2016 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージの代謝リプログラミングを標的とした腎疾患新規治療の開発
Project/Area Number |
16K09605
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川上 貴久 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10722093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲城 玲子 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (50232509)
南学 正臣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90311620)
田中 哲洋 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90508079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 代謝リプログラミング / 尿細管間質傷害 / 2-デオキシグルコース |
Outline of Annual Research Achievements |
解糖系阻害による代謝リプログラミングが腎の尿細管間質傷害・炎症に与える影響を探究するため,マウス両側虚血再灌流傷害モデルを作成し,2デオキシグルコース(2DG)投与群についてvehicle投与群をコントロールとして解析した.本モデルで最も重要な評価項目である腎機能障害が2DG群で抑制され,組織学的にも尿細管傷害が軽減することが示された.またqRT-PRによる遺伝子発現解析では,尿細管傷害を示すKim1の増加が2DG群で抑制されていた. しかし2DGがマクロファージの代謝リプログラミングを介して作用するという予想に反して,マクロファージ,好中球といった炎症細胞数に有意な差を認めず,qRT-PCRでもTNF-α, IL-1などの炎症性サイトカイン・ケモカインについても差を認めなかった.そこで,2DGが影響を及ぼすのは,当初想定されてマクロファージではなく,最も著明な傷害を受ける尿細管細胞そのものである可能性を考え,同細胞の代謝リプログラミングに着目した. in vivo,in vitroの両者で解析を行い,尿細管細胞の定常状態におけるATP産生で中心的な役割と果たす脂肪酸のβ酸化経路や,解糖系遮断時に迂回経路となるペントースリン酸経路に関与する分子の発現が2DGで変化しており,それに伴い,ATPなどのエネルギー状態や酸化還元状態にも影響を与えていることが判明し,これらを介して2DGが腎傷害を抑制すると考えられた. またMint3ノックアウトマウスの交配も進み,それを用いた腎疾患モデルを作成し,予備的なデータが得られて来ている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2-デオキシグルコース(2DG)投与により尿細管間質傷害が軽減されることを示すことができたが,その機序は2DGがマクロファージで代謝リプログラミングを起こすという当初の仮説とは異なり,尿細管細胞の代謝リプログラミングであると考えられる所見が得られた.元の仮説とは異なるものの,腎尿細管間質傷害について新たな興味深い知見が得られている.またMint3ノックアウトマウスの実験が予定より早く進んでいる.これらを総合して,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
2-デオキシグルコース(2DG)による代謝リプログラミングについては,2DGが尿細管細胞に及ぼす代謝状態の変化について精査するとともに,それが細胞傷害・細胞死に及ぼす影響の解析を進めていく.Mint3ノックアウトマウスについては,それを用いて種々の腎疾患モデルを作成し,アウトカムに差が出るモデルを探索する.
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