2017 Fiscal Year Research-status Report
多発性硬化症の治療ターゲット同定を目指した核内受容体TRβ1を介する分子病態解明
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16K09704
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
中嶋 秀人 大阪医科大学, 医学部, その他 (20330095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野田 喜一 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70751163) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多発性硬化症 / 甲状腺ホルモン受容体β1 / EAE / Th17 / Treg |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症(MS)患者の末梢血T細胞の網羅的遺伝子解析で甲状腺ホルモン受容体β1(TRβ1)は発現の高い遺伝子の1つであり,TRβ1のMS病態形成への関与と治療標的の可能性を検討する。MOG35-55 peptideにより実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導したマウスから中枢神経浸潤および末梢血CD4T細胞を採取しreal-time PCRでTRβ1発現を経時的解析したところ,TRβ1はリンパ節や脾臓である2次リンパ組織のCD4T細胞よりも,EAE発症初期の中枢神経浸潤CD4T細胞で非常に高く発現していた。TRβ1の選択的なアゴニストTRIACを投与するとEAE発症が促進し,制御性T(Treg)細胞のマスター転写因子であるFoxp3発現は低下した。逆にsiRNAでノックダウンするとEAEの発症が抑制され,中枢神経浸潤CD4T細胞のIL-17発現が低下しFoxp3発現が増加した。TRβ1の発現細胞を解析したところTh17細胞とTreg細胞との相反する二つのサブセットに発現していることがわかった。 近年Th17細胞中に,EAEの発症に関与するpathogenic Th17細胞と,IL-10を産生し抑制的に働くnon-pathogenic Th17細胞の存在が明らかとなっているが,siRNAでTRβ1の発現を抑制すると,Th17細胞のIL-10の産生が増加した。EAEの病態においてTRβ1はTh17細胞に特異的に発現しているが,Th17細胞のpathogenicity に関与している可能性が示唆された。TRβ1はTreg細胞にも発現していることから,このTreg細胞におけるTRβ1を介したFoxp3の発現抑制メカニズムを解析し,成果をTRβ1制御によるMSの新規治療法の開発に繋げたいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TRβ1はEAE及びMSの増悪因子であることを証明するため, siRNAによるTRβ1の発現抑制実験など順調に進展している。Th17関連サイトカイン・ケモカインのプロファイリング測定系(multiplex cytokine assay:CCL17,CCL2,CXCL10,CXCL11,CXCL8,IFNγ,IL-10,IL-17A,IL-17E,IL-18,IL-4,IL-6,IL-21,IL-23),抗MOG抗体ELISA,フローサイトメトリーによる濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)サブセット解析も確立でき,計画通り進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
【Th17/Treg plasticityとTRβ1を介したFoxp3の発現抑制メカニズム】 naive Treg細胞を用いてTh17細胞を誘導し,そそ過程でsiRNAやウイルスベクターを用いてTRβ1の発現を変化させ,Foxp3,RORγt,IL-17などの発現をフローサイトメトリー, ELISA, real-Time PCRを用いて解析を行う。Th17とTregのreciprocal differentiation の関与,IL-17産生性Treg細胞の産生される plasticity の関与,TRβ1を介したFoxp3の発現抑制や転写活性の制御について解析する。 【濾胞ヘルパーT細胞の機能異常】 二次リンパ組織の瀘胞胚中心の形成および高親和性B細胞の選択と記憶B細胞や形質細胞への分化にCD4+T細胞が重要な役割を果たしているが,近年,CXCR5を発現することにより二次リンパ組織の瀘胞胚中心に位置するCD4+T細胞サブセットがT細胞依存的な抗体産生に重要な役割を果たすことが明らかとなり濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)として注目される。Tfh細胞は末梢血中にも循環し,Tfh1細胞,Tfh2細胞,Tfh17細胞のサブセットが種々の免疫制御に関連しており,MS/EAEの病態においてもTh1/Th2/Th17の制御にこのTfh細胞サブセットの機能異常が深く関連していることが想定される。現在フローサイトメトリーによる解析系を設定し,CD4+CXCR5+ゲーティングしたのちにCCR6とCXCR3で分画をとることで,正常ではTh1 (CCR6-CXCR3+):Th2 (CCR6-CXCR3-):Th17 (CCR6+CXCR3-)は1:1:1にバランスが取れていることが判明した。今後はTh17/Tregの制御に関わるTfh細胞の機能についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度最後に発注した濾胞性ヘルパーT細胞サブセット解析用のフローサイトメトリー試薬の請求額合計が残額を越え,当該年度内に計上できず次年度使用額63,502円が生じたが,次年度使用額に合わせて使用し計上する。
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Research Products
(15 results)