2017 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪肝炎の進展における肝内マクロファージ増殖の病態生理学的意義
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16K09787
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
瀬ノ口 隆文 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (00530320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 剛 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (20398192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | NAFLD/NASH / マクロファージ / メタボリックシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】マクロファージ特異的増殖抑制モデルマウスを用いて、耐糖能異常や肝脂肪蓄積におけるマクロファージ増殖の意義について検討した。 【方法】スカベンジャー受容体遺伝子のプロモーター制御下にサイクリン依存性キナーゼ阻害因子p27kipを発現し、マクロファージ特異的に増殖を抑制するトランスジェニックマウス (mac-p27Tg) を作成した。10週齢のWild typeマウス (WT群) とmac-p27Tgマウス (Tg群) に対して、10週間、高脂肪食を負荷した。15週齢においてipGTT、18週齢においてipITTを施行した。20週齢において高インスリン血症正常血糖グルコースクランプを施行した。精巣周囲脂肪及び肝臓を採取し、脂肪細胞及び肝臓の組織学的変化の評価を行った。 【結果】ipGTTでは、WT群と比しTg群で負荷後60、90、120分の血糖値は有意に低値であった。負荷前、負荷後15分、30分のインスリン値には有意差はなかった。ipITTでは、WT群と比しTg群で負荷後60、90、120分の血糖値は有意に低値であった。高インスリン血症正常血糖グルコースクランプでは、全身の糖利用率はWT群と比しTg群で有意に上昇し、肝臓での糖産生率はTg群で有意に低下、骨格筋の糖取り込み率はTg群で上昇傾向であった。精巣周囲脂肪において、増殖マクロファージはWT群と比しTg群で減少し、脂肪細胞の増大やCrown-like structure形成は、Tg群で有意に抑制された。肝臓において、増殖マクロファージはWT群と比しTg群で減少した。中性脂肪含有量はTg群にて有意に減少した。肝線維化面積はTg群にて有意に縮小した。 【結論】マクロファージ増殖が脂肪組織および肝におけるインスリン抵抗性の発現やNAFLDの発症・進展に関与し、マクロファージ増殖制御がこれらの治療法開発に繋がる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高脂肪食負荷によって引き起こされる肥満、インスリン抵抗性、肝脂肪蓄積、肝線維化はマクロファージ特異的増殖抑制マウスへにおいて軽減され、脂肪組織、肝臓における慢性炎症を基盤としたインスリン抵抗性、脂肪肝の病態にマクロファージが関与し、組織マクロファージの増殖を制御することで病態が改善する表現型が確認できた。マクロファージ増殖抑制の治療的意義を検討するためにテトラサイクリン誘導性マクロファージ特異的増殖抑制マウスの作成を行っており、コンストラクトの作成、プラスミド上での機能評価は終了し、トランスジェニックマウスの作成の手続きを進めている。脂肪組織、肝臓のマクロファージのフローサイトメトリーを用いた解析も行っており、増殖抑制によるマクロファージの数の制御に伴う組織マクロファージの質の制御の検討も行っている。 マクロファージ特異的増殖抑制マウスにおける動脈硬化の発症・進展を検討した研究では、マクロファージ増殖抑制による動脈硬化病変の進展抑制を示した。特に、マクロファージの増殖抑制によって進展病変の形成が抑制され、粥腫の形成、プラークの不安定化が抑制されたことを明らかにし、ATVB誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージ増殖抑制によって組織の炎症の軽減、脂肪、肝臓においてインスリン抵抗性改善効果が示唆された。テトラサイクリン誘導性マクロファージ特異的増殖抑制マウスの作成を行い、高脂肪食負荷による肥満、インスリン抵抗性の誘導に対し、マクロファージ増殖の時間的制御による効果を検討する。 肝のマクロファージ増殖について、増殖誘導因子は明らかではない。肝内マクロファージの増殖誘導因子として、インスリン抵抗性に伴って産生が増加するVLDL1に着目し、マクロファージに対する直接的作用を検討する。平成28 年度中にVLDL の分離法を確立し、培養細胞での検討を行う。ヒト血清より超遠心法で分離、精製したVLDL1 でTHP-1 より分化誘導したマクロファージを刺激し、細胞数算定およびBrdU 取込み法でマクロファージ増殖に対する直接的効果を評価する。また、酸化LDL やその他既報の増殖誘導因子(GM-CSF、M-CSF、MCP-1)による増殖、およびLPS による炎症活性に対するVLDL1 の効果を検討する。 NASH モデル化したマウスの肝組織より、肝内マクロファージをFlow cytometory を用い浸潤、常在マクロファージに分類し、それぞれの増殖能、活性化を検討する。また、NASH 進展のステージごとにこれらを評価することにより、マクロファージ増殖のNASH の病態への関与をより詳細に検討する。BrdU 持続投与後の肝臓組織から単離したマクロファージをLy6C 陽性の骨髄由来浸潤マクロファージとLy6C 陰性の常在マクロファージ(Kupffer 細胞)とに分離し、それぞれの分画のBrdU 陽性細胞数より増殖細胞を定量する。またこれらのマクロファージの炎症性サイトカインの発現を定量化し、浸潤、常在マクロファージ毎に炎症活性の程度を評価する。
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Causes of Carryover |
残が少額であり、使い切るための無用な使用を避け、次年度への繰り越しとした。
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Research Products
(6 results)