2017 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病大血管症の非侵襲・簡便なリスク層別化システムの構築と効果的な予防法の探索
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16K09747
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片上 直人 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (10403049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高原 充佳 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (00751067)
松岡 孝昭 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (10379258)
坂本 扶美枝 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30774210)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心血管疾患 / 頸動脈エコー / 超音波組織性状 / DPP4阻害薬 / AGEs |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、頸動脈に低輝度プラークを有すると心血管疾患発症リスクが高いこと、頸動脈壁の超音波組織性状の指標であるGSMが心血管疾患発症リスク層別化に有用であることを既に明らかにしている。しかし、頸動脈壁の組織性状に影響を及ぼす因子については未だ不明な点が多い。一方、我々は、最近、DPP4阻害薬の投与により頸動脈プラークが退縮することをランダム化比較試験により明らかにした。そこで、本研究では、同試験で収集した画像データを新たに解析して、DPP4阻害薬が頸動脈組織性状に及ぼす影響を評価した。その結果、DPP4阻害薬シタグリプチン投与群では観察期間中にGSMの有意な上昇を認めたものの、DPP4阻害薬非投与の従来治療群では観察期間中にGSMの有意な変化を認めなかった。このことから、シタグリプチンは頸動脈壁・プラークの組織性状改善・プラーク安定化に寄与するものと推察された。また、DPP4阻害薬アログリプチン投与群と従来治療群の比較においても同様の現象が確認されたことから、DPP4阻害薬には頸動脈壁の組織性状を改善し、プラークを安定化させる効果が期待される。 高血糖下におけるAGE (advanced glycation endproducts)の産生亢進と蓄積は糖尿病性血管障害の発症・進展において重要な役割を担っている。最近、皮膚・皮下の血管壁に累積されたAGEs量をSkin AF値として非侵襲的に測定可能な検査機器であるAGE readerが開発された。そこで、2型糖尿病患者と健常人を対象に、Skin AF値を評価した。その結果、2型糖尿病患者では健常人に比較して、Skin AF値が有意に高いことを確認した。さらに、2型糖尿病群において、Skin AF値は糖尿病大血管症や網膜症、腎症、神経障害を有する群で有意に高値を示し、血管合併症の数が多いほど高値を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象患者からのデータ収集・解析は概ね順調に進んでおり、一部の課題に関しては、論文発表に至っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
「I. 非侵襲血管機能/画像検査を活用した糖尿病大血管症ハイリスク群スクリーニングシステムの構築」研究においては、FMD、skin AF等のバイオマーカーとしての有用性について統計学的解析を実施する。 「II. 日本人1型糖尿病患者における大血管症危険因子の解明と予防法の開発」研究においては、収集済みの血液検体を用いた血中代謝物の網羅的解析を行い、糖尿病大血管症の発症・進展との関連を検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)本研究では、「I. 非侵襲血管機能/画像検査を活用した糖尿病大血管症ハイリスク群スクリーニングシステムの構築」、「II. 日本人1型糖尿病患者における大血管症危険因子の解明と予防法の開発」、「III. DPP4阻害薬が頸動脈組織性状に及ぼす影響の評価」の3つのプロジェクトを並行して実施している。H29年度は、「III. DPP4阻害薬が頸動脈組織性状に及ぼす影響の評価」研究のデータ収集・解析は当初計画よりも進捗したが、「II. 日本人1型糖尿病患者における大血管症危険因子の解明と予防法の開発」において、血液検体を用いた各種バイオマーカーの測定に当初計画よりも遅延がみられた。このため、各種バイオマーカーの測定に要する消耗品費が当初計画よりも少額となった。しかし、H30年度には消耗品費が当初計画よりも増額となる見込みである。 (使用計画)上記のように、H29年度に実施できなかった各種バイオマーカーの測定をH30年度に実施する予定である。このため、次年度使用額は、主として各種バイオマーカーの測定と評価に関連する消耗品の購入、外注検査、データ入力資金等に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)