2016 Fiscal Year Research-status Report
肺腺がんにおけるROR1によるカベオラ形成を標的としたEGFR-TKI耐性の克服
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16K09579
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山口 知也 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (70452191)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肺腺がん / ROR1 / カベオラ / EGFR-TKI / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
リネジ特異的生存癌遺伝子TTF-1によって転写活性化されるROR1は、EGFRからの肺腺癌の生存シグナルの維持に関わる受容体型チロシンキナーゼ(RTK)である。肺腺癌細胞株におけるROR1の抑制は、EGFR二重変異やMETの遺伝子増幅によるEGFR-TKIに耐性を獲得した細胞においてもアポトーシスを誘導し増殖を阻害する。そこで本研究では、ROR1による様々なRTKを介した生存シグナル制御機構を明らかにするとともに、バイパス経路によって獲得したEGFR-TKI耐性細胞株に対して、ROR1のカベオラ制御機能を標的とした極めて独自性の高い耐性克服につながる基盤的知見を得ることを目指す。 平成28年度は、当初の研究実施計画に沿って、順調に進展している。これまでの結果から、ROR1はカベオラ構成分子であるCAV1やCAVIN1と直接結合することが分かり、各々のROR1に対する結合領域を特定することができた。またこれらの結合領域を欠損させたROR1欠損変異体を作製し、CAV1の発現への影響を調べたところ、両者の結合領域はCAV1発現の安定化に必須であることが判明した。さらにカベオラ形成について、急速凍結・凍結割断レプリカ標識法等による電子顕微鏡を用いた形態学的機能解析を行ったところ、ROR1の発現抑制によって有意にカベオラの形成数が低下することを観察した。またカベオラ形成に重要であるCAV1とCAVIN1の結合にはスキャフォールドタンパク質としてのROR1が必要であることが明らかとなり、ROR1発現の抑制下においては、CAVIN1は細胞質に遊離するとともに、CAV1はライソソームによって分解されることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究によって、肺腺癌細胞株においてROR1の発現抑制はCAV1の発現低下を引き起こすこと、また様々なRTKの活性化を減弱させることが分かっていた。今年度の成果によって、新たにROR1はカベオラ構成分子であるCAV1やCAVIN1と直接結合し、CAV1の発現の安定化に関与していることが分かり、肺腺癌細胞株におけるROR1との相互作用の重要性が明らかとなった。また実際にROR1の発現抑制は細胞膜におけるカベオラ形成を阻害し、有意にその形成数を低下させることが分かり、生化学的な解析によるCAV1の発現低下と一致した。さらに、カベオラ形成におけるCAV1の発現安定化にはCAVIN1とCAV1の結合が重要であることが分かっていたが、本研究の成果からROR1がスキャフォールドタンパク質として両者の相互作用を安定化させ、CAV1がライソソームによって分解されないように防ぐ働きを有していることも判明した。 これらの結果から、肺腺癌細胞株においてROR1はカベオラに局在し、CAVIN1のリクルートに寄与し、CAVIN1やCAV1と結合することで、両者の相互作用を促進し、カベオラ形成の維持に寄与していると考えられた。それによりカベオラ形成が安定化されることで、そこに集積するEGFRやMET、IGF-IRなどの様々な受容体型チロシンキナーゼの活性化やそこから伝わる生存シグナルが維持されることで、肺腺癌の生存に関与している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から、ROR1がキナーゼ活性非依存的に、カベオラ構成分子であるCAV1やcavin-1と相互作用するスキャフォールド蛋白質として機能することで、カベオラ形成の安定化を促して、カベオラに集積するEGFRやMET、IGF-IRなど様々なRTKの活性化を維持し、肺腺癌細胞の生存シグナルを担っている可能性が明らかになってきた。しかしながら、ROR1はカベオラ形成以外にもカベオラの生理機能を担っている可能性も考えられ、エンドサイトーシスによって生じるエンドソームにおいて生存シグナルを制御していることも考えられる。そこで平成29年度は当初の研究実施計画の通り、ROR1によるカベオラ依存的なエンドサイトーシスの分子機序の解明を進めるとともに、シグナリングエンドソームにおける生存シグナル制御機構を明らかにする予定である。 また、肺腺癌細胞株におけるカベオラ形成を標的としたEGFR-TKIの耐性の克服という観点から、平成30年度はMETやIGF-IRのリガンドであるHGFやIGF-I処理に伴うEGFR-TKI耐性条件下の細胞株を用いて、ROR1の発現抑制に加えて、CAV1やCAVIN1の抑制による、増殖への影響やアポトーシス誘導、生存シグナルについて検討を行う予定である。また、肺腺癌細胞株だけに囚われず、ROR1陽性の様々な他の癌細胞におけるバイパス経路を介した耐性機構でのカベオラ生理機能の抑制の効果を検討し、癌細胞でのROR1を介したカベオラ制御機能の重要性と、カベオラ機能の抑制の臨床的な有効性を明らかにしていく。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] ROR1 functions as a scaffold of cavin-1 and CAV1, sustaining caveolae and RTK-mediated survival signaling in lung cancer2016
Author(s)
Tomoya Yamaguchi, Can Lu, Lisa Ida, Kiyoshi Yanagisawa, Jiro Usukura, Yukako Shimada, Hisanori Isomura, Motoshi Suzuki, Toyoshi Fujimoto, Takashi Takahashi
Organizer
第41回内藤コンファレンス
Place of Presentation
シャトレーゼガトーキングダム札幌、日本
Year and Date
2016-07-05 – 2016-07-08
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[Presentation] ROR1 functions as a scaffold of cavin-1 and CAV1, sustaining caveolae and RTK-mediated survival signaling in lung cancer2016
Author(s)
Yamaguchi T, Lu C, Ida L, Yanagisawa K, Usukura J, Cheng J, Hotta N, Shimada Y, Isomura H, Suzuki M, Fujimoto T and Takahashi T
Organizer
AACR ANNUAL MEETING 2016
Place of Presentation
New Orleans, LA, USA
Year and Date
2016-04-16 – 2016-04-20
Int'l Joint Research
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