2017 Fiscal Year Research-status Report
異型トランスサイレチンでのシュワン細胞異常による神経変性機序の研究
Project/Area Number |
16K09686
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
村上 龍文 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (30330591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
砂田 芳秀 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00240713)
大澤 裕 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80246511)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 異型トランスサイレチン / シュワン細胞 / 神経変性 / 熱ショック因子1 / アポトーシス / アミロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
シュワン細胞内のTTR凝集の研究 FAPの疾患培養細胞モデルであるTgS1細胞を用いて、熱ショック因子1(Hsf1) siRNAで処理して、2日後に抗TTR抗体で蛍光免疫染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。そうするとTgS1細胞質にTTRが充満し腫大している細胞が観察された。これらは二重免疫染色染色ではゴルジ体には局在していなかった。また細胞末端がTTR凝集で腫大したり、細胞突起の中間部にも腫大が観察された。さらにTTRが充満している細胞片も観察された。このようにTgS1ではHsf1の低下でTTR凝集が著しく促進された。プロテオソーム阻害剤MG132処理でのTTR凝集よりその効果は著しかった。変異TTR(+)-Hsf1ノックアウトマウスでは末梢神経やDRGにTTRが沈着するので、その病態機序を細胞レベルで証明していることが示唆された。次に最近に当院で診断されたFAP TTRE61K患者の腓腹神経で、抗TTR抗体による免疫組織化学染色を施行した。TTRは一部のシュワン細胞内で陽性であった。さらに透過型電子顕微鏡で腓腹神経のシュワン細胞を観察するとその約12%に核の凝集が見られ、アポトーシス様の細胞死が生じていた。またこの腓腹神経組織の縦断面、横断面を詳細に検討したが、細胞外アミロイド沈着は光学顕微鏡でも電子顕微鏡でも観察されなかった。以上からシュワン細胞内のTTR凝集が細胞死に関与していることが示唆された。
ヒトTTR遺伝子のシュワン細胞での発現の研究 TgS1をHsf1 siRNAで処理し、定量PCRでTTR, Hsf1, Sox10, Mpz, Ngfrの遺伝子発現を検討した。 Hsf1を4割 低下させると、TTRと Sox10は1.1倍上昇し、Mpzは0.8倍、 Ngfは0.9倍減少した。Hsf1のこれらの遺伝子発現への影響はわずかであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シュワン細胞内のTTR凝集の研究 当初シュワン細胞でTTR凝集を促進させるためプロテオソーム阻害剤MG132を用いていたが、TTR凝集は弱く、アミロイド線維形成までには至らなかった。そこで今回は老化によって低下する熱ストレス応答の主な転写因子Hsf1を、siRNAを使い低下させたところ、TgS1細胞内に細胞質が腫大するほどの著しいTTR凝集を形成させることに成功した。TTRが充満している細胞片も観察されておりシュワン細胞死を惹起している可能性もある。今後この系を用いてTTR凝集、アミロイド線維形成、シュワン細胞の機能不全と細胞死の研究を促進させることが可能になると考えられた。またこれらのin vitroの研究と並行して、FAP TTR E61Kの患者を当大学で独自に見出し、腓腹神経を詳細に検討する機会を得た。この組織では細胞外アミロイド沈着はなかったが、有髄神経、無髄神経の著しい脱落があり、一部のシュワン細胞内でTTR沈着が見られた。またシュワン細胞死を示唆する電顕の所見を認めた。これらの結果はFAPでのシュワン細胞の病態への関与を示唆するものであり、シュワン細胞に焦点をあてた研究の方向性は正しいと思われた。
ヒトTTR遺伝子のシュワン細胞発現機序の研究 ヒトTTR遺伝子のプロモーターにはHsf1が結合する熱応答因子が2つあるため、シュワン細胞でHsf1を低下させたが、わずかにTTR遺伝子発現が増加するのみだった。また各種シュワン細胞のマーカーはシュワン細胞未分化の方に変化した。Hsf1を低下させると著しくTTR凝集が起こるが、TTR遺伝子発現増加のためではないと結論づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
シュワン細胞内のTTR凝集の研究 1) FAP TTR E61Kの患者の腓腹神経のシュワン細胞でアポトーシスが生じていないか、Tunel法やCleaved caspase 3 (CC3) 抗体で免疫染色して確かめる。またCC3と抗ヒトTTR抗体で2重免疫染色をして両者の関係を観察する。2) TTR E61K組み換え蛋白のアミロイド形成能をチオフラビンT結合測定を行い、正常TTRやTTR V30Mと比較する。3) TTR E61Kを発現するstable transformantを培養シュワン細胞で作成して、TTR凝集やアポトーシスを起こす条件で培養し、その程度を正常TTRが発現するstable transformantと比較し、変異の細胞への影響を調べる。4)TgS1細胞でHsf1を低下させTTR凝集を形成させ、アミロイド線維や細胞死が生ずるか細胞免疫染色や電顕で検討する。
異型TTRの感覚神経細胞への影響の検討 TTR E61KはTTR四量体が二量体に解離する変異として知られているので、TTR E61K組み換え蛋白の感覚神経細胞への影響を調べる。二量体をおこしやすいこの変異で神経細胞突起成長が抑制されるか正常TTRやTTR V30Mと比較し検討する。
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Causes of Carryover |
予定より安価に物品が購入出来たため残金が残った。 次年度の物品費に充てる。
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