2016 Fiscal Year Research-status Report
神経疾患における眼と手の協調関係に関する総合的検討
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16K09709
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
寺尾 安生 杏林大学, 医学部, 教授 (20343139)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 眼と手の協調関係 / 運動制御 / 大脳基底核 / 小脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
正常人において日常の様々な動作の場面で眼と手がどのように協調して動いているかを解明する。さらに神経疾患患者でこの協調関係がどのように障害され、動作障害にどのように関与しているかを調べるため、以下の検討を行った。 【reaching動作における眼と手の協調関係】 タッチパネル画面上の様々な位置にターゲットを提示し、被験者にその場所を示指でタッチさせる課題や、画面上に二つ以上のターゲットを呈示して、タッチパネル上をスライドさせながら指を動かしてその間を結ぶような課題を作成した。健常者・神経疾患患者とも視線がまずターゲットをとらえるように動き、それに遅れて手がターゲットの位置に到達する動きがみられた。健常者ではほぼ一回の指の動きでターゲットをとらえることができたが、小脳疾患患者では目的の場所で手を止められず、行き過ぎてしまったり(測定過大)、到達する前に止まってしまったりすることが多かった(測定過小)。また健常者では、視線がほぼすべての試行で一つのサッカードでターゲットをとらえるのに対し、神経疾患患者においては測定過大や測定過小のため、二回以上のステップのサッカードでターゲットをとらえる試行が多かった。この方法は診察として行われる指鼻試験を定量化する方法として失調症状の評価に有用と考えられた。 【書字課題】 タッチパネル画面上に被験者が指で書字をする際の眼と手の協調関係を検討する課題を作成した。この課題ではタッチパネル上で書いた文字の形が、指の軌跡としてオンラインで画面上に表示されるようにした。一部のパーキンソン病患者では文字を書いているうちに段々字が小さくなっていく小字症がみられた。書字の際の眼と手の協調関係を検討すると、小字症を認めるパーキンソン病の患者では、書字の際の視線の動きが小さく、小字症の一因になっている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常人において日常の様々な動作の場面において眼と手の協調関係がどのように行われているかを解明するため、小脳疾患、パーキンソン病患者など多数の患者で検討を行った。reaching動作や書字における眼と手の協調関係についてはほぼ検討が終わった。系列動作における眼と手の協調関係、運動学習における眼と手の協調関係についてはセットアップが終わったところである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度開発した装置を用いて、眼と手の協調関係をより日常生活動作に近い状況で検討する。以下の課題について検討を行う。また各種の神経生理学的手法を用いて眼と手の協調関係に関わる中枢神経機構を明らかにする。 【系列動作課題】被験者に複数のブロックを積む系列的動作を行わせる。眼と手の協調関係を健常者・神経疾患患者で比較し、その異常が系列動作のスムーズな実行にどのように影響するかを検討する。 【線画描画】指で線画の描画動作をタッチパネル上で行う際の眼と手の協調関係を調べ、正常被験者と神経疾患患者で比較する。また前年度行った書字動作における眼と手の協調関係と比較してどのような違いがあるかを検討する。 【運動学習課題における眼と手の協調関係】タッチパネル上に4-5個のボタンが一列に並んでおり、一定の時間間隔で一つ一つ点灯しては消えるので、被験者に順次点灯したボタン(ターゲット)をタッチしてもらう。このときの眼と手の協調関係を検討する。点灯の順番は、一定の配列が繰り返される場合とランダムな順序で点灯される場合を作る。前者の場合、被験者は意識的あるいは無意識にその順序を学習し、回数が進むとともに課題遂行が速くなる(学習)。この過程で眼と手の協調関係を検討し、学習とともにどのように変化するかを明らかにする。 【眼と手の協調関係を司る中枢神経機構の解明】健常人が眼と手の協調関係に関わる各課題を行っている際の脳活動を脳波や神経機能画像で記録し、その経時的な変化を明らかにすることで、眼と手の協調を司る中枢神経機構を解明する。また課題試行中の被験者において経頭蓋的に様々な大脳皮質領域の直上でいろいろなタイミングで磁気刺激することにより、大脳皮質の情報処理を一過性にブロックして、これが課題の遂行にどう影響するかを調べる。
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Causes of Carryover |
実験課題のセットアップが時期的に遅れた課題があり、今年度十分な被験者において行うことができなかったため、次年度に今年度予定されていた被験者における実験を行う必要があるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に検討例数が不十分であった系列動作課題、線画描画、運動学習課題における眼と手の協調関係を検討するため、被験者をさらに募って実験を行う予定である。
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