2016 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪肝炎の進展における肝内マクロファージ増殖の病態生理学的意義
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16K09787
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
瀬ノ口 隆文 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (00530320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 剛 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20398192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | NAFLD / マクロファージ / 肝線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease; NAFLD)は、メタボリックシンドロームの肝臓における表現型と捉えられる。NASHの発症・進展機序には未だ不明な点が多く、その病態解明は有効な治療法の開発につながる重要な研究課題である。本研究はNASHの発症・進展におけるマクロファージの関与を肝内マクロファージ増殖に着目し、その病態生理学的意義を明らかにすることを目的とする。 高脂肪食(HFD)負荷マウスおよび肥満・糖尿病モデルマウス(ob/obマウス)において、肝脂肪蓄積に伴い、肝組織における増殖マクロファージの増加を確認した。スカベンジャー受容体遺伝子のプロモーター制御下にサイクリン依存性キナーゼ阻害因子 p27kipを発現するマクロファージ特異的増殖抑制マウス(mac-p27Tg)および対象マウスに10週間の高脂肪食負荷(HFD)を行い、肝臓を採取した。 肝臓の中性脂肪含有量は対象群と比しmac-p27Tg群にて有意に減少した。mac-p27Tg群における肝臓組織では、対照群と比しマクロファージマーカーであるF4/80のmRNA発現の減少と、増殖マクロファージの減少を認めた。mac-p27Tg群の肝臓において、肝線維化面積は有意に減少し、線維化マーカーのmRNA発現が有意に低下した。NADPHオキシダーゼのmRNA発現は、mac-p27Tg群でp22phoxの有意な低下及びp47phoxの減少傾向を認め、マクロファージ増殖抑制によるNADPHオキシダーゼを介した活性酸素種産生の抑制が示唆された。 マクロファージ増殖抑制により、高脂肪食負荷によって誘導される肝脂肪蓄積および肝線維化が減少した。肝組織マクロファージの増殖のNAFLD/NASHの発症・進展への関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高脂肪食負荷およびob/obマウスにおいて肝脂肪蓄積に伴い肝組織の増殖マクロファージの増加を明らかにした。マクロファージ特異的増殖抑制マウスを用い、肝組織マクロファージの増殖抑制による、肝組織の炎症、酸化ストレスの軽減、肝脂肪蓄積の減少を見出しており、肝組織マクロファージのNAFLD病態への関与を明らかにした。2019年以降の予定として挙げたテトラサイクリン誘導性マクロファージ特異的増殖抑制マウスの作成にも着手し、プラスミド上のトランスジーンの設計は終了している。マクロファージ特異的遺伝子誘導の確認をin vitroで行ったうえで、トランスジェニックマウスの作成に移る。この点については順調に研究の進展が得られている。NAFLDモデルの肝組織においてマクロファージの極性の検討を行った。肝の炎症に伴い骨髄より誘導される浸潤マクロファージあるいは肝組織常在マクロファージ(Kupffer細胞)の肝組織内での局在に特徴があることを見出した。本件について、病態の進行との関連や、これらの細胞の増殖性、また増殖抑制による病態の改善効果への関与について更なる検討を進めている。 マクロファージ増殖誘導因子の検索については十分な検討が行えていない。肝組織マクロファージ増殖の証明と、マクロファージ特異的増殖抑制による表現型の解析に時間を費やしたためではあるが、保存したサンプルから、候補分子の発現の解析にまずは着手したい。
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Strategy for Future Research Activity |
テトラサイクリン誘導性マクロファージ特異的増殖抑制マウスの作成を引き続き行う。マクロファージ特異的トランスアクチベーター発現マウス(pAL-Tet)、テトラサイクリン応答性p27発現マウス(TRE-p27)のそれぞれのトランスジェニックマウスを作成し、これらのマウスの交配によりマクロファージ特異的Tet誘導性p27発現ダブルトランスジェニックマウス(Tet-mac-p27Tg)を作成する。本マウスにNASHを導入し、任意の時期よりDoxycycline投与を行いマクロファージ増殖を抑制する。これらの検討により、マクロファージ増殖抑制によるNASH/NAFLD治療の可能性を明らかにする。 NASHを導入したマウスの肝組織より、肝内マクロファージを単離し、骨髄由来浸潤マクロファージと常在マクロファージ(Kupffer細胞)とに分離し、それぞれの増殖能、活性化を検討する。NASH進展のステージごとにこれらを評価し、肝内の浸潤、常在マクロファージ増殖のNASHの病態への関与をそれぞれ明らかにする。 肝内マクロファージの増殖誘導因子として、VLDL1のマクロファージに対する直接的作用を検討する。①VLDLの分離法を確立し、ヒト血清より超遠心法で分離、精製したVLDL1で培養マクロファージを刺激し、マクロファージ増殖に対する直接的効果を評価する。酸化LDLやその他既報の増殖誘導因子(GM-CSF、M-CSF、MCP-1)による増殖、およびLPSによる炎症活性に対するVLDL1の効果を検討する。 これらの検討より、インスリン抵抗性を基盤とするNASH発症・進展おけるマクロファージ増殖の意義を明らかにし、マクロファージ増殖誘導因子の一つとしてVLDL1のマクロファージへの作用を詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
おおむね予定通り研究費を執行したが、少額(594円)の次年度使用額を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を継続するにあたり必要な物品費の一部として使用する予定。
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Research Products
(4 results)