2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K09584
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
仁木 満美子 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (20438229)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 仁彦 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 室長 (20569694)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 結核 / ワクチン / 液性免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
血中抗体価の測定に用いる結核菌特異タンパク抗原として、過去の研究により高い免疫誘導能を有することが報告されている結核菌抗原ESAT-6, CFP10, MDP1, Ag85A, Acr, HBHA, HrpA, Tuf, PPE68, mpt63, Rv2009, Apaについて、pET22b(+) によるヒスチジンタグ付与組換えタンパクの発現および精製を行った。また、結核菌脂質抗原として、結核菌H37Rv株死菌体よりtrehalose 6,6’-dimycolate (TDM) を抽出、精製した。こうして得られた結核菌抗原のうち、組換えタンパク抗原7種類について、ELISA法による血中抗体価の測定を行った。対象は、活動性結核患者のうち、治療前と治療後の血清が確保された33名とした。その結果、抗原特異的IgGは治療前と比較して治療後に減少する傾向があり、HBHAおよびHrpAに対するIgG抗体価は治療前の塗抹検査での検出菌数と正の相関を示すことがわかった。以上のことから、血中IgG抗体価は宿主内での結核菌の菌量を反映していることが示唆された。一方、血中IgAは治療前後で有意な差が認められず、塗抹検査による検出菌数との相関も認められなかった。結核の重篤度を示すマーカーとIgA抗体価の比較を行ったところ、治療前におけるHrpAに対する抗体価は、治療前の血中CRP値と負の相関を示すことが明らかになった。加えて、IgAの抗原への結合能を調べた結果、ESAT-6, MDP1, Acrに対するIgAの結合能が治療後に高値を示した群では、治療による血中CRPの減少率が高いことがわかった。以上のことから、感染初期におけるIgA産生および結合能の上昇は炎症抑制的に働くことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ELISA法による血中結核菌抗原特異抗体の解析に必要な抗原については、免疫誘導能の高い抗原として過去の論文で報告のあるもののうち12抗原の組換えタンパクの発現および精製が完了している。脂質抗原についてはTDMの精製が一部完了している。H28年度の計画としてはこれらの結核菌特異抗原の精製のみであったが、研究の目的が液性免疫誘導能の高い抗原の探索であることから、精製が完了し、予備実験を含むELISA法を実施するのに十分な量が得られた抗原について、活動性結核患者における血中抗体価の測定を順次行う方向で計画を修正した。精製した組換えタンパクのうち7抗原について活動性結核患者33名分の血中IgGおよびIgAの抗体価を測定し、加えて抗体の抗原への結合能の強さを測定した。計画に変更はあるが、進捗はおおむね順調であるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に続き結核菌抗原の精製を行い、また既に精製の完了した抗原についてはその血中抗体価の測定を行う。まず、東京病院にて治療前に採取した活動性結核患者群の血清を対象として血中IgGおよびIgAの測定を行い、健常者群と比較して高値を示した抗原について絞り込みを行う。次に、これらのうち初診時のCRP値やレントゲン空洞形成率などの結核重篤度を示すマーカーの値とIgA抗体価が負の相関を示す抗原を探索する。さらに、複十字病院にて治療前から治療完了以降にかけて経時的に採取した血清をサンプルとして、血中抗体価の動向と結核の病態の推移に相関のある抗原を探索する。
|
Causes of Carryover |
当初、初年度は組換えタンパク抗原および脂質抗原の精製のみを行う予定であったが、計画を変更し精製の完了した抗原から順次ELISA法による血中抗体価の測定を行ったため、抗原の発現および精製に必要な消耗品の購入を次年度に充てる予定である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
組換えタンパク抗原の発現と精製に必要な試薬およびプラスチック器具などの購入に用いる。また、ELISA法に必要な試薬およびプラスチック器具の購入を行う。データが蓄積次第、解析に必要なパソコンおよびソフトの購入を検討する。
|