2016 Fiscal Year Research-status Report
EGFR-TKI耐性肺癌における特異的シグナルの同定と克服
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16K09594
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
瀧川 奈義夫 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60325107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 弘路 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50624897)
越智 宣昭 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80611615)
本多 宣裕 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80746876)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | EGFR / JAK2 / APOBEC / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
EGFR-TKI感受性細胞株PC-9から樹立したJAK2活性化を介した新たなEGFR-TKI耐性機序を有する細胞株(PC-9/ER3)におけるJAK2/FLT3阻害剤であるpacritinibを用いて、その耐性克服を試みた。PC-9/ER3においてerlotinibとpacritinibの単剤と比較し、2剤の併用により有意な増殖抑制効果を認めた。ウエスタンブロット法により、併用ではpAKTとpERKは抑制されたが、pJAK2(Tyr1007/1008)、pSTAT3、およびpFLT3は抑制されなかった。リン酸化キナーゼアレイにより、pacritinibによるMETの抑制が示唆され、erlotinibとMET特異的阻害剤の併用で相乗効果が確認された。また、異種移植片マウスモデルにおいても併用療法は腫瘍増殖を有意に抑制し、pMETの抑制も確認された。JAK2阻害剤の併用が、一部のEGFR-TKI耐性肺癌に対して有効である可能性が示唆され、その機序としてpacritinibによるMETの抑制が関与していると考えられた。 発癌の内的要因として知られてきた遺伝子修復酵素のAPOBECに関しては、PC-9と3種類のEGFR-TKI耐性株(PC-9/ER3、PC-9/GR、RPC-9)のAPOBEC3BのmRNA発現をRT-PCRで検討した。いずれの耐性株も親株に比べ発現が増強していた。テトラサイクリンのスイッチモデルによるEGFR野生型と変異型に、EGFRのオン・オフをウエスタンブロットで、EGFRが細胞膜に高発現していることを蛍光顕微鏡で確認した。プロテオーム解析では、親株とクリゾチニブ耐性株を2次元ゲル電気泳動を行ったとところ、約2000スポットの発現量の差が認められた。そのうちピークが明らかに異なるもの3つを切り出し、MALDI-TOF型質量分析システムにより解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
元来EGFRの発現のないHEK293TにEGFR遺伝子変異導入によるEGFRの高発現はバルクの細胞株では確認できた。しかしながら、EGFR-TKI感受性株が野生型の約2倍と予想していたより乏しかった。その原因を蛍光顕微鏡において検索したところ、EGFR発現のある細胞株とない細胞株が混在していることがわかり、再度クローニングを行っている。したがって、EGFR-TKI耐性株に対する3次変異(C797S)の導入やEGFR-TKIの耐性株のプロテオーム解析には至ってはいない。そこでEGFRと同じfamilyであるHER3が耐性機序のひとつであるALK-TKI耐性株においてプロテオーム解析を行っており、こちらは順調に進んでいる。in vitroで樹立されたEGFR-TKI耐性株において、APOBEC3B発現量と耐性度の相関は認められているので、他の細胞株でも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト胎児由来腎臓上皮細胞株であるHEK-293TのEGFR遺伝子変異導入株のクローニングが最大課題である。私たちのデーターも含め、これまでTKIの耐性機序はEGFRでもALKでも同様の耐性機序が報告されている。ALK-TKI耐性株におけるプロテオーム解析で新知見が得られつつあるので、こちらの耐性株で予想される耐性機序をin vitroで樹立されたEGFR-TKI耐性肺癌細胞株でも検討していく。他の研究計画は予定どおり進めている。
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Causes of Carryover |
プロテオーム解析が費用を要すると考えていた。HEK-293TのEGFR遺伝子変異導入株のクローニング中であり、それを使用したプロテオーム解析がまだ実施できていないために使用額が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度に、細胞株のクローニング後プロテオーム解析を行うこととしている。
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