2016 Fiscal Year Research-status Report
行動発現の神経基盤を制御する甲状腺ホルモン作用の新機軸
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16K09793
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 克哉 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40344709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井樋 慶一 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60232427)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 甲状腺ホルモン / 神経発達障害 / パルブアルブミン / サーカディアンリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの結果から、胎生後期から生後14日目までの間に母マウスに抗甲状腺剤を与え甲状腺ホルモンを人為的に欠乏させると、親では組織学的な変化は認められないものの、仔の大脳皮質や海馬におけるパルブアルブミン発現の顕著な減少が観察された。14日目以降、抗甲状腺剤を除き甲状腺機能を回復させ、個体成熟を待って自発運動量を計測すると甲状腺ホルモン不全を経験した個体では明らかな活動パターンの異常が観察され、暗期開始直後と暗期終了直前に見られる一過性の活動更新が見られなくなった。 今回まず我々は、甲状腺ホルモン不全の期間を胎生後期から生後14日目にくわえて、生後14日から28日の間、または90日から104日(成熟個体)と変化させ、パルブアルブミン遺伝子発現への影響を解析した。胎生後期から生後14日目までの間に甲状腺ホルモンを欠乏させると大脳皮質や海馬におけるパルブアルブミン発現は顕著に減少したが、ホルモン不全期間を14日以降に設定した上記2群では、その発現量は対照群と同程度であった。このことから、パルブアルブミン発現における甲状腺ホルモン感受性の臨界期が生後14日以内に存在すると推察された。さらに、90日から104日の間に甲状腺ホルモン欠乏を引き起こされた実験群の自発運動量を計測したが、活動パターンの異常は観察されなかった。現在、生後14日から28日の間に甲状腺ホルモン不全を経験した個体の自発運動量を計測している。一方、自発運動量の異常が内在性の時計機構に起因するか否かを確認するために恒暗条件下でフリーラン周期(τ)を計測したところ甲状腺機能低下群では対照群に比べて、有意な短縮を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画に加えて、甲状腺ホルモンを人為的に低下させる期間を複数用意したため、若干の遅れは生じているものの、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
生後14日目までの甲状腺ホルモン不全によってもたらされる恒暗条件下によるフリーラン周期(τ)の低下が、生後14から28日目ならびに成熟個体において甲状腺ホルモン不全を経験した個体でも観察されるかを調査する。またパルブアルブミン低下とフリーラン周期(τ)の低下の関連性を調べるために、時期選択的にパルブアルブミン発現を低下させる実験を準備している。
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Causes of Carryover |
当初計画に加えて、甲状腺ホルモンを人為的に低下させる期間を複数実験群用意し、その行動解析に時間がかかり、若干の実験の遅れが生じているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験動物の購入および飼養に係る飼料や床敷、ならびに分子生物学的実験に必要な酵素類、そして組織学的実験に抗体などの試薬代にあてる。
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