2016 Fiscal Year Research-status Report
認知症疾患におけるRho-ROCKシグナルの機能解明
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16K09684
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
脇田 英明 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (80416172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 謙明 藤田保健衛生大学, 藤田記念七栗研究所, 講師 (30351068)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 認知症 / 血管性認知症 / アルツハイマー病 / Rho / ROCK |
Outline of Annual Research Achievements |
Rho-kinase (ROCK)は血管平滑筋の収縮弛緩、白血球の遊走、細胞接着などに関連する酵素で、脳虚血やアルツハイマー病を含む多くの神経疾患との関連が報告されている。本研究では、アルツハイマー病および血管性認知症モデル動物の解析によりRho-ROCKシグナルの認知症における役割の解明を行う。平成28年度は血管性認知症モデル動物脳およびアルツハイマー病モデル動物脳について免疫組織化学、ウエスタンブロットを用いてRhoB、ROCK1などのRho-ROCKシグナルの各構成分子の発現量の時間変化、発現部位を解析し、Rho-ROCKシグナルの発現の時間的・空間的プロファイリングを行なった。血管性認知症の実験モデル動物として、ラットの両側総頚動脈永久閉塞モデルをおよびマウスの片側総頚動脈の閉塞モデルを用いた。免疫組織化学、ウエスタンブロットを用いてRhoB、ROCK1などのRho-ROCKシグナルの各構成分子の発現量の時間変化、発現部位を解析した。ラットモデルの免疫組織化学の解析結果より、虚血導入後7日目より視索、内包、線条体、脳梁、海馬などでROCK1陽性血管が増加し、30日後まで増加は持続した。RhoBでは虚血導入後1日目より視索、内包、線条体、脳梁、海馬、大脳皮質などで陽性血管が増加し、30日後まで増加は持続した。視索、内包、線条体、脳梁、海馬は本モデルで組織障害を示す部位であり、Rho-ROCKシグナルが組織障害機序に関与している可能性が示された。 アルツハイマー病モデルは、Aβの脳内蓄積を示すアルツハイマー病モデルマウスのTg2576マウスを検討した。2歳齢のTg2576マウスの海馬でRhoB陽性血管、ROCK1陽性血管を認めた。海馬はAβの蓄積を示す部位であり、Aβの脳内蓄積にRho-ROCKシグナルが関与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アルツハイマー病および血管性認知症モデル動物の解析によりRho-ROCKシグナルの認知症における役割の解明を行う。平成28年度は血管性認知症モデル動物脳およびアルツハイマー病モデル動物脳について免疫組織化学、ウエスタンブロット、、RT-PCRを用いてRhoB、ROCK1などのRho-ROCKシグナルの各構成分子の発現量の時間変化、発現部位を解析し、Rho-ROCKシグナルの発現の時間的・空間的プロファイリングを行なう計画であった。RT-PCRは行わなかったが、免疫組織化学、ウエスタンブロットにより、血管性認知症モデル動物脳およびアルツハイマー病モデル動物脳についてRhoB、ROCK1の発現量の時間変化、発現部位を解析し、Rho-ROCKシグナルの発現の時間的・空間的プロファイリングが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、アルツハイマー病および血管性認知症モデル動物の解析によりRho-ROCKシグナルの認知症における役割の解明を行う。平成29年度では平成28年度で得られたRho-ROCKシグナルの時間的・空間的プロファイリングを進めるとともに、Rho-ROCKシグナルの下流のエフェクター分子のMLCやLIM-kinase等の時間的・空間的プロファイリングを明らかにする。アルツハイマー病モデルではアミロイド沈着部位とRho-ROCKシグナルの空間的関係を蛍光2重標識による顕微鏡観察を用いて評価し、Perivascular drainageにおけるRho-ROCKシグナルの役割を検討する。解明された結果から認知症疾患におけるRho-ROCKシグナルの主要メカニズムを絞り込む。平成30年度は平成28年度、平成29年度で得られた成果をもとに、メカニズムの全容解明に進む。Fasudil、Y27632などのROCK阻害剤をモデル動物に投与し、脳病変やアミロイド除去機能に対する影響を検討する。血管性認知症モデルではROCK制御による脳病変や記憶機能障害に対する影響について病理学的、行動学的評価を行い評価する。Fasudil、Y27632などの非選択的ROCK阻害剤で効果が認められない場合には、より選択性の高い各アイソフォーム特異的な阻害剤を投与し、有効性を詳細に検討する。研究の成果を総合的に取りまとめ、Rho-ROCKシグナルの血管性認知症、アルツハイマー病における役割の全容を解明する。
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Causes of Carryover |
免疫組織化学、ウエスタンブロットにより、血管性認知症モデル動物脳およびアルツハイマー病モデル動物脳についてRhoB、ROCK1の発現量の時間変化、発現部位を解析し、Rho-ROCKシグナルの発現の時間的・空間的プロファイリングが得られたため、RT-PCRは行わなかった。しかし、研究の結果により、ROCK2やRhoA, RhoCなど他のRho-ROCKシグナルについても検討する必要が生じたため、それを平成29年度に実施するため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では平成28年度で得られたRho-ROCKシグナルの時間的・空間的プロファイリングを進めるとともに、ROCK2やRhoA, RhoCなど他のRho-ROCKシグナルについてや、Rho-ROCKシグナルの下流のエフェクター分子のMLCやLIM-kinase等の時間的・空間的プロファイリングを明らかにする。アルツハイマー病モデルではアミロイド沈着部位とRho-ROCKシグナルの空間的関係を蛍光2重標識による顕微鏡観察を用いて評価し、Perivascular drainageにおけるRho-ROCKシグナルの役割を検討する。解明された結果から認知症疾患におけるRho-ROCKシグナルの主要メカニズムを絞り込む。
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Research Products
(2 results)