2016 Fiscal Year Research-status Report
腎障害時における骨由来新規腎リン利尿因子であるFGF23代謝調節機構の研究
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16K09652
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
重松 隆 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (30187348)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大矢 昌樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90550301)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | FGF23 / 骨細胞 Osteocyte / Klotho / 慢性腎臓病 (CKD) / リン / 活性型Vitamin D |
Outline of Annual Research Achievements |
1)当初予定していた腎障害モデルの作成:以下の3群を作成する (1) Sham手術例 (2) 5/6腎摘モデル:CKDモデル (3) 両側腎摘ラット:末期腎不全尿毒症モデルは既に実験手法として確立した。 2)FGF23産生臓器として骨細胞の集合群獲得を目指したが、当初予定していた2法のうちの初代骨細胞単離法では、骨組織からの骨細胞収穫手技に複数の実験過程が存在し、その過程の差異によりFGF23産生能のばらつきが大きく一定の成果が得られず、実験方法としては棄却することとした。 3)一方、骨細胞様細胞培養法:石灰化能を有する骨芽細胞(Osteoblast)Cell Line細胞にて分化誘導を試み、長期培養することで得られた細胞群作成し、骨細胞マーカーを検討することにより、骨細胞様細胞群と考えて良い結果を得た。今後はこのモデルを中心に研究を進めることとした。 4)既に我々が報告している骨組織以外のFGF23産生臓器として可能性がある臓器として脾臓がある。この脾臓において、FGF23産生を確認するとともに、受容体であるKlotho蛋白の存在を確認することとした。その結果によっては、Klotho蛋白発現臓器である腎臓におけるリン利尿効果以外の、腎外性のFGF23シグナルによる新規の機能を検証することができる可能性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)腎障害モデルでは、慢性腎臓病(CKD)モデルと末期腎不全尿毒症に加えて、FGF23の受容体であるKlotho蛋白が強発現している急性腎障害(AKI)モデルも用いることにした。現在そのモデルを作成中である。
2)骨細胞様細胞培養法:石灰化能を有する骨芽細胞(Osteoblast)Cell Lineとして自石灰化能を有し、もっとも骨細胞様に近い細胞群としてMC3T3-E1 細胞を採用した。この細胞群にI型コラーゲン産生誘導物質である50μg/mlのアスコルビン酸と、石灰化誘導因子であるリン供給源として5mMβ-glycerophosphateを24時間添加し強制的に分化誘導させ、14日間長期培養を行った。こうして得られた細胞群では、骨細胞マーカーのSclerostin遺伝子SOX-1が安定して高発現しており、骨細胞様細胞群と考えて良い結果を得た。今後はこのモデルを中心に研究を進めることとする。
3)脾臓におけるFGF23の発現部位ならびに発現細胞の同定を行った。免疫組織染色とフローサイトメトリーを用いた解析結果で、脾臓におけるFGF23産生細胞はCD11c+CD45R/B220+CD11b- CD8α-の形質細胞様樹状細胞であることが判明した。同じくFGF23の受容体となる脾臓におけるKlotho発現細胞はCD45R/B220+CD21/CD35+CD1d+ CD43-の分化した辺縁帯B細胞であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)全体の進め方として、FGF23産生がきちんと確認できた骨組織と脾臓におけるFGF23産生調節機構を中心課題に据えて進める方針とした。 2)骨組織における研究としては、自己完結的に石灰化能を有するMC3T3-E1 細胞を用い、強制的に分化誘導させた骨細胞様細胞培養法を主として用いることとする。この骨細胞様細胞に、腎機能障害でもっとも顕著に細胞外液の変化が大きい因子を検討する予定である。具体的には腎臓が主たる調節臓器となっているリンと、同じく腎臓が主たる産生臓器となっている活性型Vitamin Dによる効果を検討する。骨細胞様細胞培養中の細胞培養液に、リン添加または活性型Vitamin D添加を行い骨細胞様細胞のFGF23産生能に及ぼす効果を検討する。 3)上記の骨細胞様細胞培養系に、慢性腎臓病(CKD)モデル・末期腎不全(ESRD)モデル・急性腎障害(AKI)モデルから採取した血清添加による骨細胞様細胞のFGF23産生能に及ぼす効果を検討する。 4)脾臓でのFGF23発現細胞とKlotho発現細胞の細胞間相互作用を検討するため、二重免疫染色により位置関係を解析する。FITC標識した抗Klotho抗体、Alexa Fluor 647標識した抗FGF23抗体を用いる予定である。その後は、来年度以降に脾臓におけるFGF23-Klotho Axisの果たす生理的または病的意義について検討を進めていきたい。 5)腎臓はFGF23の受容体ともなるKlotho蛋白の最大発現臓器である。このため、FGF23の作用がもっとも顕著に出る場所である。その最たるものはリン利尿であるが、それ以外の効果を示す可能性も十分考えられる。そこで本年度は、まずは腎尿細管培養系を確立する。その後、確立した腎尿細管培養系にFGF23添加による腎尿細管の遺伝子発現をMicro Array法を用いて網羅的な検索を考えている。
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Causes of Carryover |
直接経費は、全て研究関連の消耗品中心の物品費として使用した。旅費や謝金等には用いていない。また設備備品の購入には直接経費も間接経費も用いていない。 内定時期が2016年度の後半になったため、研究自体は概ね順調に推移しているが、消耗品費の購入に余裕ができたため、若干の金額が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
若干の金額が次年度使用額は、平成29年度においても全て研究関連の消耗品中心の物品費として使用を予定している。旅費や謝金等には用いる予定はなく、設備備品の購入には直接経費も間接経費も用いる予定はない。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Possible prevention of uremic nausea by vitamin D receptor activators in non-dialysis patients with stage 5 chronic kidney disease2017
Author(s)
Ikeda M, Ueda Y, Maruyama Y, Yokoyama K, Yokoo T, Joki N, Ando R, Shinoda T, Inaguma D, Yamaka T, Komatsu Y, Koiwa F, Sakaguchi T, Negi S, Shigematsu T
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Journal Title
Clin Exp Nephrol. 2016 Nov 14. [Epub ahead of print]
Volume: 21
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Preventive Strategies for Vascular Calcification in Patients with Chronic Kidney Disease.2017
Author(s)
Shigematsu T, Sonou T, Ohya M, Yokoyama K, Yoshida H, Yokoo T, Okuda K, Masumoto AR, Iwashita Y, Iseki K, Kunimoto S, Yamano Y.
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Journal Title
Contrib Nephrol.
Volume: 189
Pages: 169-177
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Expression and localization of Fibroblast Growth Factor (FGF) 23 and Klotho in the spleen: Its physiological and functional implications2016
Author(s)
Nakashima Y, Mima T, Yashiro M, Sonou T, Ohya M, Masumoto A, Yamanaka S, Koreeda D, Tatsuta K, Hanba Y, Moribata M, Negi S, Shigematsu T.
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Journal Title
Growth Factors
Volume: 34
Pages: 195-202
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant