2016 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病の膵β細胞の機能不全につながる転写因子MafAの量的制御システムの破綻
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16K09763
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
片岡 浩介 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (20262074)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 膵β細胞 / シグナル伝達 / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵島β細胞で、その機能を支える転写制御因子MafAのタンパク質レベルでの発現量を調節する2つのシステム(仮称D系とS系とする)について、それらの破綻が、糖尿病の進行過程におけるβ細胞の機能破綻の背景にあると考えられる結果を得てきた。本年度は、1)D系システムによってMafAのプロテアソームを介した分解の制御機構、2)同様にS系によるMafAの分解(プロテアソームではない)の制御機構、3)S系とMafAの間をつなぐ分子の同定、を予定していた。 1)に関しては、分解の制御に関わる因子の同定には至っていない。しかしながら、D系がオートファジー活性の制御下にある可能性を見出し、その関連を探索した。 2)については、S系を介したMafAタンパク質の分解に必須なMafAの領域の同定を変異型MafAを作製して行い、ごく短いアミノ酸領域(10アミノ酸程度)まで絞り込むことに成功した。この領域は、S系を介した分解制御に必要充分であることが判明した。そこで、この領域をTAPタグに融合させたものを作製し、安定発現細胞株を取得したので、これと相互作用する因子を精製・同定することを試みている。 3)に関しては、S系の下流で制御されることが知られているイオン・トランスポーター2種類について、それらの活性を薬剤を用いて阻害・活性化したところ、MafAタンパク質レベルがそれに応じて増減することを明らかにした。キナーゼSとイオン・トランスポーターの過剰発現(恒常活性型)や機能阻害などの一連の解析により、キナーゼSによるイオン・トランスポーターの活性制御の下流でMafAタンパク質レベルか制御されており、その下流でインスリンやGLUT2などのβ細胞特異的遺伝子の発現が制御されることを明確に示すことができた。今後は、細胞内イオン濃度によって、どのような分子機構でMafA量が制御されるのかを明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MafAをタンパク質レベルで制御する2つの制御系統であるD系とS系について、D系については、当初の考えと異なって、オートファジーとの関連を見出した点で予想を上回る新たな進展があったものの、当初見込んでいたようなMafAタンパク質の分解を実行する因子の特定には至らなかった。一方、S系については、ほぼ当初見込みの成果を挙げることができたことに加えて、S経路の上流因子についても同定の見込みが立ちつつある点で、予想を上回る成果が得られていると考える。 また、当初計画のひとつである、D系とS系のredundancyの決定については、遺伝子発現阻害実験(Crispr/Cas9やshRNA発現)がテクニカルな理由や、D系関連酵素のパラログの複数同時阻害が困難であるなどの理由により、うまく行っていないため、遅れてしまっている。 以上を総合的に勘案し、おおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
D系とS系のredundancyの決定については、引き続いて遺伝子発現阻害実験を成功させるべく、実験系の洗練を目指す必要がある。 D系統の解析に関しては、オートファジーとの関連が明らかになりつつあるので、オートファジー関連因子(あるいはリソソーム機能との関連)やmTORやAMPKなどのシグナル伝達系との機能的・物理的な関連を探索し、MafAレベルの制御にどのように、どの程度関与するのかを調べてゆくとともに、β細胞の機能破綻との関連を探索する。 S系統の解析に関しては、この系を介してMafAタンパク質の分解を制御するのに必要充分なMafA領域に結合する因子を精製・同定することを試みる。このことによって、ユビキチン・プロテアアソームではない、別のタンパク質分解系の実行因子が同定できる可能性があり、細胞内イオンのコントロールとの関連もについても新しい知見が得られると期待できる。 また、S系の上流制御機構についても、既知のキナーゼや、これまで関連が報告されていなかった因子などが候補として得られているので、これらの関与の有無やそのメカニズムの解析を進める。また、それらの因子群と、β細胞機能破綻との関連についても、モデルマウスdb/dbを利用して行ってゆく。
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Causes of Carryover |
研究計画においては、研究経費は主に消耗品の購入に充てる予定であり、これには、細胞培養用の培地、血清、プラスチック製品(シャーレ、ピペット、遠心管、トランスフェクション試薬、分子生物学用のキット類(プラスミド精製キットなど)、酵素類、合成DNA、生化学実験や免疫組織化学実験用のタグ抗体、特異抗体などの他、実験動物マウスの購入・搬入・維持費を含んでおり、その額は、これまでの研究における実績から予想して算出した。 今年度は、実験計画の一部の遅れのため、予定していたほどの匹数のマウスを使用しなかったことから、その分の差額が生じたことが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画では、29年度は今年度と比べてマウスの使用匹数を少なく見積もっていたので、研究計画の部分的な遅れを取り戻すことにより、今年度生じた差額は、29年度に使用する計画である。
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Research Products
(5 results)