2017 Fiscal Year Research-status Report
ExosomesとマイクロRNAを用いた、安全性の高いオーダーメイド治療の開発
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16K09610
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 規利 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90716052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362253)
小杉 智規 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90584681)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 敗血症 / microRNA / AKI |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、以前よりmicroRNA (miRNA)についての研究を進めてきた。miRNAは20塩基程度のsmall RNAに分類されるが、エピジェネティクスの代表であり、遺伝子発現のファインチューナーとして、mRNAの発現を調整している。過去に乳がん細胞由来のExosomesは、Exosomes内にmiRNAの成熟に必要なDicer, TRBPといった機構を内包しており、細胞なしでもmiRNAを生成できる事を報告した。これはmiRNAが細胞非依存的にExosomes内で生成される事を意味し、ExosomesがmiRNAの運び手としてさらに注目されるに至った。 miRNA研究は病態解明、バイオマーカー、治療と、大きく3つの分野に別れるが、バイオマーカーとしても大きな注目を集めている。腎メサンギウム細胞由来のExosomesは、細胞表面上にメサンギウム細胞のマーカータンパクを保持しており、そのマーカーを利用して、腎臓由来Exosomesを選択的に回収し、RNAを抽出。そこに含まれるmiRNAを測定することで、腎疾患診断の精度を高める技術に関して、特許を取得し、現在解析を進めている。(P2017-67706A) また治療物質としてのmiRNAは、siRNAといった人工的な核酸と異なり、本来生体内にそなわったRNA干渉機構として、安全性などを含め、次世代の核酸医薬として、期待されている。 今回我々は、極めて致死率の高い敗血症に対して、TLRを負に抑制すると言われるmiR-Xに注目をし、従来治療法が確立していない敗血症性AKIに対し、核酸医薬を用いた全く新しいアプローチで、新規治療法の開拓に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TLRシグナル下流のエフェクター分子に対して抑制効果を持つとされるmiRNA候補を、in silicoにて選定。リポフェクション法にてそのmiRNAを、予めLPS刺激したRAW cellへ投与。上清へのIL-6, TNF-αの発現量をELISA法にて測定した。その結果、miR-Xが最も効果的であると判断。以降EF-1プロモータを利用したmiR-X発現ベクターを、in vitroにてRAW cellに遺伝子導入し、miR-Xの過剰発現を確認した。 次に動物実験として、PEIをドラッグデリバリーシステムとして、マウスへmiR-X発現ベクターを投与。1週間後に、in vivo imaging, ベクターに組み込まれたGFPの発現の評価から、脾臓に多く発現ベクターが取り込まれていることがわかった。免疫染色、及び表面マーカーによるソーティングにより、取り込まれた細胞は脾臓マクロファージであることが示唆された。その後CLPモデルを作成し、敗血症を惹起した。miR-X発現ベクターを投与した群は、Empty ベクターを投与した群と比較し、生存率が改善していた。また、臓器障害の指標として、AST, ALT, BUN, Crが低値であり、血中のIL-6, TNF-α, MCP-1といったサイトカインも抑制されていた。腎臓への単核球浸潤、接着分子E-selectinの発現が抑制されていた。更に検討を重ね、PEIによるベクターのデリバリーサイトである脾臓を予め摘出したマウスに、PEI/ベクターを投与、その後CLPモデルを作成した所、ベクターによる生存率の改善効果、臓器障害のマーカー、血中サイトカイン血症に有意差が消失し、コントロール群と同等な障害となった。よって、脾臓こそが本治療法のターゲットとなる臓器であり、脾臓における過剰な免疫応答をコントロールすることで、生存率が改善したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、投与したmiR-X発現ベクターが、どこに取り込まれ、どのような機序を介して敗血症及び敗血症性AKIを抑制したかについて解析を進めている。免疫染色にてベクターに随伴したGFPは主に肺、肝臓、脾臓に取り込まれていた。その他心臓、腎臓ではGFPを検出することはできなかった。それとは別にmiR-X自体の発現は、GFPが多く検出された肺、肝臓、脾臓でも臓器全体としては、コントロールと比べても発現の増強は認められなかった。但し、脾臓においてCD11bの表面抗原により細胞をソートした場合、miR-Xの発現がコントロールと比較して著しく増強していることがわかった。つまりPEIとともに投与されたmiR-Xは、主にCD11b陽性の炎症細胞(マクロファージなど)に取り込まれ、NFkBシグナルを抑制され、サイトカインの分泌抑制、炎症細胞の遊走抑制につながっていると考えられた。 現在の問題としては、予め治療的なマイクロRNAを投与していること、細胞内に永続的に組み込まれるベクターを、生体に投与していることから、臨床的には病前に治療を開始することや、遺伝子導入が困難なことから、応用が難しい状況である。miR-Xがin vitroに於いても敗血症性AKIに効果を認めたことから、matureなmiR-Xを適切なタイミングで投与して、治療効果を認めるかを検証していく。また現在はPEIをドラッグデリバリーシステムとして利用しているが、その他のシステムに関しても検証を加える予定である。
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Research Products
(3 results)