2016 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎不全における時計遺伝子DEC1の発現異常が日内リズムに及ぼす影響
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16K09624
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 冬樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60400131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向阪 彰 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (00458051)
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40190904)
藤本 勝巳 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (40294566)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腎臓 / 時計遺伝子 / 慢性腎臓病 / 日内リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究目的は、慢性腎不全における時計遺伝子DEC1の発現異常の関連性について検討することである。慢性腎不全では、高リン状態になっていることが多いことから、高リンとDEC1発現の異常について、培養細胞とヒト剖検標本を用いて検討した。 腎尿細管上皮細胞におけるDEC1発現の意義に関する研究について。 尿細管上皮細胞HK-2に、2 mMのリン処理を行い、mRNAとタンパク質を回収し、Real-time PCRとWestern blotにて解析した結果、ともにDEC1発現の減少が見られた。この結果から、高濃度リンは、時計遺伝子の発現に影響することが示唆された。一方で、alpha-SMA発現は上昇した。さらに、高濃度リン処理が96時間以上になると、細胞死を誘発し、DEC1発現が減少した。この結果から、リンによる細胞死とDEC1発現が関係している可能性が示唆された。一方で、リン処理による細胞老化の誘導を細胞老化アッセイにて検討したが、有意な細胞老化は得られなかった。 慢性腎不全におけるDEC1発現解析について。 慢性腎不全と正常腎の剖検症例を20症例集め、免疫染色を行った。免疫組織化学的に、正常腎では、DEC1は尿細管上皮細胞に強く発現していた。一方で慢性腎不全症例では、DEC1発現は尿細管で顕著に減少した。また、他の時計遺伝子PER1も慢性腎不全症例で減少したことから、ヒトレベルにおいて、慢性腎疾患が時計遺伝子の発現を減弱させることが考えられた。さらなる検討として、パラフィン包埋からmRNAの抽出を行い、mRNA levelでの解析を予定していたが、免疫染色で組織量をかなり使用したため、mRNA levelでの解析は困難であった。よって、タンパク質levelでの解析を中心に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
和歌山県立医科大学の倫理委員会の承諾がすでに得られていたことと、剖検症例が思っていた以上に入手しやすかったため、スムーズに実験に着手できた。DEC1抗体による免疫染色は、これまでに何度も着手しており、腎臓における染色の結果も良好であった。
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Strategy for Future Research Activity |
DEC1の標的因子として転写因子Snailを検討したが、2種類の抗体を用いて免疫染色を行ったが、うまく染色されず今後の検討は困難と判断した。申請者が平成27年に報告した、DEC1の標的因子としてpAMPKがあり、標的因子を切り替えることを判断した。pAMPKは、全身の至る組織や細胞で日内リズムを有し、免疫染色でも使用できる抗体が当教室にあるので、DEC1とpAMPKとを関連させた慢性腎不全における日内リズムの解析を進行させていく。 慢性腎不全モデルマウスとして、6-8週齢のコントロールマウスの5/6腎摘出を行う予定であり、5/6腎摘出と高リン食で、マウスの行動解析をSuperMexにて1ヶ月間行い、日内リズムを解析する。また、5/6腎摘出と高リン食で、タイムコースで臓器のサンプリングを行い、時計遺伝子の発現パターンをreal-time PCRとWestern blotにて解析する。
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Causes of Carryover |
注文した試薬が海外からの輸入品で、納入が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今月中に試薬が到着するので、使用する予定である。
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