の結果から、硬い基質の環境では線維芽細胞が活性化し、筋線維芽細胞へ分化し、遊走能が増強すること、α-smooth muscle actinが遊走能の亢進をを制御することが示された。肺線維症の病態機序として、線維化に伴う肺の硬化が線維芽細胞の活性化を介して線維化を更に促進する、正のフィードバック機構が存在することが示唆された。 また、PD-L1を強発現するヒト肺がん細胞株(HCC827細胞)を用いた実験を行い、異なる硬さのゲルに培養した時のPD-L1発現への影響を検討した。がん細胞を軟らかなゲル(2kPa)上もしくは接着できないFalconチューブ内で培養することで、PD-L1発現が有意に抑制された。更に、PD-L1発現はcytochalasin Dによるアクチン重合阻害により抑制された。以上より、肺がんではがん組織の硬さが微小環境として肺がん細胞のPD-L1発現を制御しており、その機序として細胞接着を介したアクチン細胞骨格が関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養ヒト肺線維芽細胞を用いた課題に関しては、基質硬度依存性の研究、ATP放出に関する研究いずれにおいても英文原著論文が掲載された。また、肺がん細胞株のPD-L1発現に関する研究についても英文原著論文が掲載された。 引き続き肺線維芽細胞と気道平滑筋細胞に関する研究を実行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、肺線維芽細胞の機能における基質硬度による制御機構に関する研究を行い、細胞力覚検知機構として働くメカノセンサーの同定を目指す。また、気道平滑筋細胞と基質との相互作用、気道平滑筋細胞に対する基質硬度の影響に関する研究を行う。本研究で得られた知見および結果が、肺線維症や気道リモデリングの病態機序につながることが今後の目標である。
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Causes of Carryover |
(理由)消耗品の消費量がが予定したより少なくても実験が進んだため、未使用額が生じた。 (使用計画)培養細胞ならびに細胞実験に用いるゲル(基質)を購入する。
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Research Products
(10 results)