2016 Fiscal Year Research-status Report
ExosomesとマイクロRNAを用いた、安全性の高いオーダーメイド治療の開発
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16K09610
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 規利 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90716052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362253)
小杉 智規 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90584681)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療・福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症による死亡率は極めて高く、世界中で2-3秒に1人が亡くなっていると言われている。敗血症は、関連する臓器障害によって予後が規定されると言われており、我々は敗血症性の急性腎障害(AKI)に着目した。現在に至るまで、敗血症性AKIに対しての治療としては補液や血液透析など、支持的治療法しか選択の余地がなく、著しい生存率の改善は見られていない。今回我々は、敗血症性AKIに対し、Toll like receptor(TLR)シグナルの制御を中心に添えた、全く新しいアプローチで治療する試みに取り組んでいる。 実施計画として、まずはin vitroの系において、TLRの下流シグナルを抑制するmicroRNA (miRNA)を選定することからはじめる。単核球系の細胞株を用い、LPS刺激を行い、候補となるmiRNAを投与した際の上清へのIL-6, TNF-αなどNFkBの下流蛋白分泌量を測定し、最も分泌を抑制し得たmiRNAを選び出す。その後有効なプロモータを用いた、miRNA発現ベクターを作成する。次に適切なドラッグデリバリーシステムを用いて、そのmiRNA発現ベクターをマウスに投与し、実験的敗血症を盲腸結紮穿孔モデル(CLPモデル)にて作成する。 動物実験の評価として、死亡率とともに、各種臓器障害を病理組織学的な解析、生化学的マーカー、炎症性サイトカイン血中濃度を測定し、治療効果を検討する。最後に、miRNAがどこで、どんな細胞に対して効果を及ぼし、結果に寄与したかを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
TLRシグナル下流のエフェクター分子に対して抑制効果を持つとされるmiRNA候補を、in silicoにて選定。リポフェクション法にてそのmature miRNAを、予めLPS刺激したRAW cellへ投与。上清へのIL-6, TNF-αの発現量をELISA法にて測定した。その結果、miR-Xが最も効果的であると判断。以降EF-1プロモータを利用したmiR-X発現ベクターを、in vitroにてRAW cellに遺伝子導入し、miR-Xの過剰発現を確認した。 次に動物実験として、PEIをドラッグデリバリーシステムとして、マウスへmiR-X発現ベクターを投与。1週間後に確認した所、脾臓、肺、肝臓に多く発現ベクターが取り込まれていることがわかった。その後CLPモデルを作成し、敗血症を惹起した。miR-X発現ベクターを投与した群は、Empty ベクターを投与した群と比較し、有意差を持って生存率が改善していた。また、臓器障害の指標として、AST, ALT, BUN, Crが低値であり、腎臓への単核球浸潤、接着分子E-selectinの発現、及び腎障害のマーカーとして知られるKIM1の局所発現が抑制されていた。通常敗血症においては、脾臓においてアポトーシスが誘導されることが知られているが、miR-Xベクター治療群は、そのアポトーシスが抑制されていた。またさらに血中の炎症性サイトカインも抑制されていることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、投与したmiR-X発現ベクターが、どこに取り込まれ、どのような機序を介して敗血症及び敗血症性AKIを抑制したかについて解析を進めている。免疫染色にてベクターに随伴したGFPは主に肺、肝臓、脾臓に取り込まれていた。その他心臓、腎臓ではGFPを検出することはできなかった。それとは別にmiR-X自体の発現は、GFPが多く検出された肺、肝臓、脾臓でも臓器全体としては、コントロールと比べても発現の増強は認められなかった。但し、脾臓においてCD11bの表面抗原により細胞をソートした場合、miR-Xの発現がコントロールと比較して著しく増強していることがわかった。つまりPEIとともに投与されたmiR-Xは、主にCD11b陽性の炎症細胞(マクロファージなど)に取り込まれ、NFkBシグナルを抑制され、サイトカインの分泌抑制、炎症細胞の遊走抑制につながっていると考えられた。 現在の問題としては、予め治療的なマイクロRNAを投与していること、細胞内に永続的に組み込まれるベクターを、生体に投与していることから、臨床的には病前に治療を開始することや、遺伝子導入が困難なことから、応用が難しい状況である。miR-Xがin vitroに於いてもin vivoに於いても敗血症性AKIに効果を認めたことから、matureなmiR-Xを適切なタイミングで投与して、治療効果を認めるかを検証していく。また現在はPEIをドラッグデリバリーシステムとして利用しているが、その他のシステムに関しても検証を加える予定である。
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Research Products
(2 results)