2016 Fiscal Year Research-status Report
コレステロール合成阻害による糖尿病発症機構解明と治療法の開発
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16K09789
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
石橋 俊 自治医科大学, 医学部, 教授 (90212919)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コレステロール合成 / インスリン / 糖尿病 / ブドウ糖 / ランゲルハンス島 / β細胞 / HMG-CoA還元酵素 / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
ラットインスリンプロモーター(RIP)でCre recombinaseを発現するトランスゲジェニックマウスと、HMG-CoA還元酵素(HMGCR)遺伝子のイントロン2にflox配列を挿入し、イントロン4にflox配列で挟んだNeo耐性遺伝子を挿入したマウス(floxed HMGCR)とを交配して、インスリン発現臓器(膵β細胞)でHMGCRを欠損するマウスを作成した。普通食で飼育時の糖・脂質代謝を評価した。 生後10週齢の体重は対照群(WT)で25.01±1.84 g(n=10)、膵β細胞特異的HMGCR欠損マウス(KO)で22.91±1.74 g(n=10)であり、KOで低下を認め、インスリン分泌能の低下を示す所見であった。また空腹時血糖値はWTで77.08±10.97 mg/dl、KOで373.24±99.47 mg/dlであり、KOで有意に上昇が認められ、随時血糖値もWTで161.42±22.39 mg/dl、KOで672.46±96.41 mg/dlであり、KOで有意に上昇が認められた。同時期の空腹時の血漿インスリン値はWTで0.81±0.81 ng/ml、KOで0.24±0.05 ng/mlであり、KOで有意に低下が認められ、随時のインスリン値もWTで1.39±0.96 ng/ml、KOで0.43±0.20 ng/mlであり、KOで有意に低下が認められた。血中遊離脂肪酸の濃度はWTで1.38±0.27mEq/l、KOで1.34±0.49mEq/lであり、2群で変化がなった。血漿総コレステロールはWTで84.25±8.46mg/dl、KOで78.77±10.07mg/dl、トリグリセライドはWTで87.26±18.97mg/dl、KOで59.55±25.64mg/dlと変化がなかった。 膵臓の病理所見からは、KOのラ氏島の体積及び数の減少、特にβ細胞の減少が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖脂質代謝異常の評価は当初の予定どうり解析できている。一方、膵臓の病理学的検索、インスリン分泌不全の原因に関する実験はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果からは、膵β細胞特異的なHMGCRの欠損は、膵β細胞の減少を来たし、インスリン分泌低下及び高血糖を来たすことが明らかとなった。今後は膵β細胞数の減少が細胞死によるものか、細胞増殖の低下によるものかを評価するため、TUNEL染色やKi67に対する免疫染色などを追加する。また、現在ラ氏島の単離を進めており、ラ氏島のインスリン含量、インスリン分泌能の評価、膵β細胞の変化を説明しうる遺伝子や蛋白質の発現動態を調べていく。特にHMGCR以降の経路でコレステロール以外に合成されるイソプレノイド類は細胞機能や細胞骨格の維持に重要な生物学的作用をもつRhoやRasといった低分子G蛋白を修飾して、活性化するため、これらの蛋白の活性化の程度をwestern blotを用いて検討する。またHMGCRの上流に位置するsterol-regulatory element binding protein 2(SREBP-2)を膵β細胞に過剰発現させると、β細胞の減少及び形態が変化し、β細胞の分化に関わる転写因子 pancreas duodenal homeobox gene 1(Pdx1)やBETA-2の発現低下を伴っていたことが報告されている(M Ishikawa et al. J.Lipid Res. 49:2524-2534, 2008)。我々の過去の検討では肝臓でHMGCRを抑制すると、feedback regulationによりSREBP2の発現が誘導されており、本欠損マウスの膵β細胞でもこれらの転写因子の発現の変化が予想されるため、定量する。
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