2018 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病原因遺伝子変異によるシナプス小胞動態異常と治療標的遺伝子探索
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16K09679
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
井下 強 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20601206)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / 神経科学 / 小胞輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病(PD)発症機序解明と的確な治療標的探索のため、小胞輸送に関わるPD関連遺伝子間のネットワーク構築と、それら遺伝子の機能欠失が示す共通の表現型同定を進めている。すでに、PD原因遺伝子LRRK2とVps35の協働によるシナプス小胞動態制御機構を解明しているが、当該年度は、LRRK2とAuxilin, INPP5Fの機能欠失を組み合わせることで、シナプス小胞動態制御に関わるsmall GTPase, Arl8の局在異常が生じることを明らかにした。Arl8は、シナプス形成やシナプス小胞前駆体の輸送に関わることが示唆されており、神経機能制御における重要な分子と考えられる。LRRK2の機能欠失は、シナプス終末でのArl8の蓄積を亢進しており、LRRK2の機能欠失が示す神経機能異常との関連が推察される。こうしたArl8の蓄積は、AuxilinやINPP5Fの機能欠失モデルでは見られないが、LRRK2の機能欠失とAuxilin, INP5Fいずれかの機能欠失を組み合わせることでLRRK2の機能欠失単独に比べ増加する。このことから、3個のPD遺伝子、LRRK2, Auxilin, INPP5Fが共通してArl8の動態制御を担っていることが示唆されることから、PD遺伝子によるArl8の動態制御機構解明は、PD発症機序解明と治療標的特定に貢献すると考えられる。これを補強するデータとして、PD発症に強く関連するα-シヌクレインが、Arl8蓄積シナプスにおいて共局在していることを明らかにしている。さらに、ヒト剖検脳においても、Arl8とα-シヌクレインの共局在が観察できることも、Arl8の動態がPD発症に関わることを示唆している。現在、これらの知見について論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画の第一目標としていたLRRK2とVps35の相関解明は既に終了し、論文として公表しており、最終年度に予定していたパーキンソン病(PD)遺伝子間のネットワーク構築においても、LRRK2を中心とした複数PD遺伝子間の遺伝的相関を明らかにしている。その過程で着目しているArl8は、近年、神経における機能が明らかになってきた分子であるが、その詳細は未解明であり、本課題を発展させることで、PD治療において、的確な治療標的候補の一つと考えられる。本研究課題を発展させることで、PD発症機序解明に貢献すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、パーキンソン病(PD)遺伝子間のネットワークにおいて、LRRK2が中核となるPD遺伝子と考えられる。さらに、Arl8動態制御にLRRK2を含む複数のPD遺伝子が関わること、Arl8とα-シヌクレインの動態に関連があることを明らかにしており、LRRK2によるArl8動態制御とα-シヌクレイン動態制御機構の解明を主軸に研究を発展させることが、PD発症機序解明と治療法探索に重要であると考えられる。具体的には、Arl8の蓄積が起きる分子メカニズムを解明し、そこに関わる分子の発現量・活性制御により、Arl8動態を改善させる条件を解明する。また、その条件下でのα-シヌクレイン動態の解明と神経機能に対する改善効果を解析し、PD治療への発展性の有無を明らかにする。また、PD遺伝子以外の小胞輸送制御分子から、Arl8動態制御に関わる分子を探索し、Arl8とα-シヌクレイン動態制御に関わる分子機構の全容解明を目指す。 モデル動物を用いた基礎研究とヒト剖検脳や患者由来のiPSの利用が可能な、所属機関の利便性を生かし、分子レベルから細胞、生体レベルでの解析を行い、PD発症機序解明と治療標的特定につなげることを目指す。
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Causes of Carryover |
現在、申請課題の結果を論文として執筆・投稿準備中であるため、英文校正、投稿費用として延長している。
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Research Products
(2 results)