2017 Fiscal Year Research-status Report
脳腸ホルモン「グレリン」による放射線障害への防護・修復効果の検討
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16K09814
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
西 芳寛 久留米大学, 付置研究所, 研究員 (20352122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 元康 獨協医科大学, 医学部, 助教 (20418891)
細田 洋司 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40359807)
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線障害 / グレリン / 骨髄抑制 / 放射線宿酔 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線被ばくによる血球細胞障害へのグレリンの保護効果について 2017年 11/25 の第60回 放射線影響学会(千葉)で学会報告を行った。同学会報告で以下 ①-④ の研究結果を報告した。①.3GyのX線全身照射(Xir-3G)マウスの血中・組織内グレリン濃度のRIA測定。②.Xir-3Gマウスの血中RBC,WBC(リンパ球、顆粒球)の経時的・有意な減少とその後の回復。③.Xir-3Gマウスへの照射後の連日日間の C8-グレリンを投与(5 micro-g/body/回)で血中のRBC, WBC, リンパ球の減少が有意に抑制された。④.培養ヒトリンパ球細胞への3GyのX線照射による細胞死が、1x10-7~8 M のC8-グレリン添加で有意に抑制された。
同学会でのデーター発表中に、聴講者からの質問・アドバイスを受けてヒトリンパ芽球系培養細胞「Molt-4」を用いた in vitro の解析を開始した。Molt-4 細胞においても、3GyのX線照射で細胞死の増加傾向が確認されたが、Molt-4 細胞の元々の脆弱性から、経時的な死細胞数の出現が多く、実験系自体がグレリンの添加実験に適さない可能性が浮上した。今後の数ヶ月間で Molt-4 の実験系に有意な進展が見込めない場合には、別のヒトリンパ球系細胞(Jurkat細胞)への変更も視野に入れて、準備中である。
上記 ①-④ の解析に加えて、放射線照射後に頻発する「放射線宿酔」へのグレリン投与の効果(グレリンによる嘔気・食欲低下の抑制効果)についても、マウスの「異食行動」(Pika)を指標に解析するための予備実験を開始した。上記の in vitro 実験が順調に進まない場合のバックアップとして考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H.28-29 年度は熊本地震などの影響を受けて個人の研究環境が大きく変化した。このため、本研究の申請当初に計画していた「疾患モデルマウス」(放射線障害性白血病・リンパ腫モデルマウス)に対するグレリンの影響については優先順位を低くした。そのかわりに「in vitro 実験系」(培養細胞への放射線照射とグレリン投与の影響)と「放射線宿酔」(嘔気・食欲低下など)に対するグレリン投与の効果についての予備検討をH.29年度後半から開始した。昨年度の後半からは、地震による自身の研究環境も回復基調に乗り、コンスタントな実験の実施が可能となっている。In vitro の実験系は、ヒトリンパ芽球系細胞(Molt-4)の導入にやや時間がかかっているが、培養条件の工夫等による状況の打破が可能と考えている。また、マウスを用いた「放射線宿酔へのグレリン投与の効果」(in vivo 実験系)については、ほぼ順調に基礎検討が進んでいる。今後は、マウスを用いた上記の「放射線宿酔」の動物実験系を確立して、これを元にした「放射線宿酔マウスへのグレリン投与の効果」の解析を行い、グレリンによる放射線障害への防護・修復効果の検討をさらに進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
H.30年度以降は、以下の ①,② の検討を行い、これまでの実験成果と併せて、学会報告・論文発表へとつなげていく。具体的には ①.Molt-4 又は Jurkat 培養細胞の放射線障害(Xir-3G)に対するグレリン投与の血球保護効果の有無と、その機序について「グレリン-P53経路」を中心に検討を行う。Molt-4 への放射線照射によるアポトーシスの誘導については、基礎検討をすませている。Molt-4 細胞の脆弱性に伴う解析への影響が懸念された場合には、Jurkat細胞への培養株の変更を考える。これとは別に、②.低線量の放射線被ばく後(1-5 Gy 照射後)に出現する「放射線宿酔」(嘔気・食欲低下ほか)へのグレリン投与の効果について、C57BL/6Jマウスを使用した in vitro の検討を行う。3-5 Gyの全身X線照射による有意な食欲低下については、すでに検討すみ。放射線宿酔に伴う嘔気については、マウスの嘔気・気分不良時に出現する「異食行動」(パイカ行動)を指標にして、グレリン投与による「パイカ行動」の抑制の有無を検討する。パイカ行動を測定するための専用の試料(餌)は作成すみであり、同試料を用いた予備検討をすでに開始している。
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Causes of Carryover |
学内の共同研究者と実施する予定であった動物実験が、動物実験施設の施設移転・同準備等の関係で実施できずに、次年度(H.30年度)以降への持ち越しとなった。この関係で、上記の共同実験で使用する予定であった上記金額が、次年度使用金額として計上されることとなった。
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Research Products
(4 results)