2018 Fiscal Year Research-status Report
連合学習における脳領域間ニューラルネットワーク可塑的変化の可視化
Project/Area Number |
16K09732
|
Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
根本 正史 創価大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (80370980)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木暮 信一 創価大学, 理工学部, 教授 (10133448)
川井 秀樹 創価大学, 理工学部, 准教授 (90546243)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 脳活動イメージング / 神経可塑性 / 連合学習 / ニューラルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,学習・記憶のメカニズムを脳領域間のニューラルネットワークの可塑的変化として捉え,その基盤の上に出現する脳活動の変化をmesoscopicなレベルで可視化,学習における各脳領域の役割を明らかにすることである。具体的には,2種類の感覚刺激を関連させて連合学習を行い,その前後で内因性信号による脳活動イメージングを行う。 今年度は,(1) 覚醒下・自由行動中の計測を想定したウェラブルカメラ(GoPro Hero4)によるイメージングのみならず,BITRAN社製CCDカメラ(BU-61)を用いて,両者のイメージングによる内因性信号が,脳活動を良好に捉えていることを電気生理学的信号と比較し確認した。(2) 次に,オペラント条件付けの連合学習を行い,学習前後で,浅麻酔下に内因性信号を描出した。すなわち,ラットの頭窓作製術後2-3日目より,Skinner boxの中でレバー押し学習を行い,レバー押しと餌の報酬とを関連付けた。次いで,振動刺激装置付のジャケットを着せ,下肢に振動子を取り付けた。無線LAN下にcomputerで刺激装置を遠隔操作し,弁別刺激とレバー押しとの間で連合学習を行った。数日で学習は成功。刺激前後でヘモグロビン吸光由来の内因性信号を描出すると,信号強度の低下とその領域の縮小を認めたが,麻酔深度の影響がある為,慎重な結果の解釈が必要と考えられた。内容は,第21回ヒト脳機能マッピング学会で発表した。(3)マウスを用いて,音刺激に対する聴覚野の内因性フラビン蛍光イメージング技術を確立した。併せて,ローズベンガルと光照射による光化学血栓法を中大脳動脈に適用し,機能的,器質的損傷の程度を,それぞれフラビン蛍光イメージングとTTC染色で評価した。今後は,これらの基礎技術を組み合わせて,げっ歯類の連合学習前後の脳活動の可塑的変化を描出する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点での問題点として,これまで得られた結果は,浅麻酔下のイメージングの実験である為,学習前後で,条件刺激に対する脳活動の変化があっても,それが,学習による可塑的変化か,麻酔深度などの差異によるartefactか区別ができていない。また,今後,①内因性信号の起源(ヘモグロビン吸光vsフラビン蛍光),②活動領野(体性感覚野vs聴覚野),③使用する動物種(ラットvsマウス),④麻酔下vs覚醒下,⑤古典的条件付けvsオペラント条件付け,などこれまでの個々の基盤技術の開発から,それぞれの脳活動パターンの差異をあきらかにしつつ,共通する連合学習の可塑的変化についてその本質を浮かび上がらせる統合的研究に組み上げていく必要がある。なお,最終的な段階として,条件刺激に対する学習前後の脳活動の変化に,他の遠隔領域,海馬や前頭葉の活動がどのように関わるのか,人為的操作を加えて明らかにすることも本研究課題のテーマの一つであるが,その段階に達していない状況がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の問題点に対して,A. 麻酔深度,覚醒度を評価する為の電気生理学的なモニターリングを行う。B. 覚醒下で脳活動を描出する為に,頭部固定とspherical treadmillsの組み合わせ,あるいは,ウェラブルカメラを用いた頭部非固定下の計測のどちらかを行って,より正確に学習の可塑的変化を捉える。分散化した研究については,①から⑤まで,それぞれ独自の課題,未解決な問題がある。これらの問題を明確にして, step-by-stepに論文化する。すなわち,手前にある問題を,一歩一歩確実に解決,証明しつつ,最終的目標に向かう方策とする。
|
Causes of Carryover |
当初は,Skinner boxを含めた,げっ歯類が学習をする為のケージの購入と無線LANによる刺激機械の開発費として支出を予定していた。しかし,前者については,大学内の他の研究費からケージ代を捻出できたこと。後者については,刺激装置の作製において,理工学部の研究者が,市販の高額な無線装置ではなく,自前でlow costの無線刺激装置を開発作製できたこと。以上により,今年度の計画していた物品費を全面的に抑えることができた。予定していた支出が軽減できたことで,今年度と併せて,麻酔深度や,呼吸状態(内因性信号に血中の炭酸ガス濃度が深く関わる為)のモニターリング,内因性信号の起源を確定する為の分光器,覚醒下での計測システム作製,これらの機器をオペレートする為のPCシステムなど購入を予定している。
|