2017 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重個体における腎症発症機序へのミトコンドリアの関与を解明する
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16K09638
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Research Institution | National Hospital Organization Chiba-East-Hospital |
Principal Investigator |
今澤 俊之 独立行政法人国立病院機構(千葉東病院臨床研究部), 腎センター, 腎センター長 (80348276)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 巣状分節性糸球体硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度、低出生体重のFSGS症例での解糖系酵素の発現の検討をするためPKM2による染色を行った。同時に、糖尿病性腎症症例においても本検討で用いたPKM2抗体を用い染色を行ったところ、糸球体内においては糸球体上皮細胞に特異的に発現し、糖尿病性腎症では発現が増強していることが示された。これらの結果は、欧文誌に発表した(Imasawa T et.al. FASEB J 2017: 31; 294-307,Acknowledgementsに本grant名明記)。平成29年度は、前年度に計画していた低出生体重個体ラットが既報(PLOS One 10;e0118586; 2015)の50%食事制限食では得られないことがわかり、本年度再度条件検討を行い45%制限食が効率的に低出生体重個体が得られることがわかり、現在、低出生体重個体の4週齢腎臓から抽出した蛋白および遺伝子の発現解析を行っている。さらに単離糸球体から培養した糸球体上皮細胞の解析も開始した。 低出生体重個体に置ける腎症発症にミトコンドリア異常が関与している可能性を臨床的に検証を進めるため、平成28年度~AMED村山班(ミトコンドリア病診療マニュアルの改定を見据えた、診療に直結させるミトコンドリア病・各臨床病型のエビデンス創出研究)との連携を開始し、本年度は皮膚線維芽細胞を用いたミトコンドリア酸素消費量の測定、およびOXPHOS酵素活性の測定を開始するとともに、新たな検査法として尿から培養した培養尿細管細胞による検査ができるよう、その方法論を確立した。 またミトコンドリア遺伝子解析結果は血液を用いても、尿中落下細胞を用いても、あるいは腎組織そのものを用いても、同じ解析結果が得られることがわかった。尿中落下細胞による遺伝子解析が有効であれば、ヘテロプラスミーの問題があるミトコンドリア病の診断には有効である可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、既報に従い(PLOS One 10;e0118586; 2015)、妊娠10日以降から離乳期まで食餌量を50%に制限し低出生体重個体作成を行ったが、低出生体重固体を充分量得られず成功に至らなかった。本年度、食餌量を75%、45%、30%にし条件検討を行い、45%において低出生体重個体を得られつつ、出産直後の死亡もすくなく、個体を維持できることがわかった。45%食事制限で得られた低出生体重個体の4週齢から腎の組織を採取し、蛋白発現解析、遺伝子発現解析を開始した。また4週齢腎臓から糸球体を単離し、糸球体上皮細胞初代培養から蛋白、遺伝子を抽出し、蛋白発現解析、遺伝子発現解析を開始した。「ヒト低出生体重関連腎症症例のミトコンドリア遺伝子解析」については昨年度からAMED村山班(ミトコンドリア病診療マニュアルの改定を見据えた、診療に直結させるミトコンドリア病・各臨床病型のエビデンス創出研究)との連携を開始した。mt関連遺伝子異常がある際に、皮膚から培養された繊維芽細胞の酸素消費速度の低下が認められるため、現在2例の症例につき皮膚生検から得られた培養線維芽細胞の酸素消費量およびOXPHOS酵素活性の測定を開始した(結果は未)。来年度は更に5例程度の追加を計画している。また腎臓におけるミトコンドリアの状態は皮膚線維芽細胞よりも腎臓細胞のほうが反映することが予想される。そこで尿中落下細胞から尿細管を培養し、その培養尿細管細胞にてミトコンドリア酸素消費量や酵素活性を測定した方が診断に有用であると考えられる。本年度、その方法論を確立し、約50%の確立で尿の落下細胞を用いて尿細管を培養できる系を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が着目していたPKM2の発現が糖尿病性腎症進展を左右する重要な蛋白であることが報告された(Nat Med 2017)。糖尿病性腎症のみならず、糸球体上皮細胞におけるエネルギー代謝異常(解糖系依存型)になるようなミトコンドリア機能異常が惹起されるような場合には同様にPKM2発現動態が変化することが予想され、新たに尿中のPKM2測定をすることを研究計画に加えた(倫理委員会承認済み)。 現在、皮膚線維芽細胞を用い、低出生体重関連腎症症例のミトコンドリア酵素活性、酸素消費量測定を行っているが、症例を追加するとともに、異常があった場合は、ミトコンドリア関連遺伝子の解析を行っていく。同様に尿中落下細胞からの培養細胞を用いた検討も同時に進めていく。尿中落下細胞を用いた遺伝子解析も有効である可能性も示されてきており、適応症例では尿中落下細胞を用いたミトコンドリア関連遺伝子解析も行っていきたい。 低出生体重ラットのサンプリングもほぼ終了しているが、より糸球体や上皮細胞に着目した検討が必要であると考えているため、平成30年度は低出生体重個体のラット(コントロールとして正常出生体重ラット)から単離した糸球体を用いた検討、あるいは単離した糸球体から糸球体上皮細胞を初代培養し、その解析を行うことで、より特異的な細胞レベルでの検討ができるように工夫を加えていく。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた、解析作業を次年度に繰り越したことによる、試験薬及び消耗品費の使用予定額の繰越が生じた。 翌年度に繰り越し分の解析作業を行う予定である。
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