2016 Fiscal Year Research-status Report
Ca2+流入異常を介した核-細胞質システム破綻による細胞死メカニズムの解析
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16K09666
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 雄也 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (20431843)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ADAR2 / 筋萎縮性側索硬化症 / カルパイン / AMPA受容体 / RNA編集 / 神経細胞死 / NPC / 核ー細胞死輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、AMPA受容体を介したCa2+透過性の亢進が孤発性ALSの病態に繋がること、その過程でCa2+依存性プロテアーゼカルパインの活性化やTDP-43の病理形成に関与することを孤発性ALSの分子病態モデルマウスである、RNA編集酵素adenosine deaminase acting on RNA 2 (ADAR2)のコンディショナルノックアウト(AR2)マウスの解析から明らかにした。孤発性ALSの分子病態モデルであるAR2マウスでは、AMPA受容体を介したCa2+透過性の亢進で、運動ニューロンに変性・脱落が起き、その過程でローターロッドやグリップ力(行動解析)を指標とした運動機能が低下する。AR2マウスの行動解析が低下する以前に、脊髄運動ニューロンの核に核内空胞を見出し、核の機能異常が細胞死に繋がる可能性を考えた。過剰なCa2+流入が核-細胞質輸送システムを破綻させることが示唆されるため、核-細胞質輸送システムのCa2+流入に対する効果を検討した。核-細胞質輸送システムの中心的な役割をする核膜孔複合体(NPC)・核-細胞質輸送関連蛋白質がADAR2欠損運動ニューロンで正常な分布をしないことを見出した。さらにNPCの構成蛋白であるヌクレオポリンや核の裏打ち蛋白であるラミンBがCa2+依存性システインプロテアーゼであるカルパインにより切断されることを発見した。さらにこれらの変化がリン酸化ポリメラーゼIIの発現を抑えたことより、細胞が生存するために必要な正常な遺伝子発現が抑制され細胞死に繋がる可能性が示唆された。今後はこれらの変化から細胞死に繋がるカスケードをさらに詳細に調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AR2マウスを用いて、Ca2+流入に伴い核-細胞質輸送システムが破綻すること、つまり、Ca2+依存性システインプロテアーゼであるカルパインにより核膜孔複合体、核-細胞質輸送関連蛋白質、ラミンBが切断されることを見出した。さらにこれらの変化がリン酸化ポリメラーゼIIの発現を抑えたことより細胞死に繋がるカスケードが動いたことが示唆された。 これまでの成果を雑誌論文に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
Ca2+流入に伴いカルパインが活性化され、核-細胞質輸送システムが破綻することを見出した。今後は、これらの変化がどのように関連して神経細胞死を引き起こすのか、それらのカスケードを更に検討し、孤発性ALSの病態解明と治療法の開発を行いたいと考える。
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Remarks |
東京大学大学院医学系研究科 郭 研究室 http://square.umin.ac.jp/teamkwak/
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