2017 Fiscal Year Research-status Report
肺血管内皮細胞の内皮間葉系転換におけるエクソソームの役割
Project/Area Number |
16K09588
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長岡 鉄太郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70407295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守尾 嘉晃 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (30365663)
高橋 史行 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70327823)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エクソソーム / 血管内皮間葉転換 / 肺動脈性肺高血圧症 / microRNA / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の主病態は、肺動脈の内皮細胞障害に伴う異常収縮と、引き続いて生じる血管リモデリングである。血管平滑筋を中心とする肺動脈中膜の肥厚に続いて、血管内膜の増殖性閉塞性病変が形成される。これらの血管リモデリングを標的とした治療薬の開発が待望されるが、そのためにはPAHにおける血管リモデリング、特に疾患特異的な末梢肺動脈の増殖性内膜病変進展のメカニズムの解明が不可欠である。血管内膜病変の進展機構には不明な点も多いが、近年になり血管内皮間葉転換(EndMT)の関与が示唆されている。 エクソソーム(Exo)は、小胞内にmicroRNA(miR)や各種タンパクを含み、様々な細胞内で形成され細胞外に分泌される。小胞内のmiRは血液中や安定した状態で保たれ、生体内の細胞間情報伝達に重要な役割を果たす。常に血液と接触のある血管内皮細胞は、Exoを介した様々な情報伝達の場になっていると予想されることから、PAHの増殖性内膜病変進展のメカニズムにExoが関与している可能性も考えられる。 以上の背景から、我々は、PAHの肺動脈リモデリングの進展、特に増殖性内膜病変の形成にExoが関与していると仮説をたて、現在ヒト肺動脈の血管内皮細胞(HPMVEC)と血管平滑筋細胞(HPASMC)を用いて、EndMTや細胞増殖におけるExoの関与について検証を行っている。現在は、TGFβ・TNFα・IL1βを用いてEndMTを誘導したHPMVECや、PDGF-BBによって増殖誘導したHPASMCの培養液から検出したExoを、ぞれぞれの正常コントロール細胞の培養液に加えて、EndMTや細胞増殖の誘導の有無を確認している。今後、さらに細胞間の相互作用におけるExoの関与についても検証を進める予定である。併せて、マイクロアレイを用いてEndMTや細胞増殖に関わるExo内miRの同定も試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
我々は、TGFβ・TNFα・IL1βを用いて、HPMVECに安定してEndMTを誘導する実験系を確立している。刺激後に形態変化したHPMVECでは、von Willebrand factorやCD31などの血管内皮マーカーが減少し、FibronectinやCollagen-1などの間葉系マーカーが増加していた。この系を用いて、EndMT誘導HPMVECの培養液から回収したExoをコントロールHPMVECの培養液に加えて、EndMTの誘導を検証している。また、PDGF-BBを用いてHPASMCの細胞増殖を誘導する実験も既に行っている。増殖効果はCCK-8キットを用いて評価した。HPMVECと同様に、刺激により増殖したHPASMCの培養液から分離したExoをコントロールHPASMCの培養液に加えて、細胞増殖の誘導を検証している。さらに、Exoを介した異種細胞間の情報伝達を検証するため、EndMTを誘導したHPMVECの培養液から分離したExoを、コントロールHPASMCの培養液に加え、同様に、増殖誘導されたHPASMCの培養液から分離したExoをコントロールHPMVECの培養液に加えて、それぞれの細胞の形態変化の検証も行っている。 上記の実験結果であるが、現時点では病的細胞から得られたExoによる正常細胞への形態転換・細胞増殖の誘導については安定した結果が得られていない。Exoを安定して回収するための細胞培養条件が定まらず、また病的変化の誘導に必要なExoの量も確定できていない点が一番の問題点と考えている。さらには、細胞の種類によっても病的変化の誘導に必要なExo量が異なると考えられ、これらの条件設定を決定する作業に予定以上の時間を要している。しかし、繰り返しの実験において、様々な条件の設定は確立しつつあり、今後は実験の遅れを取り戻すことは可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当施設内でも計画した実験の遂行は可能であるが、さらに迅速かつ効率的に実験を進めるために、本研究関連の実験に精通した国立がん研究センター研究所・分子細胞治療研究分野に共同研究をお願いした。今後は、同研究グループの指導を受けながら、引き続き実験を継続する予定である。さらに、実験を行う人員についても、可能な範囲内で増員をすることを検討している。
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Causes of Carryover |
予定以上の物品購入目的の費用が必要となったため、各費用の予定収支を調整した結果、最終的に現在の使用額となった。
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