2016 Fiscal Year Research-status Report
CD206陽性マクロファージが肥満に合併する肝腫瘍に与える経時的影響とその機序
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16K09777
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
薄井 勲 富山大学, 附属病院, 講師 (50377272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 芳弘 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (10541956)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝がん / 肥満 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、次の二つの課題に取り組んだ。すなわち、課題1ではCD206陽性マクロファージは肥満による肝がんの発症を促進するのか、課題2では肥満時マクロファージのHIF-1aはどのように肝がんの発症を促進するのか、である。 まず課題1では、我々がこれまでに独自に作製したCD206-DTRマウスにDENを投与後、高脂肪食にて飼育し、肝がんを発症させた。これまでの予備経験では、化学発癌物質DEN投与による肝腫瘍の発症には、高脂肪食負荷後約5-6か月間の飼育が必要であった。平成28年度にはCD206-DTRマウスおよび野生型コントロールにDENを投与し、6か月後に肝腫瘍の評価を行った。また、CD206-DTRマウスへのジフテリアトキシンの投与は、脂肪組織で確認した我々の予備実験にならって、解剖の直前2か月間に週3回の投与法を採用した。同条件で行ったジフテリアトキシン投与は、肝臓より採取したCD206マクロファージ数を野生型コントロールの約40%まで低下させた。しかし、この条件で肝腫瘍の数およびサイズに有意な変化はなかった。 課題2では、マクロファージ特異的なHIF-1aの欠損マウスにDENを投与後、普通食および高脂肪食にて飼育し、肝がんを発症させた。予備実験では、マクロファージ特異的なHIF-1aの欠損は高脂肪食負荷時にのみ腫瘍数を減少させた。平成28年度はHIF-1aの欠損が腫瘍数を減らした機序について検討をすすめた。まず、肝臓から組織を採取し、組織学的検索およびRT-PCRによる遺伝子発現を調べた。マクロファージ特異的なHIF-1aの欠損は、肝腫瘍内外に浸潤するマクロファージ数と炎症マーカーの発現を低下させた。また、MACSにて肝臓から採取したマクロファージを用いて、メタボローム解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1に関し、平成28年度には、CD206-DTRマウスに対するジフテリアトキシンの投与条件の確立が最も重要な検討内容となった。ジフテリアトキシンの投与量や投与回数(連日か隔日かなど)、投与期間など複数の組み合わせが予定されているが、まずはこれまで脂肪組織で行ってきた他の実験にならって、解剖の直前2か月間に週3回の投与法を採用した。ジフテリアトキシンの投与条件は、肝臓におけるCD206陽性マクロファージの除去(ablation)効率と、肝腫瘍への影響の両者で判断される。CD206陽性マクロファージの除去効率は脂肪組織の解析から予想したものにほぼ近い値が得られた。しかし、肝腫瘍への明らかな変化が見られなかった理由としては、(1)CD206陽性マクロファージの除去条件(特に、除去するべき時期など)が適切でなかった、(2)我々の仮説に反して、CD206陽性マクロファージが肝腫瘍の発症や増殖に関与していない、の大きくふたつの可能性があると考えている。 課題2に関し、平成28年度には、マクロファージ特異的なHIF-1aの欠損が肝腫瘍数を減少させた機序について検討をすすめた。HIF-1aの欠損は、肝腫瘍内外に浸潤するマクロファージ数と炎症マーカーの発現を低下させた。また、肝臓の増殖シグナルの活性を低下させた。これらの結果より、マクロファージのHIF-1aの活性化は、炎症関連発がんの発症形式に関与するものと考えられた。さらに、高脂肪食肥満がマクロファージのHIF-1aを活性化させる機序を知る目的で、肝臓マクロファージのメタボローム解析を開始した。解析条件の設定が終了し、HIF-1aの活性に関与する可能性を示唆する代謝産物Xの変化を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1に関し、平成29年度以降、まずはCD206-DTRマウスに対するジフテリアトキシンの投与を平成28年度とは異なる条件で行う。特に、より早期あるいはより長期にCD206陽性マクロファージを除去するべきではないかと考えている。肝腫瘍の数またはサイズに変化が見られる条件を確定後、その機序について検討を進める。CD206-DTRマウスと、野生型コントロールの肝臓から腫瘍部、非腫瘍部の組織を採取し、組織学的検索およびRT-PCRによる遺伝子発現を調べる。また普通食飼育による非肥満マウスに関しても、上記肥満マウスに準じた検討を開始する。 課題2に関し平成29年度以降には、まず肝臓マクロファージのメタボローム解析をすすめる。平成28年度に見出だした代謝産物Xの変化をはじめ、肥満と非肥満の比較およびHIF-1aの欠損の有無による比較を行う。また、メタボローム解析の結果を受けて、培養実験を開始する。すなわち、代謝産物の処置の有無が培養マクロファージの極性変化や共培養した肝腫瘍に与える影響を調べる。
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Causes of Carryover |
購入品の見積額と納入価格の誤差によるもの。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度の経費と併せて物品費に充当する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] HIF-1a in myeloid cells promotes adipose tissue remodeling toward insulin resistance.2016
Author(s)
2)Takikawa A., Mahmood A., Nawaz A., Kado T., Okabe K., Yamamoto S., Aminuddin A., Senda S., Tsuneyama K., Ikutani M., Watanabe Y., Igarashi Y., Nagai Y., Takatsu K., Koizumi K., Imura J., Goda N., Sasahara M., Matsumoto M., Saeki K., Nakagawa T., Fujisaka S., Usui I., Tobe K.
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Journal Title
Diabetes
Volume: 65
Pages: 3649-3659
DOI
Peer Reviewed
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