2017 Fiscal Year Research-status Report
新たな自己抗原INS-IGF2を用いた1型糖尿病発症機構の人種間比較
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16K09769
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
金綱 規夫 大阪医科大学, 医学部, 助教 (80738360)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | INS-IGF2 / 1型糖尿病 / 膵島関連自己抗体 / HLA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本人の自己免疫性1型糖尿病・劇症1型糖尿病患者における抗INS-IGF2自己抗体を測定し、日本人1型糖尿病患者におけるINS-IGF2の膵島自己免疫への関与を明らかにし、またスウェーデン人と比較する事で、1型糖尿病発症メカニズムの解明に寄与することを目的とし以下を検討するものである。 1)日本人自己免疫性、及び劇症1型糖尿病患者と健常対照者における抗INS-IGF2自己抗体を測定しINS-IGF2の日本人1型糖尿病への関与を明らかにする。さらにスウェーデン人1型糖尿病患者における抗INS-IGF2自己抗体と比較し、人種間の違いの有無を明らかにする。他の膵島関連自己抗体も測定し、日本人1型糖尿病患者における抗INS-IGF2自己抗体と、他の膵島関連自己抗体との関連を評価する。 2)日本人自己免疫性及び劇症1型糖尿病患者において、抗INS-IGF2自己抗体とClassⅡ HLAとの関連を評価する。 本研究遂行にあたっては1型糖尿病患者と健常対照者の血液検体の収集を最初に行う必要がある。当初の計画案では、1型糖尿病患者においては当教室で既に採取され凍結保存中の検体の使用を考慮していたが、凍結保存されている検体量が不十分であると判明した。そこで、日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会が遂行中の他施設共同研究である「日本人1型糖尿病の包括的データベースの構築と臨床研究への展開」で収集された1型糖尿病患者100名以上の血清検体、および膵島関連自己抗体とHLA ClassⅡの結果に関し、本研究への使用を申請し許可を得た。 また、当初の計画案においては健常対照者150名の検体を収集予定であったが、より正確な結果を得るために検体数を300名に増やすこととした。本学および大阪医科大学健康科学クリニック倫理委員会において承認を得ており、近日中に健常者検体の収集に着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の計画では、1) 抗INS-IGF2自己抗体、及びその他の膵島関連自己抗体の測定、2) ClassⅡ HLA遺伝子型タイピング、の各検討に関し、一部検体における自己抗体の測定や遺伝子型タイピングを開始する予定であったが、検体の収集に遅延が生じたため、自己抗体の測定や遺伝子型タイピングの開始に至っていない。ただし、前述した「日本人1型糖尿病の包括的データベースの構築と臨床研究への展開」研究における1型糖尿病患者100名以上の血清検体や、その他の膵島関連自己抗体検査結果、ClassⅡHLA遺伝子タイピング結果を、平成30年7月から本研究に使用可能となっており、1型糖尿病患者に関しては、抗INS-IGF2自己抗体の測定を残すのみである。健常者検体に関しても、倫理委員会での承認を得ており、近日中に検体収集を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)抗INS-IGF2自己抗体、及びその他の膵島関連自己抗体の測定。 スウェーデン王国ルンド大学Ake Lernmark教授との共同研究で自己抗体を測定する。日本で採取・凍結保存した日本人自己免疫性1型糖尿病患者・日本人劇症1型糖尿病患者血清及び日本人健常対照者血清を、ルンド大学に凍結した状態で郵送し、Radioligand Binding Assay法を用いて測定する。また、日本人の1型糖尿病患者のうち一定の比率を占める緩徐進行1型糖尿病患者に関しても研究の対象に加える。1型糖尿病患者に関しては、前述の「日本人1型糖尿病の包括的データベースの構築と臨床研究への展開」研究から100名以上の検体の提供を受ける承認を得ている。対照者に関しても、新たに同意を得て300名の健常者(正常耐糖能者)検体を収集する予定である。 2)ClassⅡ HLA遺伝子型タイピング。 申請者らは平成27年にScand J Immunol誌上で、スウェーデン人自己免疫性1型糖尿病患者における抗INS-IGF2自己抗体はClassⅡ HLA DQ2/8とは有意な相関を示すが、HLA DQ2/2やHLA DQ 8/8とは相関を示さない事を発表した。日本人の自己免疫型1型糖尿病患者や劇症1型糖尿病患者、そして緩徐進行1型糖尿病患者においても、ClassⅡ HLAと抗INS-IGF2自己抗体との関係の解析は、その発症メカニズムを研究する上で大変重要である。前述の「日本人1型糖尿病の包括的データベースの構築と臨床研究への展開」研究で測定されたClassⅡ HLA遺伝子型タイピングの結果を用いて、日本人1型糖尿病における抗INS-IGF2抗体とClassⅡ HLAとの関連を解析する。 これらの実験により得られた結果について、解析ソフトSPSS StatisticsやGraphPadPRISM等を用いて適宜解析する。
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Causes of Carryover |
(理由) 検体収集に時間を要し遅延が生じたため自己抗体の測定に至らず、当初の計画の手順を修正し次年度に使用する予定が生じた。すなわち、平成30年度に自己抗体の測定を行う計画に変更したためである。 (使用計画) 抗INS-IGF2自己抗体の測定に係る器具や試薬等の購入、凍結検体をスウェーデンに送る費用、申請者がスウェーデンに赴き抗INS-IGF2自己抗体を測定するための交通費と滞在費、統計解析を行うために必要なソフトウェア等の購入費用などに研究費を使用する。
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