2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K09603
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土井 研人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80505892)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 急性腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性腎障害(AKI)回復後の腎障害の進展、すなわち慢性腎臓病(CKD)あるいは末期腎不全(ESRD)に移行するメカニズムを明らかにする基礎研究が盛んであるが、高齢者にCKDや心血管病変を合併した場合、AKI回復後も腎障害の加速的な悪化を生じることが圧倒的に多い。このような臨床的背景があるにも関わらず、動物モデルを用いた基礎研究においては依然として比較的若年の健康な動物を用いた検討がなされている。本研究では実際の臨床におけるAKI回復後のCKD進展をCKDあるいは心不全動物モデルで再現することを第1の目的とし、次にどのようなメカニズムでAKI回復後のCKD進展が制御されているのかを明らかにすることを目的とする。特にエリスロポエチン(Epo)産生能に注目した腎予備能の新たな測定を試みた。腎性貧血の主たる病態である腎におけるEpo産生低下は、貧血刺激に対する相対的反応性低下として観察されるが、貧血を誘導することでEpo産生がどの程度まで亢進するかを定量化することで、腎間質におけるEpo産生細胞の障害度を測定することを試みた。phenylhydrazine hydrochloride (PHZ)による溶血性貧血を惹起し、その前後でのHt, 腎Epo mRNA発現、血中Epo濃度の変化を測定する系を確立した。具体的にはPHZが用量依存性に貧血を惹起すること、またHb濃度の最低値が48-72時間後に生じることを確認し、次いで虚血再灌流後腎と健常腎において同程度の貧血であっても腎Epo mRNA産生に有意な差があることを確認した。 動物モデルとして採用する大動脈縮窄(Transverse Aortic. Constriction:TAC)圧負荷心不全モデルの作成は手技の習熟が必要であったが、再現性をもって同程度の心肥大およびその後の心不全進展がマウスモデルで作成することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに確立されている慢性腎臓病(CKD)の評価方法に加えて、腎Epo産生能という異なる角度から腎臓機能低下を評価する系が確立できたため。また、大動脈縮窄(Transverse Aortic. Constriction:TAC)圧負荷モデルが安定して作成できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の組み合わせでTwo-hitモデルの作成を行い、あらかじめ障害を導入していた群においてAKI回復後のCKD進展が有意に悪化する組み合わせを見出し、実際の臨床で観察されるAKI回復後のCKD進展モデルとして最適なものを決定するとともに、そのモデルを用いて病態メカニズムの解明とその知見に基づく治療的介入を試みる。
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Causes of Carryover |
東京大学医学部附属病院においては、動物飼育施設を含めて研究施設の移転があり、一時的に実験を中断せざるを得なかったため、予定した実験が完遂できず次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度より動物飼育、実験に使用する設備が整備できたので、前年度に遂行できなかった実験が再開できる見込みである。
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