2016 Fiscal Year Research-status Report
インスリン分泌機構における3つの新規分子基盤の解明
Project/Area Number |
16K09799
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
駒津 光久 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90221978)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 至 群馬大学, 生体調節研究所, 名誉教授 (60143492)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | インスリン分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は以下の3つの観点から実験をすすめた。 1)インスリン分泌実験に関する定量的評価可能な実験系を再構築した。甘味受容体の特異的拮抗薬であるラクチゾールがラット膵ランゲルハンス氏島からのインスリン分泌に与える影響をさまざまな実験条件で確認した。ラクチゾールの作用は現時点では実験条件により一定した結果を示しておらず、今後のさらなる検討が必要である。 2)甲状腺ホルモン結合細胞質蛋白(CRYM)ノックアウトマウスに高脂肪食負荷をしたところ、耐糖能の悪化が認められ、その原因を詳細に検索した。当初予想していた膵β細胞機能はin vivo, in vitroともに野生型と変化を認めなかったが、CRTMノックアウトマウスでは内臓脂肪の増加をともなう肥満が著明であった。インスリン負荷試験ではインスリン感受性に差をみとめなかったので、あらたな肥満モデル動物としての可能性が考えられる。肝臓では肝細胞内への脂肪沈着がみとめられた。現在肝細胞、脂肪細胞の肥満や糖脂質代謝に関連した遺伝子発現の差を検討中である。 3)インスリン分泌における甲状腺ホルモン受容体の役割に関して甲状腺ホルモン受容体β(TRβ)欠損マウスを用いて解析した。高脂肪食負荷でブドウ糖負荷後の高血糖を呈し、インスリン分泌能の低下を示唆する所見を得た。現在膵組織におけるβ細胞量やインスリン分泌機構に関連した蛋白発現量を詳細に比較している。これらのTRβ欠損による変化が甲状腺ホルモンに依存するか否かも今後の課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の進捗はおおむね順調であった。CRYMノックアウトマウスへの高脂肪食負荷でみられた「肥満」という表現系は予想外であり、あらたな研究課題として大きな可能性を生んでいる。一方、甘味受容体に関するインスリン分泌実験は、当初予定通りのインスリン分泌実験系が立ち上げられずに予定よりやや進捗が遅くなったことと、そのためまだ一定の結論を得るに至っていないことは課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
概要で述べた項目別に記載する。 1)インスリン分泌実験系は再確立したので、まずラクチゾールのインスリン分泌に対する効果を詳細に検討していく。特に、我々が長年研究してきたブドウ糖によるKATPチャネル非依存性のインスリン分泌作用と甘味受容体との関連をインスリン分泌実験の観点から一定の結論を得られるように努力する。 2)CRYMの生理的役割の解明の目的で、さらに分子生物学的に詳細な検討を加えるとともに、CRYMが動物や人の各組織でどのような発現をしているか、また、様々な病態でどのような変化があるかを新たに実験計画をたて、倫理委員会承認を得た上で遂行したい。 3)TRβノックアウトマウスの膵β細胞におけるインスリン分泌異常の詳細を解明するべくインスリン分泌実験を行う。また膵β細胞量の定量も完結させる。
|
Causes of Carryover |
ほぼ予定通りの執行であったが、当初計画で見込んだよりも安価で遂行できたため約10%に相当する額が次年度使用となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、必要なものを予定通り執行していく中で、平成29年請求額とあわせて主に消耗品に使用していく予定である。
|
Research Products
(1 results)