2016 Fiscal Year Research-status Report
脂肪細胞のエネルギー代謝を規定する脂肪滴形態とミトコンドリア量の制御機構の解明
Project/Area Number |
16K09748
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田守 義和 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (90379397)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂肪細胞 / エネルギー代謝 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目標は白色脂肪細胞において、単房性に中性脂肪を効率よく貯蔵することを可能とする因子FSP27が、同時に、脂肪細胞内のエネルギー出納を「消費」から「蓄積」に転換する機構を明らかにすることである。 今年度の検討で、我々はFSP27欠損マウスの白色脂肪細胞では、転写因子FOXO1の発現増加が認められること、及び、細胞内のエネルギー枯渇状態を感知して活性化するAMPKの活性が亢進していること(リン酸化AMPK(pAMPK)の発現増加)を見出した。このうち、FOXO1はFSP27結合タンパクの1つとして我々が考えているPRMT1によって、アルギニンメチル化されることが知られている。また、AMPKの活性化は、Sirt1経路や、CREB経路を介してPGC1αを増加させ、ミトコンドリアの増生を引き起こしてエネルギー消費を亢進させる経路が推測される。 また、これとは独立して、エネルギー消費型の脂肪細胞である褐色脂肪細胞では従来のFSP27のアミノ末端に10個のアミノ酸が付与された新たなアイソフォームFSP27βが発現していることが報告された。細胞内の中性脂肪滴形態が多房性であることは脂肪分解の観点から考えると、効率の良いエネルギー消費には極めて理にかなった形態である。そこで、我々はこのアイソフォームが褐色脂肪細胞特有の多房性の脂肪滴蓄積形態に重要ではないかと考えCOS細胞と過剰発現系を用い、褐色脂肪細胞では、FSP27αではなく、このFSP27βとCideAが協調的に機能してサイズの小さな多房性の脂肪滴形態を形成していることを明らかにした。これは脂肪細胞のエネルギー代謝を考える上で極めて重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はマイクロRNAアレイを用いた解析が思うような進展を見せていない。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロRNAアレイでは思うような展開が得られなかったが、FSP27欠損マウスの白色脂肪細胞で、FOXO1の発現増加やAMPKの活性化を明らかにした。この2つの因子はともにCREBやPGC-1αの発現亢進を介して、ミトコンドリアの増生・エネルギー代謝を高める候補である。今後は細胞内エネルギー代謝に関与する、この有力な2候補を中心に、タンパクの相互作用解析を中心にFSP27欠損が如何に脂肪細胞のエネルギー代謝を亢進させているか解析を進めたい。
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