2016 Fiscal Year Research-status Report
新規グルカゴン様血糖調節ペプチドの同定と生理機能の解析
Project/Area Number |
16K09775
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小林 雅樹 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (80373041)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 糖尿病 / グルカゴン |
Outline of Annual Research Achievements |
グルカゴンは前駆体であるプログルカゴンがプロセッシングされて産生されるため、グルカゴンと共通のアミノ酸配列を持つ分子が複数存在する。そのため、従来のグルカゴンC末端抗体による競合法イムノアッセイでは反応特異性が不十分であり、最近ではグルカゴンC末端およびN末端認識抗体を組み合わせることで反応特異性を向上させたサンドイッチELISAの使用が推奨されている。しかし、サンドイッチELISAであっても抗体による非特異的な反応を完全に除外することが不可能なため、測定結果の信頼性についての評価を行うことが困難であり、このことはグルカゴン抗体に交差するグルカゴン類似分子の同定を目指す本研究課題においても大きな問題であった。そこで抗体を用いない新たな測定系として、質量分析装置を用いたグルカゴン測定系を開発した。血漿中のグルカゴン濃度について質量分析装置と既存のイムノアッセイとの比較検討を行ったところ、サンドイッチELISAの測定値とは一致はしないものの比較的良好な相関を示す一方で、競合法イムノアッセイとの相関は低いものであった。さらにプログルカゴン遺伝子欠損マウスの血漿に対しイムノアッセイを行ったところ、サンドイッチELISAではグルカゴンは検出されなかったのに対し、2つの異なる競合法イムノアッセイキットにおいてはグルカゴンが検出された。さらに、プログルカゴン欠損マウスの様々な臓器において様々な抗グルカゴン抗体を用いて免疫染色を試みているが、現在までに胃の一部においてグルカゴン陽性細胞が観察されている。これらの結果より、競合法イムノアッセイで検出される分子の中にはプログルカゴンに由来しないものが存在しているとともに、そのような分子が胃で産生されている可能性が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グルカゴンのみを特異的に測定することが出来る新しい測定系の開発に成功したことにより、これまでよりも高い精度でグルカゴンC 末端抗体結合ペプチド含量の高い組織の探索が可能となった。さらに、プログルカゴン遺伝子欠損マウスにおいてグルカゴンC 末端抗体に陽性となることが明らかになったことから、内因性のグルカゴンに影響されずに効率的にグルカゴン類似分子の単離を行うことが可能になると期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、プログルカゴン欠損マウスの様々な臓器において免疫組織化学的な解析を進めている。それに加えて様々な組織からの抽出物について様々なグルカゴンアッセイを行い、グルカゴンC 末端抗体結合ペプチド含量の高い組織を決定する。この組織を内因性のぺプチダーゼを失活させるためボイルした後にホモジナイズし、組織懸濁液を得る。この懸濁液から有機溶媒による除タンパクを行い、逆相カートリッジカラムを用いてペプチド回収を行う。次にグルカゴンC 末端認識抗体を用いたアフィニティ―カラムを作製し、この回収ペプチドよりグルカゴンC 末端抗体結合ペプチドの同定を試みる。
|