2016 Fiscal Year Research-status Report
HAM病態形成におけるウイルス感染細胞起因の炎症ループ機構に関する時空間的解明
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16K09701
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
新谷 奈津美 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 助教 (80440353)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | HTLV-1 / HAM / CXCL10 / CXCR3 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
HTLV-1の感染者の一部に発症するHTLV-1関連脊髄症(HAM)は、未だ有効な治療法がない難治性疾患である。その主病態は、HTLV-1感染細胞に起因した脊髄の慢性炎症による神経組織傷害と考えられるが、未だ不明な点が多い。最近、申請者らの臨床的解析からHAMの脊髄病変部では、浸潤した感染T細胞より産生されるIFNγがアストロサイトからCXCR3のリガンドであるCXCL10産生を刺激し、そのCXCL10はCXCR3陽性細胞(感染CD4+ T細胞、Th1細胞やCD8+ T細胞など)の脊髄への遊走を促し、浸潤したそれらの細胞がIFNγを産生して更なるアストロサイトからのCXCL10産生を刺激するという、IFNγ-CXCL10-CXCR3炎症のポジティブフィードバックループを形成することが炎症の慢性化の主軸となり、HAMの脊髄病巣の形成・維持に重要な役割を果たしているという仮説を提唱した。本研究では、HTLV-1感染に起因した炎症ループを再現するモデルマウスを樹立し、本仮説を検証することにより、HAM病態の形成・維持機構を明らかにすることを目的とする。 平成28年度は、アストロサイト特異的発現遺伝子Glial fibrillary acidic protein(GFAP)のプロモーターを用いて、アストロサイト特異的にCXCL10を発現するトランスジェニック(Tg)多重免疫不全マウスの作製を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、においてアストロサイト特異的発現遺伝子GFAPのプロモーターにヒトCXCL10 cDNAを連結し、多重免疫不全マウスNOD/SCID/IL2rgKO(NSGマウス)に導入し、アストロサイト特異的hCXCL10発現NSGマウスの作製を行った。作製されたマウスについて、目的遺伝子の十分量の導入数をサザンブロットで確認した。また、作製マウスの各組織タンパク質を抽出し、Cytokine Beads Array法を用いて導入遺伝子hCXCL10のタンパク質発現について解析を行った結果、GFAPプロモーターが発現する組織である脳、脊髄特異的にhCXCL10のタンパク質発現が確認された。従って、モデルマウス作製に必要となるアストロサイト特異的hCXCL10発現NSGマウスを取得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、作製したアストロサイト特異的hCXCL10発現NSGマウスにHAM患者PBMCを導入することにより、HAM患者由来の免疫細胞の生着とHTLV-1感染細胞の増殖を可能する。このマウスでは導入遺伝子であるCXCL10が脊髄中アストロサイトで高発現していることから、末梢血中よりも髄液中で高い濃度勾配を示す。よって、HTLV-1によりCXCR3およびIFNγ発現を獲得したHTLV-1感染T細胞や他のCXCR3発現炎症細胞がCXCL10の濃度勾配に従って遊走し、積極的に脊髄中へ浸潤・蓄積し、その結果、脊髄では炎症の慢性化とそれに伴う神経組織損傷が生じ、HAM様病態の形成が予想される。よって、以下の解析により検証する。 (1) 炎症による四肢の腫れ、歩行障害、麻痺などについての経時的観察解析、(2) HTLV-1感染細胞の機能および動態の解析、(3) 脊髄・脳組織における感染細胞及び炎症性細胞浸潤と組織変性についての病理学的解析、(4) HAM治療薬に対する応答性の検討、(5) HAM発症リスクに対するHLAの影響の検討。
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